包装容器特許意匠侵害
平成22年(ワ)第32858号 損害賠償請求事件
本件は原告が被告に対し特許権と意匠権の侵害に基づき損害賠償を求めるものです。
裁判所の判断は51ページ以下。
本判決は、まず、特許権侵害について、オーソドックスなクレーム解釈により、被告製品が本件発明の技術的範囲に属することを否定しました。
本判決は、次に、意匠権侵害について、「本件意匠の要部」の項において、「本件意匠は,その意匠に係る物品が包装用容器であり,特に食品の輸送, 販売等に利用される包装用容器であること,本件意匠の類否を判断するに当たっての需要者は,包装用容器の卸売業者や食品製造業者のみならず一般消費者も含まれると解すべきことについては,当事者間に争いがない」と述べた後、「容器包装は,内容物の保護,取扱いの便利さ(輸送効率の高さや商品陳列の容易性といった流通上,販売上の利便性のみならず,例えば高齢者や子供でも扱いやすいなど消費者にとっての利便性も含む。),商品情報の提供(内容物の情報を適切に表示する,他の商品との区別を容易にする,異物の混入を防ぐ等)といった様々な機能が求められるものであり,用途との関係でどの機能が重視されるかは需要者によって千差万別であるから,求める機能を適切に果たし得るものであるかどうかを見極めるために,包装用容器に接する需要者としての包装用容器の卸売業者や食品製造業者が容器全体の形状(特に上部から側面にかけての形状) に着目することは明らかである。また,本件意匠に係る包装用容器のように平たい容器で包装された食品(水産加工物や漬物等)は,店頭で平積みに陳列されるのが通常であるから(甲4の3,公知の事実),一般消費者は容器を斜め上方から眺めることになり,容器全体の形状(特に上部から側面にかけての形状)に着目するものと認められる。 物品の包装用容器,特に食品の輸送,販売等に利用される包装用容器における摘みは,単に開封時に使用されるだけでなく,開封前は容器が未開封であること(食品の安全性)を表示するものでもあるから,それらの役割を果たすに足りる形状,大きさを備えている必要があり,他方で, 摘みがいびつな形状をしていたり,大きすぎたりすれば,容器それ自体の美観を損なうとともに,輸送効率や商品陳列にも影響を与えることになるから,摘み部分がいかなる形状,大きさを備えているかは需要者にとって重要であるといえ,需要者が着目する容器全体の形状には,摘み部分の形状も含まれるものと認められる。そして,平面視における外部輪郭の形状については前記(2)のとおり多数の公知意匠が存在することを参酌すれば,本件意匠の要部,すなわち,本件意匠に係る物品である包装用容器において,摘みの部分が需要者の注意をひく部分である」と述べた上、「イ号意匠は,いずれも本件意匠の要部である摘み部分の形状が本件意匠とは明らかに異なっており(PHシリーズ5では摘み部分の形状のみならず摘みが設けられた部位も異なっている。),この点において看者に対し本件意匠とは異なる美感を与えることが明らかである」と判断しました。
本判決は、クレーム解釈及び意匠の要部認定について、オーソドックスな手法を用いた例として参考になるものです。
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