弁護士 高橋 淳
小問対策
第1 民法
1 債権の発生原因
① 契約:AA
② 不法行為:AAA
③ 事務管理
④ 不当利得:A
2 不法行為
① 4つの要件
② 「過失」
③ 損害額の算定
特則あり
④ 消滅時効
3年まで遡る → 3年超前の被害は不当利得
3 不当利得
① 損害賠償請求権ではなく、不当「利得」返還請求権
② 「利得」=実施料相当額
③ 特許法上の特則なし
④ 「過失」不要
⑤ 消滅時効10年
4 契約
4-1 契約の成立
意思の合致
4-2 契約不履行(債務不履行)
① 3類型
履行遅滞
不完全履行
履行不能
② 解除
a 要件
催告の要否
* 信頼関係破壊の場合、無催告解除あり。
b 効果
i 遡及する。
ii 将来効のみ
③ 損害賠償
相当因果関係 → 「相当性」による限定
4-3 契約各論
4-3-1 委任契約
① 事務処理を委託する契約
* 善管注意義務
* 報告義務
* 報酬(原則無償)
* 費用前払い・償還
② 代理権の発生
* 民事訴訟法における代理の規律
代理権を証明する書面が必要(規23)
訴訟代理権の範囲(法55条)→包括
例外:特別の授権が必要な行為
反訴の提起、訴えの取下げ、訴訟上の和解
請求の放棄・認諾、上訴、復代理人の選任等
本人の死亡 → 訴訟代理権は消滅しない(法58条)
訴訟手続きの中断もない(法124条2項)
訴訟代理権の消滅は相手方に通知することにより効力発生(法59条、36条)
4-3-2 知的財産権譲渡契約
① 代金完済にもかかわらず、売主が移転登録に協力しない場合
- 処分禁止の仮処分
- 予告登記
- 移転登録請求訴訟
② 登録完了にもかかわらず、買主が代金を支払わない場合
- 仮差押え
不動産、銀行預金、売掛金
- 代金請求訴訟
- 損害賠償請求・登記移転請求訴訟(原状回復)
* 処分禁止の仮処分、予告登記
③ 知的財産権に実施権の負担が付いていた場合
- 実施権消滅請求
- 損害賠償請求
- 解除・損害賠償請求
4-3-3 知的財産権使用許諾契約
① 特許権者が通常実施権の登録に協力しない
- 登録協力請求 ×
- 解除・損害賠償請求
② 特許権が譲渡された場合の通常実施権の帰趨
- 譲受人には対抗できず
- 背信的悪意者には対抗可。
4-3-4 和解
① 和解と錯誤
- 特許侵害訴訟において、特許に無効理由がないことを前提として被告が原告に対して金1000万円を支払う和解が成立。
- その後、第三者による無効審判がなされ無効審決が確定。
- 和解(既判力あり)について錯誤無効(民法95条)を主張できるか?
* 動機の錯誤
* 前提条件である以上、動機の表示あり。その他の要件を充足すれば錯誤無効の主張可。
5 権利濫用
商標権の行使と権利濫用(ポパイ事件:別紙)
(推奨文献)
池田真朗「スタートライン民法総論」(日本評論社)
同「スタートライン債権法」(日本評論社)
第2 民事訴訟法
1 管轄:AA
① 管轄の発生原因
* 被告の本店所在地
* 不法行為地
② 特則
2 一部請求:A
① 一部請求の可否
* 処分権主義
② 残部請求の可否
* 既判力
→ 一部請求であることを明示して入れば可能
3 検証:AA
① 被告製品の証拠調べは検証
② 検証申出書
4 文書提出命令:AA
① 民事訴訟法の原則
② 特許法の特則
* 営業秘密の取扱い
民事訴訟法 → 拒否できる
特許法 → 「正当な理由」の充足性として判断
インカメラ手続
5 秘密保持命令:AAA
① 制度の目的・概要
② 仮処分における秘密保持命令の可否(最高裁:別紙)
6 専門委員、調査官
① 専門委員の定義
② 調査官の定義
③ 両者の相違
7 判決(中間判決含む):AA
① 定義
- 訴訟継続中に
- 当事者間で争われた事項について
- 裁判所が
- 終局判決に先立って
- 判断を示す
- 裁判
② 中間判決事項
- 独立した攻撃防御方法
* 特許権の消滅
- 中間の争い
* 訴訟要件の具備、管轄の有無
- 請求の原因
* 侵害の有無
8 取下げ・認諾・放棄:A
9 和解:AAA
10 不服申立制度
① 控訴
② 上告
③ 抗告
④ 特別抗告
⑤ 上訴
11 再審:AA
① 再審の意義・趣旨
② 再審事由
* 特許侵害訴訟確定後に無効審決が確定した場合における再審の可否(判例:別紙)
第3 民事保全法
1 仮処分
2 仮差押え
第4 民事執行法
(別紙)
平成02年07月20日/最高裁判所
本件商標登録出願当時既に、連載漫画の主人公「ポパイ」は、一貫した性格を持つ架空の人物像として、広く大衆の人気を得て世界に知られており、「ポパイ」の人物像は、日本国内を含む全世界に定着していたものということができる。そして、漫画の主人公「ポパイ」が想像上の人物であって、「POPEYE」ないし「ポパイ」なる語は、右主人公以外の何ものをも意味しない点を併せ考えると、「ポパイ」の名称は、漫画に描かれた主人公として想起される人物像と不可分一体のものとして世人に親しまれてきたものというべきである。したがって、乙標章がそれのみで成り立っている「POPEYE」の文字からは、「ポパイ」の人物像を直ちに連想するというのが、現在においてはもちろん、本件商標登録出願当時においても一般の理解であったのであり、本件商標も、「ポパイ」の漫画の主人公の人物像の観念、称呼を生じさせる以外の何ものでもないといわなければならない。以上によれば、本件商標は右人物像の著名性を無償で利用しているものに外ならないというべきであり、客観的に公正な競業秩序を維持することが商標法の法目的の一つとなっていることに照らすと、被上告人が、「ポパイ」の漫画の著作権者の許諾を得て乙標章を付した商品を販売している者に対して本件商標権の侵害を主張するのは、客観的に公正な競業秩序を乱すものとして、正に権利の濫用というほかない。
平成16年10月15日/大阪高等裁判所
「(1) はじめに
