1 平成24年(行ケ)10073号 審決取消請求事件
2 本件は、特許無効審判不成立件審決の取消しを求める事案です。
3 本件の争点は進歩性の有無です。
4
4-1 本判決は、相違点について「本件発明1は,絶縁膜が,薄膜トランジスタの半導体層を覆って形成される層間絶縁膜上に形成され,薄膜トランジスタに起因する凹凸を緩和するように,その表面が平坦化される平坦化絶縁膜であり,薄膜トランジスタのソース電極は層間絶縁膜上に形成されるとともに,層間絶縁膜に開けられた開口部を介して薄膜トランジスタの半導体層に接続され,画素電極は平坦化絶縁膜上に形成されるとともに,平坦化絶縁膜の開口部を介してソース電極に接続されているのに対して,引用発明は, このような層間絶縁膜を有しておらず,薄膜トランジスタとその電極ラインを覆う層間絶縁膜が,表示電極を薄膜トランジスタとその電極ラインから十分に離すために,厚く,少なくとも1μm以上とするものであるが,薄膜トランジスタに起因する凹凸を緩和するように,その表面が平坦化される平坦化絶縁膜であるか否か明らかではなく,薄膜トランジスタのソース電極が,層間絶縁膜上に形成されているものではなく,表示電極が平坦化絶縁膜上に形成されているものではない点」であると認定しました。
4-2 そして、本判決は、周知技術について、「画素電極が層間絶縁膜上に形成された平坦化絶縁膜上に形成されている上記周知の構成においても,液晶の配光性が高まっているものと認められる」ことから,「引用発明において,薄膜トランジスタに起因する凹凸により負の誘電率異方性を有する液晶の配向がばらつき,それによってディスクリネーションが発生することを防止するために,液晶の配向性をより高めるための上記周知の構成を採用することには動機付けがあるといえる」と判断し、また、「薄膜トランジスタの半導体層とソース電極及びドレイン電極の接続構造として,引用発明のように直接接続するか,上記周知の構成のように層間絶縁膜に開けられた開口を介して接続するかは,当業者が適宜選択し得る設計事項である」とし、さらに、「引用発明は,層間絶縁膜の厚さを少なくとも1μm以上にすることにより,表示電極が薄膜トランジスタとその電極ラインから十分に離され,液晶の配向がこれらの電界の影響を受けて乱れることがなくなり,表示電極エッジ及び配向制御窓により,配向制御が効果的に行われるという効果が得られるものであるから, 引用発明における薄膜トランジスタの半導体層とソース電極及びドレイン電極の接続構造として,上記周知の構成を採用すれば,電極ラインのうちゲートラインと表示電極とが,層間絶縁膜の膜厚分だけさらに離されることとなる」ことから、「引用発明については,上記のような引用発明の効果をより得るために,引用発明における薄膜トランジスタの半導体層とソース電極及びドレイン電極の接続構造としても,上記周知の構成を採用することの動機付けもあるということができる」と判断し、「本件相違点に係る本件発明1の構成は,引用発明に上記周知の構成を適用することにより,当業者が容易に想到し得るものということができる」と結論づけました
5 本件は、「薄膜トランジスタの半導体層とソース電極及びドレイン電極の接続構造」が設計事項である旨判断された事例として参考になるものと思われます。なお、この接続構造が摂家事項であるとされた理由は、本件発明の課題及び解決原理と無関係であることではないかと推測されます。
以上
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