JUNSKY blog 2015

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「父親たちの星条旗」 見る価値【大】

2006-11-04 02:27:21 | 映画レビュー
クリント・イーストウッドとスティーブン・スピルヴァーグによる、硫黄島の戦闘を描いた「父親たちの星条旗」;FLAGS OF OUR FATHERS を見た。

 イラク戦争で、少女のような米軍女性兵士が戦闘中捕らえられて監禁されているのを、米軍の決死隊が突入して救い出し、彼女はイラク戦争の「英雄」として、戦意高揚に最大限利用したのは、つい数年前のことである。
その、彼女は良心に反する英雄扱いで心が痛み、真相を書いて出版した。
怪我で動けないところをイラク人に助け出され、イラクの病院で手厚い看護を受けていたというのが本当の話だった。

 この映画は、硫黄島の闘いで、星条旗を峰に立てた6名を英雄視し、その生き残り3名を国内に召喚し、人寄せパンダよろしく全国各地を訪問させ、「戦時国債」購入キャンペーンに協力させるというものである。

 その「星条旗を立てた」写真も実は、最初のショットではなく、メディア向けに再現した写真であり、英雄視されている3名は実は別人であるということを、冒頭に提示して、政府による「ヤラセ」世論誘導をえぐってゆく。

 その英雄の一人がインディアン(ネイティブ・アメリカン:映画では露骨に差別用語としてインディアンと放言させている)であり、表向きは「英雄」として歓迎する振りをしながら、舞台裏では露骨な差別と蔑視をやっているという「人種差別」が映画のもう一つのテーマである。
彼は、差別に心を痛め、また英雄視に対しても良心が許さず、酒に溺れてゆくことになる。

 とはいえ、何といっても第一のテーマは「ヤラセ」により徹底した世論誘導を行い、「戦時国債」を買わせるキャンペーンの実態である。
そして、直接的ではないが、これらの戦時国債により国民の資産を没収し、軍需産業だけが潤うという構造を示唆する。
 そして、このキャンペーンの推進者(財務省役人)自らに、ドルの印刷を無制限に続けており、そのうち紙切れになる、という発言をさせている。

 映画では、ベトナム戦争でも同じような「ヤラセ」が行なわれたことを、セリフの中で伝える。

 この事実を追究しているのは、硫黄島の生き残りを父に持つ、中年の男(原作者)である。
記録は、ノートパソコンを使用して行なっているので、現代に繋がっていることを強く象徴している。

 私の父も、戦時中、商社務めで上海の事務所で働いている時に、現地召集を受け、満州鉄道の防衛に参加させられたというから、年代的には殆ど同じである。
まさに、今に繋がっている話であることを実感した。

 ところで、「戦時国債」キャンペーンのパーティ会場で、戦死した戦友の母親に会う場面の背後で、楽団が演奏していた曲はモーツァルトの交響曲(おそらく40番)だった。
日本では、敵性音楽は禁止だったようだが、アメリカではモーツァルトはモーツァルトとして受け容れられていたのだろうか?
時代考証もして、選曲したものと思われるので・・・

 最後のエンディング・クレジットでは、その『英雄たち』本人(俳優ではなく)の写真と、戦死した戦友たちの写真を次々と流す。そして、おそらく映画のシーンではなく、当時の従軍カメラマンが取ったであろう歴史的資料価値の高い、戦闘写真を次々と流し、戦争の悲惨さを静かに訴えている。

 時間を計った訳ではないが、全編の半分が、硫黄島でのすさまじい残酷な戦闘シーンであった。それが、現代と、国債キャンペーンの前後と、硫黄島に派遣される前とをアトランダムに入れ子にした作りであった。
 映画の中だけでも凄まじい戦闘が36日間も続いたのである。

