知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

職務発明制度の改正の動向(1)

2014-09-04 14:53:49 | 職務発明

1 昨日の職務発明に関する小委員会を傍聴。
冒頭、事務局より、「朝日の記事は全く根拠ない」との説明。
事務局からは、事務局案の提示はなく、具体的制度設計の過程で生じた新たな論点の説明のみ。http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/newtokkyo_shiryou8.htm
一方、産業界の委員らからは、これらの論点に対応する形で譲歩案が提出された。概要は、帰属は法人とするが、一定の手続きを経た職務発明規定等に基づく報奨の支払いを義務づけるというもの。ここでのポイントは、法人帰属について条件は設けない一方、規定等に基づく「報奨の支払い」を義務づけることにより発明者のインセンティブ確保を図っていること。
これに対して、労働界からは、現在の「法定の相当対価請求権」と同等の権利の保障が必要であり、切り下げは認められないとの意見が表明された。
その後、職務発明規定等がない場合はどうなるか、「一定の手続き」を経ているかについて司法審査に服するとして、「報奨」の内容についての司法審査はあるのか等の議論がなされた。
今回の会議では、産業界から事務局の提示した論点に対応した意見が提出されたこともあり、議論が進んだという印象を受けた。今後は、労働界からの具体的制度の提案又は反論がなされると思われる。 

2 職務発明規定等がない場合については、法定の請求権としての「報奨請求権」が認められるべきだろう。問題は、算定基準であるが、これは今後の検討課題である。
「一定の手続き」については、適正なものであるべきであり、規定等の策定に関しての従業員との協議、具体的算定に関しての従業員からの意見聴取が必要となると思われる。ここは、現行法とほぼ同じであろう。この点の司法審査をクリアしない場合には、職務発明規定等がない場合と同様の規律になる。
「内容面の司法審査」については、限定的であるべきだ。もっとも、「内容面の司法審査」を全くしないことには異論が強いであろう。そこで、例えば、規定等の策定に関して、従業員等の過半数が明示の反対をしない場合には、規定等の内容は適正であるものとみなし,司法審査は、具体的金額が規定等に基づいて適正に算定されたか否かに限定されるとの案があり得る。ここでのポイントは、「みなし」であり、「推定する」ではないことである。「推定する」とすると、反証される可能性があり、「求められる手続きの内容が不明確」という現行法と同一の問題を抱えてしまう。

以上


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