1 平成24年(行ケ)第10115号 審決取消請求事件
2 本件は,拒絶審決の取消訴訟であり、争点は,発明の進歩性の有無です。
3 本判決は、「引用発明では,保圧及び保圧時間を制御するから,保圧及び保圧時間の制御を行う点で本願発明と引用発明は一致する」ことを認定した上、「引用例2(甲3)の4頁右上欄2ないし5行には,金型キャビティーの表面9cに金型樹脂温度センサー13を設ける旨が記載されているところ,引用例1, 2はいずれも金型を用いた樹脂の射出成形の技術分野に属し,所要の品質の成形品を得るべく,温度等の測定を行って適切な機器の制御を行うことを技術的課題とするから,当業者において引用例2に記載の技術的事項を引用発明に適用する動機付けがあり,かかる適用を行うときは,当業者において,射出された樹脂に接触する金型キャビティー表面(本願発明にいう金型外壁)に温度センサーを設け,金型表面(キャビティー表面)の温度を測定して,測定温度を機器の制御に用いる構成に容易に想到することができることは明らかである」と判断し、さらに、「甲第4号証(特開平4-201429号公報)の3ないし5頁には,キャビティー内の樹脂の温度は一定でなく温度分布が生じること,保圧プロセスではゲート(注入口)からキャビティーの奥に向かうに従って温度が低下していく温度分布となることが記載されており,第1図からは,金型温度検出器111と金型内樹脂温度検出器112をキャビティーの末端(奥)ないしその付近に設置する構成を見て取ることができる。また,乙第1号証(特開平5-253995号公報)の段落【0019】,【0024】及び図1には,ゲート3aから最も離隔する位置に温度センサ11を設けて金型の温度を測定し,機器の制御に用いることが記載され, 上記図1で図示されたセンサ11bはキャビティーの末端付近に設置されていると評価してもよいものである(また,段落【0026】には,センサ11a,11b の間に複数のセンサを設け,金型の温度のばらつきを細かく制御してもよい旨が記載されている。)。そうすると,本件優先日当時,キャビティー内の樹脂の温度が不一となることを考慮して,キャビティー内の適宜の位置に温度センサーを設置する程度の事柄は当業者の技術常識にすぎなかったということができるし,キャビティーの末端が当業者が選択する温度センサーの設置位置に含まれていたものといって差し支えない」と述べ、「本件優先日当時の当業者の技術常識を考慮すれば,引用発明に引用例2記載の技術的事項を適用することで,本件優先日当時,当業者において,引用発明と本願発明の相違点に係る構成に容易に想到することができたということができる」と結論づけました。
4 本件は、動機付けの存在を肯定した一事例として参考になると思われます。
以上
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