「補給も無い中で日本兵士も良く36日も持ちこたえて頑張った」という気持ちになってしまう自分が居た。

終演後「硫黄島からの手紙」(日本の視点で描く)の予告編が流されたが、国粋主義者にならぬよう「心して」見たいと思う。

公式ホームページは、ここをクリック


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フラガール

2006-10-17 00:45:43 | 映画レビュー
二日連ちゃんになるが、「フラガール」をレイトショーで見た。

当初は見る予定がなかったのだが、田村貴昭さんのブログを見たら感想が書いてあり、高い評価だったので見ることにした。
田村さんの紹介によれば、炭鉱閉山に伴う人員削減で活きる道を模索する人々のことが書いてあったので、英国(?)映画「フルモンティ」や「ブラス」みたいな映画かと思っていたが、ちょっと様子が違っていた。

炭鉱閉山に当たって、会社側は坑道から噴出する熱湯を温泉として利用する「温泉センター」で利用することで活路を見出そうとする。
その「温泉センター」を「ハワイアンセンター」と称してフラダンスを披露して客を集めようと言う訳である。
炭鉱夫の娘達が応募するが、裏切り者扱いされる。
母は冷たく反対、炭鉱夫3代目の兄も理解しつつも表向きは反対。

その中で、家を出て自立し、ダンスレッスンに打ち込む主人公を蒼井優らが熱演。

最終盤で、フラダンスを本格的に披露する主人公達の発散し感動する様子は、「スウィング・ガールズ」「フルモンティ」「ブラス」などに共通するものであり、感動させられた。

新装成った「ハワイアンセンター」でのフラダンスの初舞台を踊りきった主人公達が涙しているシーンは、演技ではなく、本当にその俳優達が達成感を一杯にして涙しているのだと思う。

エンドクレジットで松雪泰子扮する元SKD女優・平山まどか は実在の人物で、70代の今も東北地方でフラダンスの指導に当たっていると言う。

蒼井優 や 松雪泰子が披露するフラダンスはフラメンコのように激しく情熱的で本格的境地に達している。
相当の訓練を受けたのであろう。

ハワイアンセンターが1970年代に閉鎖されるまで、360名以上のダンサーが輩出されたと言う。
すなわち、これは実話であったことが、エンドクレジットで解るのである。
(鑑賞前にパンフなどを読んでいなければ・・・)

監督を始め、「在日」の方が多く関わっている点も注目に値する。

この映画については、ここをクリック シネカノン提供

映画「ブラス」については、ここをクリック これもシネカノン提供

映画「フルモンティ」については、、ここをクリック 

映画「スウィング・ガールズ」については、、ここをクリック

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マクローリン & ヒメノ

2006-10-16 00:40:19 | 映画レビュー
ベトナム戦争三部作でアメリカ帝国主義を問い続けて来た
オリバー・ストーン監督が取上げた
「ワールド・トレード・センター」(WTC)
  を見た。

他のサイトでは厳しい評価もあったが、私は評価したい。

亡くなった消防士や警察官を英雄視する国威発揚映画ではない。
 彼らを利用して、アフガニスタンやイラクに無実の罪を着せ
  戦争を仕掛けた、ブッシュ大統領とは全く反対の立場である。

多くの亡くなった人達の最後の瞬間に至る思いと苦悩を
 生還した二人を描くことによって、描いているのである。

「ユナイテッド93」
  では、主として機内で闘った乗客の視点から描かれていたが、
こちらでは、現場で救出活動中に行方不明となった警察官の家族
の心配し、心が動揺するさまを描いている。



映画の主人公 マクローリンとヒメノ は最後に満身創痍ながら
救出されるが、映画の冒頭でWTC現場に向かう大勢の警察官や
消防士達を描いており、彼らは帰らぬ人となったことを想起させる。

マクローリン & ヒメノ に家族との生活があったように、
911で亡くなった2千人を超えるそれぞれの人々に家族や生活が
あったことを、この映画は忘れてはいない。



このテロを起こしたのが誰であるかなどの犯人探しは一切無い。
一般的なテロに対する怒りは表現されるが、アルカイダやイラクなど
を特定することも無い。 
冷静な表現である。

