goo blog サービス終了のお知らせ 

知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

分光方法審取

2013-01-13 21:59:24 | 最新知財裁判例

1 平成23年(行ケ)第10433号審決取消請求事件
2 本件は拒絶査定不服審判に対して取消を求めるものです。
3 本件の争点は進歩性の有無です。
4 
4-1
本判決は、原告の「引用発明において,「小さな領域」とは線状の領域を意味するが,引用刊行物Bや引用刊行物C等に記載される「X線源からのX線を1つ又は2つの光学部品を用いて試料上の焦点に集束させる」という技術は,X線を「点」に集束させる技術であるから,上記技術を引用発明に適用する動機付けはない」旨主張の主張に対し、「従来の技術においても,波長分散型X線分光装置が,試料より発生するX線は「発光点」から発生するよう構成されており,この発光点は「点状」といえること(【0002】),引用刊行物Aの図1に示されるX線分光装置は,X線光学系の焦点位置に位置調整された試料に向けて放射線が照射されるような光線照射手段が具備され,イオンビーム1aを照射したことによる試料表面の発光点と第1のレーザ光源2からレーザ光を照射したことによる試料上の発光点とが一致するように(焦点位置で光路が交わるように),比例計数管6を台1のレーザ光源2と共に移動させて位置調整すること(【0007】ないし【0009】),引用刊行物Aの図3に示されるX線分光装置においても,図1に示されるX線分光装置の場合と同様の手順でレーザ光源22,23,分光結晶31及び半導体検出器29の位置調整が行われ,放射線27(X線)を照射したことによる試料表面の発光点と第1のレーザ光源2からレーザ光を照射したことによる試料上の発光点とが一致するように位置調整すること(【0012】ないし【0014】)が認められる」ことを根拠として、「引用刊行物Aにおいて,焦点位置に位置調整された試料上のX線の照射領域は「線状」ではなく「点状」と理解すべきであり,引用発明における照射領域が「線状」であることを前提として,引用刊行物B及び引用刊行物C等に記載された技術を引用発明に適用する動機付けがないとする原告の主張は失当である」と判断しました。
4-2
また、本判決は、原告の「本願発明と同様の構成を有する米国特許発明に係る製品は,商業的成功を収めており,本願発明の進歩性は肯定されるべきである」旨の主張に対し、「本願発明は,引用発明及び公知の技術から当業者が容易に想到することができたものであるから,仮に原告の製品が商業的成功を収めていたとしても,特許を受けることができない(特許法29条2項)」と結論づけました。
5 本判決は、商業的成功が進歩性の判断とは無関係とも読める説示をしていますが、商業的成功は、進歩性の判断を肯定する方向に働く要素(容易想到性を障害する事実)と把握すべきものと思われます。
以上


コメントを投稿