平成24年6月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成23年(ワ)第247号 意匠権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成24年5月24日
1 本件は、意匠侵害を理由として被告製品の差止め及び損害賠償の支払を求める事案です。、
2
2-1 本判決は、公知意匠等を参酌し、「本件登録意匠において,需要者の注意を引きやすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1 を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている点を含む,本体部全体の形態である」と認定した上,本件意匠の「特徴的部分を中心に本件登録意匠と被告意匠を対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かについて判断するに,前記(1)ウ(ア)①ないし⑥認定のとおり,両意匠は,この特徴的部分において共通するのみならず,それ以外の基本的構成態様及び具体的構成態様の多くの部分においても共通しており,需要者に対し,全体として共通の美感を生じさせものと認められる」と述べる一方、「両意匠には,①本件登録意匠では, 本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているが,被告意匠では,周辺機器に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内部の回路に接続されている点,②本件登録意匠では,本体の正面の形状が平坦であるが,被告意匠では,中央部で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約0.5mm)程度膨出している点,③本件登録意匠では,ランプの中心が本体右側面と底面からそれぞれ約17mmの均等な位置にあるのに対し,被告意匠では,ランプの中心が本体底面から約12mmで,かつ,本体右側面から約16mmの位置にあり,本件登録意匠に比べて底面に寄った位置に設けられている点において差異があるが,これらの差異点は,需要者の注意をひきやすい部分とはいえない上,差異点から受ける印象は,両意匠の共通点から受ける印象を凌駕するものではない」と述べ、「本件登録意匠と被告意匠は,上記差異点を考慮しても,需要
者の視覚を通じて起こさせる全体的な美感を共通にしているものと認めら
れるから,被告意匠は,本件登録意匠に類似している」と結論づけました。
2-2
次に、本判決は、創作容易性について、「乙3には,充電器に係る意匠において, 縦横の寸法が同一の正四角形の箱状の本体において,「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」構成が示されているが,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であって,これは本件登録意匠の2倍に当たり,縦(横)の長さと厚さとの比が異なり,さらには厚さに対する面取り径の比が本件登録意匠よりも小さく,本件登録意匠のような全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りをしている構成や,本体の四角隅部が,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている構成は示されていない。 また,乙4記載の意匠は,本体の「正面下部にランプを設ける」構成が示されており(前記1(2)イ(イ)),この点において本件登録意匠と共通するものの,本体の長さ,厚さ及び面取りの径に関して本件登録意匠と共通する構成を有するわけではない。 そして,本体が正方形又は長方形の箱状のエーシーアダプタに係る意匠においては,縦(横)の長さと厚さの比率,面取りの有無,厚さに対する面取り径の比,面取りの具体的形状等により,当該意匠全体が需要者に与える美感を異にすることがあり得るところ,本件登録意匠においては,縦横の長さと厚さの比及び厚さに対する面取り径の比率等を工夫することにより,「本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」構成としたものであり,このような構成には,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性が認められる」と判断し、「乙3ないし5記載の各意匠に接した当業者といえども,乙5記載の意匠において「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」構成(前記(2) イ①の差異点に係る本件登録意匠の構成態様)を採用し,本件登録意匠を創作することが容易であったものと認めることはできない」と結論づけました。
3 本判決は、意匠の類否判断及び創作非容易性の事例判断として実務の参考になると思われます。
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