生き埋めになった仲間を救うために、命懸けで救出活動をするという
人間愛と、それを待つ家族との家族愛がもう一つのテーマであった。
こういう表現を嫌う人も居るようだが、私は否定しない。

「大津留公彦のブログ2」では
【海兵隊員がアクション映画の主人公よろしく振舞う安易な作り方にいたく失望した。】
と書いているが、これは極めて浅薄な捉え方だと思う。
海兵隊が世界中で侵略行為を行なっているという事象だけから物事を見ている。
そういう面を持っている海兵隊の中にあって、命を賭して自らの意志で
救出に向かった海兵隊員が実際に少なからず居たということに注目するべきだ
と、私は思う。


一方、ブッシュ大統領のTV演説を市民らが見ている場面が挿入され、
それが極めて空虚なものであることを明示している。
その場面の次には、ブッシュが大統領専用機で飛び立ったという
TV映像が挿入され、「ユナイテッド93」でもそうであったように
警察官や消防士が命懸けで救出活動をしている時に
「ブッシュ大統領は逃げた!」という印象を強く与えるものとなった。

映画の最後に犠牲者の数が出てくる。
そして、現場から救出された人達は僅か20名であり、マクローリン
とヒメノは18・19番目の生き残りであることを記す。

エンドクレジットでは「ユナイテッド93」 のときのような
As Himself(本人)という表示はなかったが、
ホームページの解説によれば、実際に現場で作業をした多数の人々が
エキストラとして出演しているという。

そのエンドクレジットに流れる音楽は鎮魂にふさわしい落ち着いた
ものであった。

この映画の情報は
ここをクリック

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涙(なだ)そうそう

2006-10-07 20:55:26 | 映画レビュー
     (タイトル写真は 大津留さんのブログ より転載)

映画 「涙そうそう」 を見た。

アクションも派手な演出も無く、淡々と話が進む。
それぞれ幼い子連れの二人が一緒になり(映画の中では結婚した様子はない)、兄妹として育ち大人になってゆく過程が回想シーンとして展開される。

兄は妹が血の繋がらない妹と知っているが、妹はそういうことは知らず「兄は血の繋がった兄だと思っている。」と兄は思っている。

母親病死後、幼い二人はおばあの元の離島で暮らすが、兄は高校を中退して那覇に働きに出、父親代わりで仕送りをしている。

妹が、那覇の高校に合格して、離島からやってくる場面から映画は始まる。
そして、兄の暮らす屋上に立てたバラックでの生活が始まり、兄は妹をかいがいしく世話をする・・・

回想シーンで米兵相手の水商売が出てくるが、映画全体を通しては米軍の問題や基地の問題、沖縄戦の話は表立って出てこない。
唯一映画の最後にオバア(平良トミ)の口から、自分の恋人は戦争(太平洋戦争か沖縄戦)で亡くなったという回想で示唆するのみであった。

そういう、淡々とした中に 生命の大切さ を訴える胸に迫る映画である。

「新垣洋太郎」妻夫木聡 と「新垣カオル」長澤まさみがいい味を出していた。
洋太郎の恋人役の麻生久美子も良かった。
友人役の塚本高史もいい。

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「出口のない海」 

2006-10-05 18:56:17 | 映画レビュー
映画 「出口のない海」 を見た。
公式ホームページ

六大学野球の投手であった主人公・並木浩二(市川海老蔵)が、特攻兵器「回天」の乗員に志願し、死に至る心の動きを丹念にフォローした作品である。
実際にあった歴史的事実であり、安倍晋三首相の言うように「後世の歴史家が判断する」ようなものではない。
僅か62年前に時の権力者によって起こされた「本当に起こったこと」なのだ。

