知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

給油装置審取

2012-04-19 12:42:00 | 最新知財裁判例

給油装置審取
平成23年(行ケ)第10181号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は拒絶査定不服審判不成立審判に対して取消をもとめるものです。
争点は,進歩性の有無です。
裁判所の判断は14ページ以下
1 本判決は、まず、本願発明を「本願発明は,ヒートポンプサイクルからなる熱源装置で沸き上げた給湯用水を蓄える貯湯タンクを備える貯湯式給湯装置,特に,給湯用水の一部を太陽熱で加熱する給湯制御手段に関する発明である」と認定した上、沸き上げに関する周知技術を検討し、「本件出願前,深夜時間帯等での蓄熱運転時において,タンク内の湯を全量沸き上げないこと,すなわち,翌日使用する湯の量(熱量)が予測でき,蓄熱運転時に沸かすべき湯の熱量が決定できるのであれば,タンク内の湯を全量沸き上げる全部沸き上げ方式ではなく,必要熱量に見合う量の湯を沸かす部分沸き上げ方式を用いることは,当業者に知られた技術常識であった」と判断しました。
2 本判決は、次に、相違点2に関して、「本願発明は,給湯用必要熱量から翌日に太陽熱集熱器で得られる集熱熱量を減じた必要沸き上げ熱量に応じた量の高温の給湯用水が吐出口から流入して貯湯するように各水位サーミスタからの温度情報に基づいてヒートポンプユニットを制御する構成を有するところ,引用発明2も,湯温及び湯量を検知するセンサの検出値等に基づいて算出した総熱量Qから翌日に太陽熱コレクターで得られる太陽熱量Q1を減じた電熱量Q2に基づいて,電力制御装置により各電気ヒータを制御する発
明である。引用発明1に引用発明2を組み合わせると,引用発明1において,蓄熱
運転時にヒートポンプによって沸かすべき湯の熱量が決定されることになり,貯湯
タンク内の湯が当該熱量分加熱された時点でヒートポンプによる加熱が終了し,当
該熱量に見合う量の湯が貯湯タンクの上部に貯えられることになる。 引用例1には,沸き上げ方式について具体的な記載はないが,前記2(2)のとおり,本件出願前において,翌日使用する湯の量(熱量)が予測でき,深夜時間帯の蓄熱運転時に沸かすべき湯の熱量が決定できるのであれば,タンク内の湯を全量沸き上げる全部沸き上げ方式を用いることなく,必要熱量に見合う量の湯を沸かす部分沸き上げ方式を用いることは,当業者に知られた技術常識であったと認められるから,部分沸き上げ方式を採用すること自体は,単なる設計的事項にすぎない。 なお,翌日に太陽熱により得られる熱量の算出方法において,本願発明では,過去のデータ等に基づいて算出された平均値を用いるところ,引用発明2では,「天気情報」を用いるものではあるが,熱量算出方法における微差にすぎず,いずれにせよ,翌日の天気に係る予測に基づいて,熱量を算出することに相違はない。
したがって,相違点2の構成は,引用発明1に引用発明2を組み合わせることに
より,当業者が容易に想到し得るものであるというべきである。」
本判決は、技術常識を丁寧に認定し、相違点2が「設計的事項にすぎない」ことを理由として進歩性を否定した裁判例として参考になると思われます。


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