ア 本件特許権は、本件無効審決の確定により、初めから存在しなかったものとみなされる(特許法125条)から、被告が、本件特許権に基づく差止請求権を被保全権利として本件仮処分命令申立てをし、本件仮処分命令を得てその執行をしたことは、結果として違法である。
イ 仮処分命令が被保全権利の不存在を理由に取り消された場合において、同命令を得てこれを執行したことにつき債権者に故意又は過失があったときは、債権者は民法709条により債務者がその執行によって受けた損害を賠償すべき義務があり、一般に、仮処分命令が異議もしくは上訴手続において取り消され、あるいは本案訴訟において債権者敗訴の判決が言い渡され、その判決が確定した場合には、他に特段の事情のないかぎり、当該債権者には過失があったものと推定すべきではあるが、当該債権者において、その挙に出るについて相当な事由があった場合には、上記取消しの一事をもって同人に当然過失があったということはできないというべきである(最高裁判所第三小法廷昭和43年12月24日判決・民集22巻13号3428頁参照)。
ウ このことは、特許権に基づく差止請求権を被保全権利とする仮処分命令が発令され、その執行がされた後に、当該特許を無効とする旨の審決が確定した場合においても同様であると解するのが相当である。
確かに、特許権に基づく差止請求権を被保全権利とする仮処分は、被保全権利である特許権が特許庁審査官による特許出願の審査及び特許査定を経て設定登録されたものであるし、進歩性の有無に関する判断は、一般に、当該特許発明、引用発明及び上記両発明の対比による一致点・相違点の認定のほかに、これを基礎として、出願前に当業者が当該特許発明に容易に到達することができたか否かという評価が入るため、専門的、技術的知識を要する困難かつ微妙な判断であることが多いということからすれば、特許権が進歩性を欠くという理由で無効審決の確定により無効になったからといって、債権者に過失があったものと推定することは、酷に失するという余地もないではない。
しかし、一方において、製造販売差止めの仮処分が執行された場合には、債務者は、営業上及び信用上、極めて深刻な打撃や影響を受けることも珍しくない(特に、対象製品が債務者の主力製品であったときは、債務者が倒産に至ることすら考えられる。)ことを考慮すれば、特許権が特許庁審査官の審査及び査定を経て設定登録されたものであるとか、進歩性の有無に関する判断が困難かつ微妙なものであることが多いなどという一般的、抽象的な事情をもって債権者の過失を否定することは、当事者間の衡平を失するものであり、相当ではないといわざるを得ない。
エ そして、本件において、被告が本件仮処分命令申立てをし、本件仮処分命令を得てその執行をしたことについての相当な事由(以下、単に「相当な事由」ということがある。)があったか否かを判断するに当たっては、まず、被告において、本件仮処分命令申立て時までに、先行技術を既に知っていたか又は容易に知り得たかを検討し、その上で、既に知っていたか又は容易に知り得た先行技術に基づき、被告が、本件特許発明に進歩性があると信じるにつき相応の根拠があったか否かについて検討すべきである。」
「(5) 以上によれば、被告が、本件特許発明に進歩性があると信じたことにつき相応の根拠があるとはいえず、他に、被告の過失を否定すべき特段の事情は見当たらない。したがって、被告が本件仮処分命令を得てその執行をしたことについて、被告に過失があるというのが相当である。」
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、提出を予定している準備書面や証拠の内容に営業秘密が含まれる場合には、当該営業秘密を保有する当事者が、相手方当事者によりこれを訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は第三者に開示されることによって、これに基づく事業活動に支障を生ずるおそれがあることを危ぐして、当該営業秘密を訴訟に顕出することを差し控え、十分な主張立証を尽くすことができないという事態が生じ得る。特許法が、秘密保持命令の制度(同法105条の4ないし105条の6、200条の2、201条)を設け、刑罰による制裁を伴う秘密保持命令により、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用すること及び同命令を受けた者以外の者に開示することを禁ずることができるとしている趣旨は、上記のような事態を回避するためであると解される。
特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は、仮処分命令の必要性の有無という本案訴訟とは異なる争点が存するが、その他の点では本案訴訟と争点を共通にするものであるから、当該営業秘密を保有する当事者について、上記のような事態が生じ得ることは本案訴訟の場合と異なるところはなく、秘密保持命令の制度がこれを容認していると解することはできない。そして、上記仮処分事件において秘密保持命令の申立てをすることができると解しても、迅速な処理が求められるなどの仮処分事件の性質に反するということもできない。
特許法においては、「訴訟」という文言が、本案訴訟のみならず、民事保全事件を含むものとして用いられる場合もあり(同法54条2項、168条2項)、上記のような秘密保持命令の制度の趣旨に照らせば、特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は、特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し、上記仮処分事件においても、秘密保持命令の申立てをすることが許されると解するのが相当
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