回天での特攻に志願しなかった学友・小畑は、「海軍でも補欠だった」と嘆いて去ったが、輸送船で移動中に敵の攻撃を受け、亡くなる。

陸上競技でオリンピックを目指していた学友は、軍部による陸上競技部の廃止に愕然とし(憤り)、反動から海軍に志願する。

彼らは、敗戦を予測しながらも、恋人を守るため、家族を米英の攻撃から守るため、一緒に学んだ学友の仇を討つため、回天での特攻に志願したのである。

志願せずに居ても、そのうち学徒動員で「赤紙」が来て強制的に徴収される位なら、志願して上級将校として活きる(生きるではない)道を見つける。
小作農の子どもとして、社会の底辺での生活より「軍神」として死して郷里に花を咲かす。
など、
さまざまな、理由を見出して死地に向かうのである。

映画の中では、予科練として中学生が志願しているのに、大学生である自分達は如何にすべきか?と問う場面もあり、すでに中学生までもが戦力に込みこまれていたこと、
軍需工場で女子中学生も兵器生産に従事している模様なども再現されている。

この映画を撮り終わるころには、出演した青年達は、「今なら出撃できる」と高揚した気持ちを表明し脚本の山田洋次氏や監督を驚かせたと言う。

【公式ブログ】 (リンクが開くのにちょっと時間がかかる)も開設されているので、関心のある方は、こちらもどうぞ。

今週は、一日2回上映であるが、見に来る人が増えてきたのか、来週からは、レイトショーも含む一日4回上映に戻る。

この映画を見る前日、くしくもNHK
「その時、歴史が動いた」で、
戦火をこえた青春の白球
~学徒出陣前 最後の早慶戦~

が、放映された。 ここをクリック

映画では、明治大学の投手であったが、このNHK番組では、早慶戦を闘った、早稲田と慶応の野球選手や監督・顧問たちが主役であった。

学徒出陣を前にして、最後の「早慶戦」を実現しようと奔走する選手や周辺の人々の活動を取上げている。

NHKホームページからの一部引用
【アメリカ生まれの野球は敵性スポーツとして政府から弾圧を受ける。「野球の灯を消さない」。早稲田の顧問・飛田穂洲(すいしゅう) をはじめ関係者と選手は、必死の抵抗をつづける。
その努力もむなしく、昭和18年4月、東京六大学リーグに解散命令が出され、早慶戦も姿を消す。さらに9月には、法文科系学生の徴兵猶予解除が決定。選手たちは、学徒出陣することとなった。
そんな時、選手から声が上がる。「最後にもう一度早慶戦がしたい」。入隊を目前に控えた両チームはさまざまな壁を乗り越え“出陣学徒壮行早慶戦”を実現。この試合は、のちに“最後の早慶戦”として歴史に刻まれる。】


【早稲田顧問の飛田穂洲 (すいしゅう) の言葉
「舶来のものがいけないのなら、軍人は鎧 (よろい) を着て兜 (かぶと) をかぶり、槍 (やり) や薙刀 (なぎなた) で戦わなければならないのではないか」】

雨の中の「学徒出陣壮行会」の記録映像は、胸を突く。
この映像は、映画「出口のない海」、NHK「戦火をこえた青春の白球」でも同じように使われた。

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映画「UDON」を見た

2006-09-25 18:00:13 | 映画レビュー
映画 「UDON」 を24日のレイトショーで見た。
21:43~23:55。2時間以上の大作。
でも観客数人。もう数週間前からやっているのでね。

