知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

原子力損害と不動産の価値の下落

2011-04-19 10:07:58 | 震災

まず、一般論として、「原子力損害」に「不動産の価値の下落」は含まれます。

しかし、この「価値の下落」は現実化する必要があります。

この点、JOC事故に関連して作成された平成12年3月29日付「原子力損害調査会最終報告書」は、不動産については、売却予定のない不動産の価値の下落を理由とする損害賠償請求は認められないとしています。

また、不動産売買契約の解約、不動産を担保とする融資の拒絶又は売却予定価格の値下げを理由とする請求については、以下の要件が必要と述べています。

①当該不動産が屋内退避勧告のなされた区域にあること

②その不動産取引について売買契約等が締結され、又は、締結の可能性が極めて高く、対価額等が確定しているか、又は、確定しつつあること

③平成11年11月末までに生じた解約・値下げである、これに応じざるを得なかった相当な事由があること

④解約の場合には、当該不動産を緊急処分せざるを得なかった相当な事由があること

⑤その解約等がJOC事故を理由とするものであること

⑥当該請求の合理性(損害の発生と損害額)

このうち、③の「平成11年11月末」とは、風評被害が収束した時期ですが、今回の原発事故の場合には、事業所外の土地も放射性物質により汚染されており、この時期的制限は外すべきと思われます。

また、⑥については、①から⑤に吸収されるべきものです。

さらに、前記のとおり、今回の原発事故の場合には、事業所外の土地も放射性物質により汚染されており、その利用可能性が減殺されているのですから、売買等の予定がない場合にも、その減殺の程度に応じて損害賠償が許容されるべきです。

 


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