平成18(ワ)474:市川裁判長
請求認容
特許権者がバンダイ、被告がエポックです。対象特許は、カプセル販売装置に関するものです。街でよく見かけるガチャポンですね。
以下、対象特許の請求項1にかかる発明(以下「本件発明」)に絞って解説します。
本件発明の課題は、収納ケース内の物品を取り換える際の面倒であり、解決手段は収納ケース自体を取り換えることを可能とする構造の採用です。
直感的には進歩性欠如という印象ですが、結論は、進歩性あり(容易想到性なし)です。
収納ケースを着脱可能とする点に関して、引例は、カプセル販売装置に関する乙42発明が主引例で、自動販売装置に関する乙44発明及び乙45発明が周知技術であり、これら周知技術には、物品収納ケース自体を取り換えるという構成が開示されていました。
裁判所は、乙44発明及び乙45発明は、いずれも商品を整列状態にて補給する必要があるところ、その手間を解決したものであるのに対し、乙42発明の場合には、商品を整列状態にて補給する必要がないから、乙42発明に乙44発明及び乙45発明を組み合わせる動機づけがないと判断しました。
この点、乙42発明と乙44発明及び乙45発明とは、自動物品販売装置である点において共通するため、技術分野の共通性を根拠として動機づけを肯定する見解もあり得ますが、本判決は、近時の裁判例に見られるように、より具体的な動機づけの要因を要求したものといえます。これは、一般論としては支持できます。しかし、結論はどうでしょうか?技術史的にみれば、カプセル販売装置は後発であり、カプセル販売装置業者は、先行の自動販売装置の技術については研究・熟知しているのが通例ではないかと思われます。そのような事実が立証されれば、動機づけを肯定しても良いように思います。
また、本判決は、損害論について、2項損害についてゼロと認定しつつ、3項損害を肯定している点においても興味深いものです。
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