携帯電話審取
平成23年(行ケ)第10350号 審決取消請求事件
請求棄却
本件は無効審判成立審決に対して取消をもとめるものです。
争点は,進歩性の有無です。
裁判所の判断は15ページ以下
1 本判決は、「甲1発明は,表示部に表示する画像をTV等の外部の表示装置に表示できるようにした携帯電話機及び携帯電話機システムに関するものであり,従来の携帯電話機は画像データを携帯電話機の表示部で表示した画像によってしか見ることができないところ,携帯電話機の表示部は小さいため,画像を多数の人で見るときには全員が同時に見ることができない,画像に迫力が感じられないといった欠点があるため,カメラ部や無線部等から取得した画像などを多数の人が同時に見ることができ,表示画像がよく見え,画像に迫力が感じられる携帯電話機及び携帯電話機システムを提供することを目的とし,それを解決する手段として,審決が認定した甲1発明の構成を備えたものであると認められる」とする一方。「甲2発明は,前記のとおり,デジタルカメラをデジタルテレビに接続する際の画像表示技術に関するものである。デジタルカメラにも表示部があるにもかかわらずこれをデジタルテレビに接続してその表示部にて視聴を行うのは,デジタルカメラの表示部は小さいため,デジタルカメラの画素数を活かした高精細の画像表示ができないためであるほか,デジタルテレビの大きな画面に表示した方がより迫力のある映像となるからであることは,甲2に明示的な記載はないものの,技術常識として認めることができる」と認定した上。「甲1発明と甲2発明は,カメラ部からの画像データを内蔵された表示部のみならず外部の表示装置においても表示するものである点で共通しており,いずれも内蔵された表示部が小さいことに起因する課題を解消しようとするものとうことができるから,甲1発明にカメラ部からの画像データを外部の表示装置において表示する構成として甲2発明の構成を適用することは容易想到であるというべきである」と判断しました。
2 本判決は、原告の「甲1には,表示解像度についての問題意識は一切見られず,本件発明の解決課題に対する記載や示唆はないと」との主張に対し、「甲1において携帯電話機を画面の大きいテレビ等の外部表示装置に接続するのは,前記のとおり,迫力ある映像を求めてのことであるところ,表示解像度が高くより高精細な方が画面の迫力が増すことは明らかである以上,甲1に表示解像度に関する発明である甲2発明を適用する動機や示唆は存在するというべきである」と判断しました。
また、本判決は、原告の「甲2発明は,「テジタルテレビの表示解像度」を起点としてデジタルカメラをそれに適合させることを基本発想としているのに対し,本件発明の解決課題はあくまでも「デジタル動画信号の本来画像」を起点とし,外部ディスプレイ手段として「それを表示するのに十分な大きさの画面解像度」を有するものを求めており,両者は課題設定の方向性が根本的に異なっているものであり,甲2において,本件発明の解決課題は記載も示唆もされていない」との主張に対し,「主引用例たる甲1発明にカメラ部からの画像データを外部の表示装置において表示する構成として甲2発明の構成を適用することは容易想到である以上,甲2発明に本件発明の解決課題が示唆されているか否は上記結論を左右するものではない」と判断しました。
本判決は、①明示の示唆がないにもかかわらず、「表示解像度が高くより高精細な方が画面の迫力が増すことは明らか」とうロジックにより、「甲1に表示解像度に関する発明である甲2発明を適用する動機や示唆は存在するというべき」と判断した点、及び、②副引例たる甲2発明に本件発明の解決課題が示唆されていることは、本件においては、動機付けを否定するものではない旨を判断した裁判例として参考になると思われます。
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