1 はじめに
東日本大震災以降、中小企業の海外進出の動きが加速している。具体的には、大手企業の生産拠点移転と同様に、中国、インド、タイ、ベトナム、インドネシアなどの東南アジア諸国に生産拠点を移転させようとする動きである。
このように海外進出を目指す中小企業の懸念として、これまで営々と築き上げてきたモノづくりのノウハウが模倣され、ニセモノが出回るのではないかという点が指摘されている。現に、国際刑事警察機構(インターポール)によると、ニセモノの被害額は年間65兆円に達し、世界貿易額の10%近くになっているという。また、国連によると、麻薬の年間流通総額は50兆円であるところ、ニセモノの被害額はこれを超えており、一大産業になっている。
また、中国を例に取れば、日本企業の被害総額は3兆円を超えるという試算もある。
本稿は、海外進出を図る中小企業がニセモノ被害を防止するために必要とされる知的財産戦略について概説することを目的とする。
2 知的財産権とは?
2-1 概説
知的財産権とは、「情報」に対して知的財産法に基づき与えられる権利である。
「情報」には、技術、デザイン、表現、ブランド等のマークなどがある。
日本の知的財産法においては、技術を「発明」・「考案」、デザインを「意匠」といい、それぞれ、特許法・実用新案法及び意匠法において保護が与えられている。また、ブランドについては、「商標」又は「標章」として、商標法により保護が与えられている。なお、特許法・実用新案法、意匠法及び商標法を産業財産法といい、特許権・実用新案権、意匠権及び商標権を産業財産権という。
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