知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

シンプルな知的財産の評価(試論)

2011-06-08 07:05:03 | 知的財産制度

1 資産評価の方法として、①インカム法、②コスト法、③マーケット法がある。知財の場合、③はほぼ使えない。②は理論的根拠がなく、結果として、①が基本となる。具体的にはDCF法である。

2 知財権のうち特許権を例に検討する。特許権がその保有者たる企業のもたらす価値は、独占の利益が源泉となる。独占の利益の計算は、ロイヤリティ料をベースにするのが最もシンプルだ。問題は、予想ロイヤリティ料の計算方法と割引率の設定方法である。

3 予想ロイヤリティ料については、当該企業の過去の実績から近似値を計算する。つまり、当該特許の属する技術分野又は事業分野(以下「対象分野」)の他の特許であって、ライセンス実績のあるもの(以下「参照実績特許」)が存在する場合には、その年間ロイヤリティ料(複数存在する場合は平均値)をベースに計算する。これに対して、参照実績特許が存在しない場合には、対象分野に属する特許のうち、クレームの数、クレームの文言数、明細書のページ数の指標を用いて、複数の特許を選択し(これらを「参照非実績特許」)、これらについて、仮想ロイヤリティ料の平均値を算定する。この場合、料率に関しては、業界平均の率を採用し、ベースとなる売上高等については、自己実施の売上高の2分の1を基本として補正する。

4 割引率については、当該企業の株価から逆算した割引率を基本として補正する。

 


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