知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

紛争審査会(2)

2011-04-18 22:37:47 | 震災

紛争審査会における議論のポイントを予想するため、平成10年の原子力損害賠償制度専門部会の議事録要旨案及び報告書案を検討しました。

今回の審査会の第1回会合では、能見先生は、緊急性のあるもの・問題のないものから先に支払っていくという考え方を表明されました。迅速な救済という観点からは妥当な見解と思われます。

それでは、何が緊急性のあるもの・問題のないもの、なのか。

この点、平成10年の時点では、能見先生は、人身損害が優先的に賠償されるべきと考えておられたようです。しかし、今回の原発事故に関しては、避難費用、休業損害及び営業損失が優先的に支払われるべきものと思います。まず、避難費用は、既に支出されているか又はこれからも確実に支出されるものですから、最優先で賠償されるべきものと思います。次に、会社が休業されている方には収入を得る途が閉ざされているのですから、優先的に賠償されるべきです。さらに、事業者の連鎖倒産を防止するためには、事業者が早期に営業再開が可能になるように、営業損失が優先的に賠償されるべきです。営業損失のうち、引取拒否、返品、出荷制限から生じた損害(即時損害)については、相当因果関係を肯定することに特段の問題はありません。これに対して、風評損害については、風評の影響がいつまで継続したのかという点で証拠に基づく精密な事実認定が必要となるのが一般的です。しかし、今回の原発事故に関しては、その世界に与えたインパクトに照らして、対象製品の範囲は、外国の輸入禁止の対象になった製品まで拡大し、対象期間は、東電の工程表に鑑み、当面、6ヶ月を目安とし、それ以降に発生する損害については、追って検討するというのが実務的解決と思われます。

また、仮払いの金額を決定する際に、保険金及び補償金の上限の1200億円に拘るべきではないと思います。1200億円を超過する分は、国による必要な措置(原賠法17条)により対応されるので、全額賠償が法的に保証されているものではありませんが、被害者救済の観点から、事実上保証されていると考えて、指針を作成するべきでしょう。


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