穀類乾燥機意匠審取
平成23年(行ケ)第10264号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求めた事案です。
争点は引用意匠との類否(意匠法3条1項3号)です。
裁判所の判断は9ページ以下。
本判決は、意匠の構成について、「両意匠の穀類乾燥機用集塵機は,穀類乾燥機から排出される含塵空気について, 器体内のサイクロン作用により空気と夾雑物等に分離し,さらに,分離されて器体から排出された空気を水の水面に近接させて,空気中の塵埃を捕集することを目的とするものである。そのために,主として,器体,器体を中空に支えるための支持脚,器体に含塵空気を導入するための含塵空気導入口筒,器体から空気を排気するための空気出口筒,分離されて自重落下する夾雑物等を器体下方の集塵袋に収容するための塵出口筒から構成されている。意匠全体に占める大きさは,器体と支持脚が最も大きく,空気出口筒がこれに次ぐ大きさで,含塵空気導入口筒は空気出口筒よりも小さく,塵出口筒はかなり小さい。機能についてみると,器体の形状や大きさは集塵の方式や能力に関係し,支持脚の形状や長さは設置場所や安定性に影響を及ぼし,空気出口筒も塵埃の捕集という機能と関係する部位であり,含塵空気導入口筒の個数は接続できる穀類乾燥機の数に影響するなど,それぞれ特徴を有する 」ことから、「各部位のうち,形態として看者の目を惹く顕著な部分は見当たらず,両意匠において取引者・需要者の注意をひく特徴的な部分(要部) は,意匠全体の形態,すなわち,両意匠を構成する主要な部位の構成,形状,それらの各部位の組合せや配置等を総合したものであるというべき」と述べ、共通点について、「両意匠は,要部である意匠全体の形態について,共通点A~Fのとおり,意匠を構成する主要な部位の種類,形状,それらの各部位の組合せや配置など,その大部分が共通しているのであるから,取引者・需要者に対して,共通の美感を与えるものといえる」とする一方。相違点について,「相違点ア-1は,空気出口筒の端部に,本願意匠には可撓性筒材が接続されていないが,引用意匠には接続されているというものであるところ,本願意匠の参考図によれば,本願意匠においても引用意匠と同様の可撓性筒材を用いることが予定されていると認められるのであって,この点は実質的な相違点とはいえない。相違点ア-2は,空気出口筒の屈曲部において,本願意匠には蛇腹があり, 引用意匠は平滑であるという差異であるが,上記の蛇腹は,金属の筒体を成形する場合に表れるありふれた凹凸にすぎない。相違点イ-1の含塵空気導入口筒の本数の違いは,単なる口数の変更であり,意匠全体に占める含塵空気導入口筒の大きさや機能を考慮すると,両意匠の共通性を否定するほどの相違であるとはいえない。相違点イ-2も,両意匠の参考図に記載されるように,含塵空気を導入するためのホースは上方から下方に向けられているのであるから,筒を上方に屈曲させることは一般的な処理にすぎない。相違点ウも,意匠全体に占める大きさや機能を考慮すると,両意匠の共通性を否定するほどの相違であるとはいえない」とし。「本願意匠は,相違点を考慮したとしても,全体として取引者・需要者に引用意匠と共通の美感を生じさせるものと認めるのが相当であって,引用意匠と類似する」と判断しました。
本判決は、取引者・需要者の注意をひく特徴的な部分(要部)について,意匠全体の形態,すなわち,両意匠を構成する主要な部位の構成,形状,それらの各部位の組合せや配置等を総合したものであると判断した事例として参考になると思われます。
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