1 平成24年(行ケ)第10253号 審決取消請求事件
2 本件は、商標登録無効審判不成立審決の取消しを求める事案です。
3 主たる争点は、 商標法4条1項10号の該当性に係る認定・判断の誤りです。
4 本判決は、商標法4条1項10号の該当性に係る認定・判断の誤りについて、「カレンダーの製造・販売業界においては,販売代理店がカレンダーの流通に当たって重要な役割を果たしているから,カレンダーについては,販売代理店が第一次的な取引者又は需要者であるといえるところ,原告は, 平成11年4月頃から,「カラーラインメモ」の片仮名を標準文字で表してなる使用商標について,自社の製造・販売に係るカレンダー(原告カレンダー)の名称として自社商品のカタログに記載して販売代理店に対する頒布という形で使用を開始し, 本件商標出願時(平成22年8月2日)及び登録査定時(同年11月1日)に至る約11年間にわたって,原告カレンダーの販売に当たり,毎年使用商標を自社商品のカタログに記載し,販売代理店に対する請求書にも原告カレンダーを意味するものとして使用商標を記載してきたものである」と述べ、また,「原告が上記カタログを頒布し,原告カレンダーを販売した販売代理店は, 全国に所在しており,その数も毎年数百箇所に及んでいるばかりか,販売代理店に頒布された当該カタログの数は,毎年おおむね4万冊前後であり,販売代理店に販売された原告カレンダーの数も,平成13年に25万6448部であったものがその後順調に増加を続け,本件商標出願時及び登録査定時の属する平成22年には, 合計115万7090部という大部数に及んでいるのであって,これは,全国連合会に所属する会社の中で最大規模である原告が販売する全カレンダー(合計283 種類)の中でも,売上げ部数が5番目に多いものであるから,かなりの数量であるといえる。しかも,「カラーラインメモ」との語は,英語の「カラー(色,色彩)」,「ライン(線)」及び「メモ(書き付け,備忘)」を複合した造語であって,カレンダーの名称として使用された場合,強いていえば「色彩」,「線又は線による区切り」及び「メモ余白の存在」を想像させるが,それ以上に特定の観念又はカレンダーとしての構成を想像させるものではなく,一定の特異性が認められるものであるところ,原告が,平成12年(平成13年版)以降,一貫しておおむね類似した構成の意匠を備えたカレンダー(原告カレンダー)の名称として「カラーラインメモ」との語を使用しており,かつ,「カラーラインメモ」との名称をカレンダー又はこれに類似する商品に付して販売した者が,平成22年まで,原告以外には存在しなかったことは, 前記認定のとおりである」と述べて、これらの事情を総合考慮し、「使用商標(「カラーラインメモ」)は,本件商標出願時及び登録査定時において,原告が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー) を表示するものとして,全国に所在する多数の販売代理店の間に広く認識されており,原告カレンダーの販売期間,販売数量及び原告以外に「カラーラインメモ」との名称をカレンダー等に使用した者が存在しなかったことなどに照らすと,当該販売代理店を通じてカレンダーを入手する全国の最終消費者の間においても,特定の業者が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表示するものとして広く認識されていたものと認めるのが相当である」と判断し、商標法4条1項10号の該当性について、「使用商標は,本件商標出願時及び登録査定時において,原告ないし特定の業者が製造・販売する特定の商品(原告カレンダー)を表示するものとして,全国の取引者及び需要者に広く認識されていたものと認められるところ,本件商標は,使用商標と同一の商標であり,かつ,その指定商品も,使用商標が用いられていた商品と同一であるから,本件商標は,「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,その商品について使用をするもの」に該当し,商標法4条1項10条により,商標登録を受けることができないものであるというべきである」と結論づけました。
5 本判決は、「需要者の間に広く認識されている商標」について比較的詳細な認定を行ったものとして参考になると思われます。
以上
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