原判決破棄、差し戻しの判決です。
先日のまねきTV最高裁判決が全員一致であったことに続き、本件も全員一致です。
本判決は、複製の主体の認定に関して、「複製の対象、方法、複製への関与の内容、程度等の諸要素を考慮」すると述べた上で、本件について、「サービス提供者は、単に複製を容易にするための環境を整備しているにとどまらず、その管理、支配下において、放送を受信して複製機器に対して放送番組に係る情報を入力するという複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており・・・」として、サービス提供者が複製の主体であるとしています。
金築裁判官の補足意見をみると,カラオケ法理について、「法概念の規範的解釈として、一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり」「考慮されるべき要素も、行為類型によって変わり得るのであり、行為に対する管理、支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない」とされています。また、経済的利益の帰属に関する評価は結論を左右しないとも述べられています。
このように、ある法概念に該当するか否かを判断する場合において、関連する事情を総合考慮して判断するという手法は、近時の最高裁知財関連判例の流れのように思われます。
複製の実現における枢要な行為を提供しない代行サービスは考えにくいので、現時点の最高裁判例及び制定法を前提とする限り、その差止めの可否については、違法性の相対的認定又は権利の濫用法理のが可能か否かという点にかかることになるでしょうし、これが問題の本質にも整合するものと考えます。
なお、本件については、複製の対象がTV番組という特殊性があることを忘れてはならないと思います。
いずれにしても、まねきTV最高裁判決も含め、最高裁調査官の解説が待たれるところです。
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