ある新作を読了。感動の上、次のページをみると、「著者は本書の自炊代行業者によるデジタル化を認めておりません」と記載してある。「著者」が「認める」か否かは著者の自由だから、それ自体は構わないが、この場所に入れられると興ざめする。違う場所に入れるべきだ。
さらにページをめくると、「本書を第三者に依頼してデジタル化することは著作権法違反です」との趣旨の文言が書いてある。これは問題だ。いわゆる自炊代行が著作権法違反であるか否かは議論のあるところであり、最高裁判例はおろか、一つの裁判例もない。この状況で、「著作権法違反です」と断言することは、自炊代行業者(悪質な一部の業者を除く)に対する営業妨害であり、不正競争防止法違反(2条1項14号)の可能性がある。
もちろん、出版社が、「自炊代行が著作権法違反である」との意見を表明することは自由である。しかし、それは意見なのだから、意見であることが分かるように記載すべきである。たとえば、僕が、前の段落に書いたように、「可能性がある」と書くか、あるいは、「当社の見解によれば」と書けば良いのだ。出版社の意図もそれで十分に達成できるし、不正競争防止法違反(2条1項14号)も問題も生じないと「思う」。
もっとも、出版社としては、不正競争防止法違反のリスクは承知の上の表示かもしれない。それならそれは一つの経営判断である。なお、ロクラクとまねきTVの最高裁判例の射程は、放送を対象とする行為に限定されており、これらの最高裁判例があるからといって、自炊代行が著作権法違反であるとはいえない。
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