1 平成24年(行ケ)第10025号審決取消請求事件
2 本件は無効審判請求成立審決の取消しを求めた訴訟であり,争点は,進歩性の有無です。
3 本判決は、本件特許の出願当時の技術水準として、「本件特許出願日時点において,食用調合油は,その用途ないし求める効果に合わせて,複数の周知の食用植物油脂を任意の量比で配合して製品化されている状況にあったことが認められる」と認定し、次に、引用発明の「食用ごま油60%」を「焙煎ごま油65~70質量%」に,「食用なたね油」を「精製油としての菜種油30~35質量%」に,それぞれ置換することの容易想到性について、「引用発明の調合胡麻油において,香りに着目して,甲第1号証の2に記載のある「ゴマ油特有のふくよかな香り」を呈するように,ごま油と菜種油を適宜の割合でブレンドして製品化することは,当業者がごく普通に発想し得ることである」と判断し、続いて,「本件特許の出願前から,焙煎ごま油は香りのよいごま油として周知で,市販されていたこと,精製された菜種油も周知で,市販されていたことが認められる」を認定し、「ごま油と菜種油をブレンドするに当たって,引用発明の「食用ごま油」に代えて,香りのよいごま油として周知で市販されている「焙煎ごま油」を採用し,「食用なたね油」に代えて,周知で市販されている「精製された菜種油」を採用することは,当業者が適宜なし得ることである」と判断しました。また,本判決は、「甲第1号証の2に「ゴマ油特有のふくよかな香り…」と記載されているように,引用発明自体から,ゴマ油特有の風味に着目する動機付けがあるといえるから,さらに風味を改善するように,「焙煎ごま油」の配合割合を増加させて65~70%質量とすることにも,特段,困難性を認めることはできない」と判断し、「引用発明の「食用ごま油60%」を「焙煎ごま油65~70質量%」に,「食用なたね油」を「精製油としての菜種油30~35質量%」に,それぞれ置換することは,当業者にとって容易に想到し得ることである」と結論づけました。
4 本判決は、周知技術を根拠として容易想到性を肯定した事案として参考になります。以上
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