平成24年8月9日判決言渡
平成23年(ネ)第10057号特許権侵害差止請求控訴事件
原審・東京地方裁判所平成20年(ワ)第16895号
口頭弁論終結日平成24年6月12日
判決
同渡辺紫保
1 本件は,発明の名称を「プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム,並びにそれを含む組成物」とする特許権(本件特許権)を有する原告が,被告製品の輸入及び販売行為は,本件特許権を侵害すると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づく被告製品の輸入,販売の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄を求める事案です。
2 本判決は、容易想到性について、「本件優先日(平成12年〔2000年〕10月5日)以前,医薬品であるプラバスタチンナトリウムにおいて,プラバスタチンラクトン及びエピプラバが低減すべき不純物であることは,乙1資料に記載されており,また,医薬品の技術分野において,より高純度のものを製造することは,周知の技術課題である」と認定する一方、「乙13公報の実施例において抽出工程に供されている培養液は,本件明細書の実施例と同じく硫酸によって酸性化されていることから,精製前の培養液中にあるプラバスタチンラクトンの量は,本件発明と大きく相違しているとは考えられない。また,乙13公報の実施例4(段落【0064】)では,純度はHPLC分析では99 .5%を超える程度であったが,さらに高純度のプラバスタチンナトリウムを得るために,乙13公報に記載された精製方法を繰り返したり,最適化することで,より高純度のものを精製することは,当業者が容易になし得ることである。そして,本件発明は,クレームに特定される工程a)~工程e)によって高純度のプラバスタチンナトリウムを得る発明であるが,乙13発明も,本件発明で特定される工程a)~工程e)を備える発明であるから,乙13公報に記載された精製方法により,本件明細書の実施例と同程度の純度のプラバスタチンナトリウム塩を得るものと理解できる。さらに,不純物がより少ない方がよいことは技術常識であるから,この高度に精製されたプラバスタチンナトリウム塩について,低減すべき不純物の含有量の上限値を特定することも,当業者の容易になし得ることである。したがって,本件発明は,乙13発明並びに乙1資料及び技術常識によって,当業者が容易に想到し得た発明であると認められる」と判断しました。
3 本判決は、不純物がより少ない方がよいことは技術常識であることを根拠の一つとして容易想到性を肯定した事例として参考になると思われます。
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