ブームとは何か?
何が生み出され、何を壊してゆくか? を面白おかしく問う映画となっている。

映像として、色々工夫はしている。

端役で、有名どころが次々と出てくるのが「なかなかやるぅ!」って感じ。

もう一つは、夢を追い求めニューヨークに行ったが挫折して故里に帰ってきた息子と父親の葛藤がテーマ。

小西真奈美が、コメディたっちのいい雰囲気を出している。
スーツ姿で出てきた途端に、泥水の大きな水溜りにドボンッ!という出だしからして、今までにない役どころ。

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映画「ユナイテッド93」をみて

2006-08-27 00:37:26 | 映画レビュー
見てきました。

いわゆるネタバレ的なことも書きますが、落ちの付いた映画ではないので許されるでしょう。

ドキュメントムービーと言えるでしょう。
 映画に描かれている『機内の状況』は、全て再現映像ではありますが、乗客や乗員が家族に電話した記録や管制塔の記録などを元に再現しているので、臨場感(というような表現が許されるかどうか解りませんが)があります。
 幸せな旅行が、ハイジャック犯の決起の瞬間に地獄図に変わる。
いつ起こるか解らない状況が恐怖を誘います。

 日本公開が1週間前の8月18日前後ですので、ちょうど英国からアメリカへ向かう新たな同時多発テロが事前に発覚した直後とあって、時期的にもタイムリー(と言って良いのかどうか)でもありました。
 この映画を見てしまうと海外旅行を躊躇したかも知れません。特に米国方面への旅行者には刺激が強いでしょう。

 乗客は、最初はハイジャック犯を怒らせないように、刺激することを避けていますが、言葉の障壁をまさに壁にして、一人またひとりと機内電話や携帯電話で家族に電話し始めます。

 TVニュースを見ていた家族達から電話で、WTCツインタワーとペンタゴンに飛行機が突入したことを知らされ、乗客たちの恐怖は頂点になります。
 そこで、勇気ある一人が、「この飛行機は自爆テロに使われる。彼らと闘おう。人数はこっちが多い」と言い、これを伝言ゲーム式に伝えて行きます。CA(スチュワーデス)に武器になるものを集められるだけ集めてくれと頼むと、CAは熱湯、ワインボトル、消火器、機内食用のナイフやフォークを用意します。
 ナイフやフォークは主な乗客に配り、屈強な男性達がハイジャック犯に立ち向かいます。
 パイロットや副操縦士は既に殺され、操縦できるのは乗客の一人の単発機を昔操縦していた老人のみ。 しかし、彼も操縦を決意します。
 そこから、操縦席奪還の闘いが始まるのですが、機外の状況も含めて極めてリアルに描かれます。
 奮闘むなしく、農地に墜落する様を操縦席から見た位置で映し出し、音も映像も全てが一瞬に消滅して映画は終わります。

 そしてエンディングクレジットが延々と続きます。

 キャストの紹介では、当然乗客乗員は全て別の人が演じているのですが(全員死亡)、管制塔の職員などの配役に“As Himself”という方が少なからず居ました。 この映画の意義に共感して自ら再現映像構成に協力したのでしょう。

 映画の中で、航空局は当然空軍の支援を求めるのですが、責任者がすぐに捉まらないなど、危機管理に重大な欠陥があったことがリアルに描かれていました
 管制塔では何機ハイジャックされたか解らない状況に対し、不振な動きをしている機体をリストアップさせホワイトボードに書かせるのですが、十数機に及ぶ事態に。
 これに対しスクランブル発進に応じることができた空軍機は僅か4機。少し遅れて非武装の2機が追加されただけ。

 アメリカ東海岸全体が危機的状況になっているのに、防空体制は僅かこれだけ。ミサイル防衛システムを声高に日本に売り込んでいるアメリカ政府は自国の首都の防空体制も取れていなかった訳です。

 そして、一機が(これが映画の中心である「ユナイテッド93」なのですが)ワシントンに向かっているという情報に、空軍は大統領に『撃墜』の許可を得ようとするのですが、大統領はエアフォースONE(AF1;大統領専用機)で飛び立ったという事態。英語でも字幕でも「大統領は逃げた」となっていました

 自ら先頭に立って指揮するべき大統領が逃げた!
 そして、その後はアフガニスタンやイラクへの無法な無差別爆撃を『命令した』ブッシュ大統領その人のことです。

 無責任な大統領や、無能な空軍に頼れない乗客たちは、自らの智慧と勇気で反撃を行うのです。反撃に立ち上がるとき「さあ、行こう」と言ってから、しばし無言の時間が経過するのは、一点の躊躇とそれを克服する過程を描いているようで、まさにリアルでした。
 
