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知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

蓄熱材製造方法審取

2013-01-13 07:58:09 | 最新知財裁判例

1 平成23年(行ケ)第10434号 審決取消請求事件
2 本件は,特許無効審判請求不成立審決の取消しを求める事案であす。
3 本件の争点は、進歩性の有無です。
4 本判決は、「引用発明において,硫酸カルシウム半水和塩及び溶解性硫酸カルシウム無水物からなる群から選択される多孔性固体は,固液分離を防止するために用いられるものである」ことを根拠として,「引用例2ないし4に記載されているように,硫酸カルシウム2水塩が,硫酸カルシウム半水和塩や硫酸カルシウム無水物と並んで,各種蓄熱材において過冷却を防止するために用いられることが公知であったとしても,引用発明において固液分離を防止するために用いられる硫酸カルシウム半水和塩及び溶解性硫酸カルシウム無水物からなる群から選択される多孔性固体に代えて,硫酸カルシウム2水塩を用いる動機付けはないというべきである」と判断しました。
また,本判決は、「本件出願当時,硫酸カルシウム半水和物及び可溶性無水セッコウが,水和により硫酸カルシウム2水和物になることは,技術常識であったということができる」としつつ、「引用発明は,固液分離を防止するために,硫酸カルシウム半水和塩及び溶解性硫酸カルシウム無水物からなる群から選択される多孔性固体を用い, 他の原料との混合物を混合凝固体となるまで撹拌することにより,水和塩の結晶水を多孔性固体の細孔内及び塩の近傍に保持し,水和塩の再形成を促進するというものであって,硫酸カルシウム2水和物を用いるものではなく,まして,本件発明のように特定の複塩を形成することによって固液分離を抑制しようとするものではない。また,引用例1には,過冷却防止剤と,無水硫酸ナトリウムと,上記多孔性固体との混合物を調整し,混合物に水を混合することについて,「混合物に使用される塩の水和塩を形成するために十分な量の水を混合物に添加する。また,多孔性固体が硫酸カルシウム無水物を含む場合には,十分な量の水を添加することによってカルシウム半水和塩の形成を完了させる。」と記載されており,この記載によれば, 引用発明において,硫酸カルシウム無水物を用いる場合であっても,水和によりカルシウム半水和塩を形成するにとどまるものであり,引用例1には,硫酸カルシウム2水和物を形成することは記載も示唆もない」ことを根拠として、「周知例の記載によれば,硫酸カルシウム半水和物及び可溶性無水セッコウが,水和により硫酸カルシウム2水和物になることが技術常識であったと認められるとしても,引用発明において,硫酸カルシウム半水和塩及び溶解性硫酸カルシウム無水物からなる群から選択される多孔性固体に代えて,硫酸カルシウム2水塩を用いる動機付けはないというべきである」と判断し、「相違点1に係る本件発明の構成は,引用発明並びに引用例2ないし4及び周知例に記載された事項に基づき,当業者が容易に想到することができたものということはできない」と結論づけました。
5 本判決は、引用発明と周知技術における硫酸カルシウム2水塩の利用目的の相違を根拠として動機付けを否定したものとして参考になります。


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