マルチレイヤー審取
平成23年(行ケ)第10298号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めるものです。
主たる争点は,進歩性です。
裁判所の判断は12ページ以下
1 本判決は、まず、相違点1について、「光ディスクや光磁気ディスクの技術分野においては,ディスク1枚当たりの記録容量の増加を図ることは周知の技術課題であるところ,前記(1)アないしカの記載によると,その容量を増加させる手段として, 実質的に平行な複数の情報層を設け,ディスクの片側からの光入射により記録,再生がされる構成とすることは,本件特許出願の優先権主張日当時,当該技術分野における周知技術であるということができる」と認定し、「記録媒体である光磁気ディスクに対して記録を行うディスク記録再生装置による記録再生動作方法である引用発明においても,ディスク1枚当たりの記録容量を増加させるため,前記(1)アないしカ記載の周知技術を適用し,実質的に平行な複数の情報層を設け,ディスクの片側からの光入射により記録,再生がされる構成とすることの動機付けはあるということができる」と判断し、「引用発明について,相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができたものである」 と結論づけましたしました。
2 本判決は、次に、相違点2について、「引用発明は,記録データが一定数(32個)のセクタ毎にクラスタ化され,光磁気ディスクへの記録は32個のセクタB0ないしB31の前後にそれぞれ3個のリンキング用セクタを付加した38セクタを単位として行われ,その38セクタ分の記録データについてインターリーブ処理を行うという記録方法であるところ,前記(1)カの記載に照らすと,2層の情報層を備えたマルチレイヤーの記録担体において,各情報層の記録方法を1層の情報層を備えた記録担体における記録方法と共通にすることが,互換性の観点から好ましいものであることは, 当業者の技術常識である」と認定し、また,「引用発明は,上記記録方法を採用することにより,他のクラスタとの間でのインターリーブによる相互干渉を考慮する必要がなくなり,データ処理が大幅に簡略化されることや,フォーカス外れ,トラッキングずれ,その他の誤動作等により,記録時に記録データが正常に記録できなかった場合にはクラスタ単位で再記録を行うことができ,再生時に有効なデータ読み取りが行えなかった場合には,クラスタ単位で再読み取りを行うことができるという作用効果を奏するものであるが, このような作用効果は,引用発明における記録担体(光磁気ディスク)が1層の情報層が設けられた構成であるか,少なくとも2つの実質的に平行な情報層が設けられたマルチレイヤーの構成であるかに関係なく,引用発明の上記記録方法によって得られるものである」と認定し、従って、「引用発明について,前記(1)アないしカ記載の周知技術を適用し,少なくとも2つの実質的に平行な情報層が設けられたマルチレイヤー記録担体とする際に,各情報層への記録を,引用発明における上記記録方法によって行うことは, 引用発明の上記作用効果を奏するために,当業者が当然に行うものであるということができる」と判断し、「引用発明において,少なくとも2つの情報層のトラック上にデータブロックの単位でデータを書き込むようにすること,すなわち,相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到することができたものであるということができる」と結論づけました。
3 本判決は、記憶容量の増大を図ることが周知の課題であることを一つの理由として、進歩性を否定した例として参考なると思われます。
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