 映画の時間の経過は、一部を除いて殆どリアルタイムの経過をたどっているようです。93便が離陸するのが、映画開始から約30分後。離陸後ハイジャック実行までさらに30分位、そして墜落の暗転で終幕を迎えるのが100分後。

 映画には、何の解説もナレーションもありません。現実が粛々と進行してゆきます。政府批判もハイジャック犯批判も行われません。
 全て視聴者に委ねられています。

長々とかいてしまいました。最後までお読み頂きありがとうございました。

ゲド戦記

2006-08-02 18:09:44 | 映画レビュー
1stDayスペシャルで、「ゲド戦記」を見た。
宮崎Jr.が監督で、スタジオジブリの制作。

1000円で見られるのでなかったら、見に行かなかっただろう。

これまでの、宮崎父監督のようなグロテスクなキャラクターは登場しないが、クモ(田中裕子・声)が唯一液状に変化(へんげ)するところで、若干引継いでいる。

原作の日本語訳は随分長期に亘って行われ、それなりに人気のある作品らしいが、私はこのアニメ作品の予告編で初めて知った。

1stDayスペシャルで、午後9:45分からという仕事を済ませて駆け付けることのできる時間帯ではあったが、場内はガラガラ。
私は6列目の中央(後ろが通路)に席を取ったが、この6列の全体に私一人という状況で、言わば一人で劇場を独占している雰囲気だった。
通路より後ろもせいぜい数十人という入りで、全体の2~3割程度の入りであった。

やはり、聴衆は宮崎Jr.が親の七光りで制作したものと割り切っているようである。

出演“者”のキャラクターは同じ顔ぶれで、変化に乏しく、面白くなかった。
手塚治虫が確立した「キャラクターキャスト方式」のつもりではあろうが・・・

背景の群集や植物や市場の商品などが、動きのない固定した絵であり、手抜きは免れない。
宮崎父が絶妙の質感をあらわしていた水や空気の流れが、全くお粗末であった。

宮崎Jr.の初監督作品は駄作の大失敗といえるであろう。

映画「日本沈没」 リメイク

2006-07-23 18:59:29 | 映画レビュー
日本沈没
を見てきました。

「近い将来、それは明日かもしれない・・・」

一定の科学的裏づけもあるだけに、深刻な問題提起をしています。
本当に、1年以内に日本列島がプレートの動きに飲み込まれてしまうのか・・・?

倉木美咲役の福田麻由子がうまい。

子役とは思えないクールビューティーである。
去年のTVドラマで衝撃を与えた作品「女王の教室」で、学校や同級生や家族も冷めた目でみる進藤さんの役をやっていたのだが、コメディアン風の主役の女の子(役名も覚えていない)よりは、はるかに存在感があった。
1994年8月4日生まれの11才。

消防庁ハイパーレスキュー隊 隊員 阿部玲子役の柴咲コウや、
JAMSTEC 潜水艇わだつみ6500のパイロット 小野寺俊夫役の草ナギ剛
堅実な芝居を演じていた。

山本内閣総理大臣がライオン頭で、誰かを彷彿とさせるが、至って国民思いの首相として描かれているのが現実離れ。 石坂浩二が友情出演だが、開演からほどなく、阿蘇山の大爆発に政府専用機が巻き込まれて、あっけなく「お陀仏」という役どころ。

この後を、危機管理(防災)担当大臣兼任として、閣僚の冷ややかな視線にさらされつつも奮闘するのが、大地真央扮する文部科学大臣・鷹森沙織。
やっば、大地真央はミュージカル癖というか宝塚癖が抜けないね。

配役の紹介はこれ位にして、ストーリーの方を・・・

アッ、まだ見ていない人が居る。
ネタバレ、御法度!

