知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

インプラント審取

2012-06-14 05:14:01 | 最新知財裁判例

インプラント審取
平成23年(行ケ)第10218号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めるものです。
主たる争点は,進歩性です。
裁判所の判断は15ページ以下
1 相違点1について
本判決は、まず、相違点1に関し、引用文献1の移植部材に関する開示内容を認定した上で、「これら例示された各移植部材は,いずれも同じ発明に関する同一の文献に記載された実施形態の例であって,図1~6の移植部材に他の実施形態の形状を採用したときに支障が生じることを窺わせる記載も特段認められないことからすると,移植すべき場所や求める機能等に応じ,適宜にこれら各種形状を選択し得るものといえる」と判断しました。また、本判決は、原告の「引用文献1の図1~6のインプラントは,縦軸19に対して垂直である大きな開口部20及び小さな開口部22を有しており,片側端部のみ凸形状である,このような移植部材を,引用文献の別の実施形態である図22のチャンネルを有しておらず左右対称でないインプラントとするための示唆や動機付けはなく,たとえ組み合わせたとしても補正発明に到達することはできない」との主張に対し、「例示された各移植部材における具体的な構造は,置換可能なものや任意付加的なものであって,適用を困難にするほどの構造の相違はなく,当業者にとってそのような支障があるものとは認められない」と判断し、従って、「引用発明に,図22に係る移植部材の,湾曲された凸状の前面を含み,湾曲された後面および湾曲された前面が弧状インプラント構造を形成
している点を適用し,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到でき
たものであるとするのが相当」と結論づけました。
2 相違点2について
本判決は、次に、相違点2に関し、引用文献2の記載を引用し、「この記載によれば当業者は,相違点2に係る補正発明の構成と同様の技術的事項が記載されており,その技術的事項は図7に示されているような移植片骨の具体的な形状に拘わらないことが容易に理解できる」と述べた上で、「引用発明にあっても同種骨の単一部材が手に入りにくいという問題は当然内在するから,引用文献2を知り得た当業者にとって,引用発明に対して引用文献2に記載された事項を適用することは格別困難ではなく,引用文献1には移植部材を複数の部材から構成することを排除する特段の記載もない」と判断しました。また、本判決は、原告の「共通する技術分野に属するものであるからといって,全く異なった形状のインプラント同士である引用発明に引用文献2に記載された事項を採用して,補正発明のように,インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成されるように構成することについての示唆や動機付けはなく,たとえ組み合わせたとしても補正発明に到達することはできない」との主張に対し,「引用文献2の当該記載に接した当業者には,記載された事項が図7に示されているような移植片骨の具体的な形状に拘わらない事項であることは容易に理解できるものであり,引用発明にあっても同種骨の単一部材が手に入りにくいという問題は当然内材するから,引用発明において,インプラントが単一ユニットを形成するために組み立てられた複数の相互連結ボディから形成されるように構成することについての示唆や動機付けはある」と判断しました
3 本判決は、相違点1について、「適宜選択可能」というロジックで進歩性を否定し、また、相違点2について、具体的な根拠を示して、「黙示の示唆」があることの示した例として参考になるものと思われます。

 


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