知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

麦芽発酵飲料審取

2011-12-09 05:26:22 | 最新知財裁判例

麦芽発酵飲料審取

平成22(行ケ)10350

請求認容

裁判所の判断は25ページ以下

本判決は、新規性に関し、審決は、「甲1及び甲2を検討するのみで、原告が新規性欠如を立証する証拠として提出した甲3~甲6についての検討は行われていない。したがって、審決には、本件発明に関して原告の主張する無効理由3に判断の遺脱があると認められるところ、A成分とB成分とを混合してなる麦芽発酵飲料が、本件出願前、周知のアルコール飲料である旨の原告の主張に理由があることは、前示のとおりであるから、審決における上記の判断の遺脱はその結論に影響を及ぼすべきものであって、審決を取り消すべき瑕疵といわなければならないと判断しました。

また、進歩性欠如に関し、「審決が、特許法29条1項1号又は2号の発明(公知、公用発明)に基づく進歩性欠如の無効理由は新たな主張であるとして排斥し、同条1項3号の発明(刊行物発明)に基づく進歩性欠如の無効理由のみを判断したことは誤りであり(なお、審決は、刊行物発明に基づく進歩性欠如の判断に関しても、甲1及び甲2のみを取り上げ、甲3~甲6は全く検討していない。)、審決には、原告の主張する無効理由4に判断の遺脱があるといわなければならない。そして、本件発明のA成分に該当するビールのような麦芽飲料と、B成分に該当する焼酎、ウイスキー、ジンなどの蒸留酒を混ぜ合わせて飲料とすることが周知であることは、前示のとおりであるから、審決における上記の判断の遺脱はその結論に影響を及ぼすべきものであって、審決を取り消すべき瑕疵といわなければならない(しかも、更に進歩性の有無の観点から検討すれば、例えば甲4には、ビールとビール蒸留物を混合してなり、アルコール含量が8.5~15容量%であるアルコール含有飲料が開示されており、本件発明のアルコール分3~8%と近接するアルコール度を有するものと認められる。また、甲5には、麦芽発酵飲料と焼酎との混合飲料において、アルコール度が約3%から約8%となる旨が開示されており、飲用する者の好みのアルコール度数で飲用できることも示唆されているものと認められる。さらに、甲6に記載される「スピリッツ類」及び「リキュール類」は、ビールや発泡酒に麦焼酎を加えた飲料であって、改正前の酒税法上ビール様飲料である「発泡酒」に分類されていたものであるから、ビールと同程度のアルコール度数であると推測される。)」と述べました。

 

審理不尽の問題ですが、実質的には進歩性欠如を判断しているともいえます。


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