知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

半導体装置審取

2012-08-24 08:32:10 | 最新知財裁判例

平成24年7月26日判決言渡
平成24年(行ケ)第10055号商標登録取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日平成24年4月26日
1 本件は,拒絶査定不服審判不成立審決の取消を求めた事案です。
2 
2-1 本判決は、容易想到性に関し、「引用例2及び引用例3には,硬化性シリコーン組成物として,本願発明における硬化性シリコーン組成物と同じ組成を有する組成物が開示されている。しかし,前記のとおり,引用例2における硬化性シリコーン組成物は,LED表示装置等の防水処理のための充填剤や接着剤として使用するものであること,LEDや外部からの光を反射しないよう,艶消し性に優れているという特性を有することが示されている。半導体装置の封止用樹脂とLED表示装置等の充填剤や接着剤とは,使用目的・使用態様を異にするものであり,引用例2には,上記のような硬化性シリコーン組成物を,半導体装置の樹脂封止に使用するという記載も示唆もない」と認定し、「引用発明に接した当業者が,引用発明に引用例2に記載された技術的事項を組み合わせ,引用発明における封止用樹脂として引用例2に開示された硬化性シリコーン組成物を使用することを,容易になし得るとはいえない」と判断し、また、「引用例3における硬化性シリコーン組成物は,半導体素子の表面を被覆するための半導体素子保護用組成物として使用するものであり,前記のとおり,半導体素子の表面被覆は封止の前に行われる工程であって,半導体などを包み埋め込む「封止」とは,その目的等において相違する。引用例3には,硬化性シリコーン組成物の硬化物による被覆の後,同工程とは別個独立に樹脂封止が行われることを前提とした上で,硬化物と封止樹脂との熱膨張率が異なることによって生じる問題点を解決する組成物として,耐湿性及び耐熱性が優れた半導体装置を形成できる半導体素子保護用組成物である硬化性シリコーン組成物が示されている」と認定し、「「被覆」と「封止」とは,その目的等において相違する工程であることに照らすならば,引用発明に接した当業者が,引用発明に引用例3に開示された硬化性シリコーン組成物を組み合わせることを,容易になし得るとはいえない」と判断し、「当業者が,引用発明に引用例2及び引用例3に記載された発明を組み合わせて,本願発明における相違点に係る構成に至るのが容易であるとは認められない」と結論づけました。
2-2
さらに、本判決は、被告の「引用例2,引用例3及び甲4文献記載の組成物は,半導体装置を保護する組成物であり,シリコン系樹脂により半導体装置を封止して保護することは,周知慣用の技術手段であり,半導体装置を封止するために,シリコン系樹脂として周知である本願発明における硬化性シリコーン組成物を用いることは,当業者が容易になし得ることである」との主張に対し、「樹脂封止は,半導体装置の封止手段として一般的に行われている方法であり,樹脂封止のうち,ポッティング法,キャスティング法,コーティング法,トランスファ成型法において,封止用樹脂としてシリコン系樹脂を使うことは,当業者に周知な技術であると認められる(甲4,12,乙1,2)。しかし,引用発明のように,半導体装置を金型中に載置し,金型と半導体装置との間に封止用樹脂を供給して圧縮成形する樹脂封止方法において,封止用樹脂としてシリコン系樹脂を使うことが当業者に周知な技術であると認めるに足りる証拠はない。被告が本訴において提出する乙1及び2には,ICチップを樹脂封止する際,シリコン系樹脂で封止することが通常行われている旨の記載があるが(乙1の段落【0004】,乙2の段落【0007】),これらの記載から,半導体装置を金型中に載置し,金型と半導体装置との間に封止用樹脂を供給して圧縮成形するという樹脂封止方法においても,シリコン系樹脂を用いることが当業者に周知な技術であると認めることはできない。
3 本判決は、証拠を精密に検討した上で、「金型と半導体装置との間に封止用樹脂を供給して圧縮成形するという樹脂封止方法において,シリコン系樹脂を用いることが当業者に周知な技術」であることを否定したものとして実務の参考になるものと思われます。


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