スバリスト商標審取
平成24年(行ケ)第10013号 審決取消請求事件
請求認容
本件は無効審判不成立審決の取消しを求めるものです。
争点は,進歩性の有無です。
裁判所の判断は10ページ以下
1 本判決は、まず、一般論として、「商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信される広義の混同を生じるおそれがある商標が含まれる。そして,上記の「混同を生じるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)」と述べた上で本件商標と引用商標1ないし4との類似性について判断しました。
2 引用商標1ないし3について
本判決は、引用商標1ないし3について、「本件商標と引用商標1とは,「SUBAR」という文字を構成の一部に有している点で,また,本件商標と引用商標2及び3とは,「スバ」という文字を構成の一部に有している点で,それぞれ共通しているものの,その外観は全体として類似するものということはできない。また,本件商標の称呼と引用商標1ないし3の称呼とは,語頭の「スバ」が共通するものの,本件商標は,「スバ」の後に「リスト」が続き,全5音で構成されているのに対し,引用商標1ないし3は, 「スバ」の後に「ル」が続く全3音で構成されていることからすると,「ル」と「リ」は50音中同じ行に属することなど原告が主張する事情を考慮しても,その称呼は全体として相違するものといわなければならない。他方,本件商標からは, 原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家との観念が生じることがあり,引用商標1ないし3からも,原告が製造する自動車のブランドであるスバルとの観念が生じ得るから,観念の点では,関連性があることは否定できないが,これらの観念も全く同一のものではなく,上記のとおり,外観や称呼の点で相違するものであることに照らすと,本件商標と引用商標1ないし3とが全体として
類似する商標であるとまでいうことはできない」と判断しました。
3 引用商標4について
本判決は、次に、引用商標4について、「本件商標と引用商標4とは,文字の書体に若干の相違がある(甲2,10)ほかは,「SUBARIST」及び「スバリスト」を構成する各文字や, これらを上下二段で横書きするという全体の構成も共通している。したがって,本件構成と引用商標4とは,後記(4)のとおり指定商品を異にするものの,外観及び称呼において類似する商標であるといわなければならない」と判断しました。
4 本判決は、混同のおそれについて、「本件商標は,外観や称呼において引用商標1ないし3と相違し,これらが全体として類似する商標であるといえないとしても,本件商標からは, 原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家との観念が生じることがあり,他方,引用商標1ないし3からも,原告が製造する自動車のブランド
であるスバルとの観念が生じ得るから,観念において関連性があることは否定でき
ない」と述べ。また,「本件商標出願当時,自動車やその関連商品の分野では,本件商標を構成する「SUBARIST」「スバリスト」との語は,原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家を意味することが広く知られていたものであるが,この「SUBARIST」「スバリスト」との語が, 原告の製造する自動車のブランドである「SUBARU」あるいは「スバル」に由来する造語であることは明らかである。そして,自動車の分野において,引用商標1ないし3が周知著名性を有していることは当事者間に争いがないことや,本件商標の指定商品は,引用商標1ないし3が使用される商品と同一又は関連性を有することなどを併せ考慮すると,本件商標をその指定商品に使用した場合,その需要者及び取引者において,本件商標が使用された商品が,例えば,原告から本件商標についての使用許諾を受けた者など,原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所につきいわゆる広義
の混同を生ずるおそれがあることは否定できない」と判断しました。
5 本判決は、類似性を否定した引用商標について、その周知著名性に着目して、混同のおそれを肯定した例として参考になるものと思われます。
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