平成24年7月4日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成24年(行ケ)第10026号,同第10027号,同第10028号,同第
10029号,同第10030号,同第10031号,同第10032号,同第1
0033号 各審決取消請求事件(以下,順次,「第1事件」ないし「第8事件」
といい,総称して,「本件各事件」という。)
口頭弁論終結日 平成24年6月6日
1 本件は,原告が,拒絶査定不服審判不成立審決の取消しを求める事案です。
2 本判決は、取消事由1(審判における手続違背)について、原告の「周知意匠1ないし3は,普遍的な原理や当業者にとって極めて常識的,基礎的な事項で,立証が不要な程度に周知性が高いものではないから,原告に対して反論の機会を与えるために,拒絶理由の通知をすべきであった(意匠法5 0条3項,特許法50条)ところ,本件各審決は,これを怠ったものであり,重大な手続違背がある」との主張に対し、「周知意匠は,その分野において一般的に知られ,当業者であれば当然知っているべき意匠をいうにすぎないのであるから,審判手続において拒絶理由通知に示されていない周知例を加えて創作非容易性がないとする審決をした場合であっても,原則的には,新たな拒絶理由には当たらないと解すべきである」との一般論を述べた上、「本件各審決は,周知例1ないし3に基づいて,「容器本体の周面において垂直に細長い透明な観察窓を設けた点」が周知意匠であり,観察窓の長さと位置につき, 容器本体に占める比率の変更は,当該分野において適宜普通に行われているものであること,本願各意匠のような観察窓の態様は,ごくありふれた態様から選択した程度にすぎないものであるとするものである」と述べ、「本願第1意匠の拒絶査定(甲1-7)についてみると,本願第1意匠は, 本願優先日前より知られた態様の容器本体胴部に,例えば引用例2のように,本願優先日前よりごく普通に行われている内容物確認のための垂直帯状窓を設けたにすぎないとして,創作非容易性を否定したものである。原告は,平成22年7月26 日付け意見書(甲1-6)において,これを争い,拒絶査定不服審判手続においても,同様に争っているものである。本願第2意匠ないし本願第8意匠についても, 同様である」と指摘し、「本件各審決は,「容器本体のうち,周面の正面中央に上端から下端まで垂直に細長い透明な観察窓を設けた点」に関し,周知例を追加するものにすぎず,当該構成が周知であること,本願各意匠がごくありふれた態様から選択した程度にすぎないものであることについては,原告も十分反論の機会が与えられていたものというべきである」と結論づけました。
3 本判決は、審判において拒絶理由を通知すべきか否かについての事例判断として実務の参考になると思われます。
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