知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

液晶バックライト審取

2012-03-11 20:11:35 | 最新知財裁判例

液晶バックライト審取

請求棄却

裁判所の判断は11頁以下
本件は、拒絶査定不服審判不成立審決に対する取消しを求めるものです。
争点は容易想到性の有無です。
1 本判決は、まず、「特開2002-99220号公報(甲3,11)は,バインダ中にビーズが分散した光拡散層を備える光拡散シート(光拡散フィルム)の発明に係るものであるが,その段落【0028】には,「この光拡散シート1では基材層3の裏面は平滑面とされているが,裏面に例えばエンボス加工等を施し,光拡散性能やスティッキング防止性能を向上させても良い。」との記載があるから,そこには,透明な支持体(基材層)の片面に光拡散層を設けた光拡散フィルムの裏面にさらに光拡散性能を持たせることが記載されている。ここで,同公報中には,「光拡散性能」を持たせる方法として,光拡散層のビーズの粒径とバインダの厚さとの差のビーズの粒径に対する比(突出比)を所要の範囲に設定する方法が専ら記載されているから,上記段落では支持体の裏面に光拡散層を設けて光拡散性能を持たせることが想定されており,したがって支持体の両面に光拡散層を設ける構成が示唆されているといってよい」と述べた上で、「本件優先日当時,液晶
表示装置用の光拡散フィルムの両面にバインダと光拡散剤ないしビーズから成る光
拡散層を設けることは当業者の周知技術にすぎなかったもの」であるから、「引用発明1に特開2002-99220号公報(甲3,11)等に記載された前記1の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において相違点1に係る構成に容易に想到することができた」と判断し、さらに、阻害要因があるとの原告の主張に対して、「乙第1,第2号証公報の光拡散フィルムの輝度が引用発明1の光拡散フィルムの輝度より小さいとしても,これのみで直ちに上記周知技術を引用発明1に適用する動機付けに欠けることになるものではない」と述べています。
2 本判決は、さらに、 臨界的意義に関して、「出願当初の特許請求の範囲(請求項1)では,光拡散層が形成される面が「高透明プラスティック支持体上の少なくとも一面」とされ,発明の詳細な説明でも,支持体の両面に光拡散層を形成する場合に限定した記載はされておらず,また実施例に係る記載やその評価物性試験結果に係る表1でも, 支持体の片面(一面)にのみ光拡散層を形成した光拡散フィルムに関するものか, 支持体の両面に光拡散層を形成した光拡散フィルムに関するものか判然としないものであって,本願発明1のPDIの上限には臨界的意義が認められないものである。そうすると,支持体の両面に光拡散層を形成する場合に限っても,本願発明1のPDIの上限に臨界的意義があるということはできないし,かかる両面に光拡散層を形成した光拡散フィルムの輝度も,当業者においてその予測が困難なものであるとはいえない」と判断しました。
本判決は、引用文献中に「示唆」があることを肯定した事例として参考になるものと思われます。


コメントを投稿