知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

職務発明制度改正の動向(2)

2014-09-05 13:52:34 | 職務発明

3 法人原始帰属を前提として、改正案を検討してみる。
まずA案。
現行1項は「使用者等は、職務発明について特許を受ける権利を有する」旨に変更。
現行2項は削除\。
現行3項は、「従業者等は職務発明について相当の報奨を受ける権利を有する」旨を規定。
現行4項は、「対価」を「報奨」に変更し(以下同じ)、「等」を削除し、末尾に「本項に定める協議において、過半数jの従業員等からの明示の反対jの意思表示がない限り、基準の策定は合理的になされたものとみなす」を追加。
現行5項は、「使用者等が受けるべき利益」を、「発明の技術的価値、発明者の特段の努力の有無・内容」に変更。

まとめると、以下のとおり。

1項:使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について、特許を受ける権利を有する。
2項:従業者等は、職務発明を完成したときは、相当の報奨の支払を受ける権利を有する。
3項:契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の報奨について定める場合には、その内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより報奨を与えることが不合理と認められるものであつてはならない。本項に定める協議において、過半数jの従業員等からの明示の反対jの意思表示がない限り、基準の策定は合理的になされたものとみなすものとする。
4項:前項の報奨についての定めがない場合又はその定めたところにより報奨を与えることが同項の規定により不合理と認められる場合には、第三項の報奨の内容は、その発明の技術的価値、発明者の特段の努力の有無及び内容、その発明に関連して使用者等が行う負担及び貢献並びに従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。
 
この建付けの場合、相当報奨請求権が法定のものとなるから、産業界からは不満があるだろう。しかし、勤務規則等の制定を文字通り義務付けて、相当報奨請求権とを勤務規則等に基づく権利と構成することは迂遠であるし、今のところ、有意義とも思えない。また、「相当」という形容詞を付加することにも抵抗があるかもしれないが、「十分な」インセンティブ制度を法的Jに担保することを前提とするならば、やむを得ないと考える。
 



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