と言う訳で、ネタバレになっても良い範囲は、【公式サイト】 に出ているだろうからそちらへどうぞ。

 ただ、どうしても言いたいのは、最後の最後に、大陸側プレートが太平洋プレートに飲み込まれる部分を、豊川悦司扮する地球科学博士・田所雄介の策により、核兵器同等の威力を持つ新型爆弾を多数配置して連続的に爆破し、プレートの境界を破壊する、という所はいかにも映画(虚構)という感じであった。
 そんなことをしたら、地球の動きに莫大な影響を与えるし、震度7どころで無い大規模地震をアジア全域に起こすであろうし、百メートルにも及ぶ巨大津波が太平洋全域で起こるであろう。
 その爆破する瞬間に、爆薬を仕掛けた掘削線が、その海域に居るなんてことがありえるはずがない。
 ここの所は、言葉で説明しても解らないと思うので映画で確認してください。

 自衛隊の露出度が高いのも致し方ないのか?
憲法改正論議で、自衛隊を認知させようという意図がありありだが、災害時には自衛隊員には頑張ってもらわなければならない。
 こうした中で救出シーンは、全て消防庁ハイパーレスキューにさせているところは、製作者のせめてもの良心か?
 終了間際に、山岳崩壊で孤立した倉木美咲と彼女を取り巻く人々を、救出にきたのは、ハイパーレスキュー隊員 阿部玲子であった。

「バルトの楽園(がくえん)」

2006-07-01 20:47:15 | 映画レビュー
(写真は徳島新聞Web特集版より)

久々の映画レビューです。
「バルトの楽園(がくえん)」を7月1日に見ました。土日は11:15からの一回だけという不遇さ。

 第一次大戦時、日本軍の捕虜となったドイツ兵たちが、ドイツ降伏を受けて、終戦処理で自由になった時に、お別れにベートーヴェンの第9交響曲「合唱付」を演奏するというものである。
 これが、日本での第九の初演だと言われている。

東映映画
監督:出目昌伸、脚本:古田求、音楽:池辺晋一郎
主演:松平健、ブルーノ・ガンツ
関連サイト

STORY (公式ホームページより引用)
【1914年、第一次世界大戦で日本軍は、ドイツの極東根拠地・中国の青島(チンタオ)を攻略した。
ドイツ兵4700人は捕虜として送還され、日本各地にある収容所に収められる事となる。
 厳しい待遇が当然な収容所の中で、奇跡の様な収容所が徳島にあった。
板東俘虜収容所の所長を務める会津人の松江豊寿(まつえとよひさ)は、陸軍の上層部の意志に背いてまでも、捕虜達の人権を遵守し、寛容な待遇をさせた。
捕虜達は、パンを焼く事も、新聞を印刷する事も、楽器を演奏する事も、さらにはビールを飲む事さえ許された。
また、言語・習慣・文化の異なる地域住民の暖かさに触れ、収容所生活の中で、生きる喜びをみいだして行く。

そして、休戦条約調印、大ドイツ帝国は崩壊する。
自由を宣告された捕虜達は、松江豊寿や所員、そして地域住民に感謝を込めて、日本で初めてベートーベン作曲『交響曲第九番 歓喜の歌』を演奏する事に挑戦したのであった。】

 映画は、第一次世界大戦の実写らしき戦争の映像で始まる。
青島(チンタオ)では、この地を植民地支配するドイツ軍に対し、連合軍の一員である日本軍が攻撃。激しい戦闘の後、多大な犠牲者を出しながらも日本軍が勝利。
 多数のドイツ兵が捕虜として、門司から入港し、全国各地の捕虜収容所に送られる。その一つが徳島県の坂東収容所であった。

 松平健扮する坂東収容所長:松江 豊寿は、会津出身で敗残兵のむなしさを明治維新で敗北した父との生活で知り尽くしている。
 その苦い経験から、チンタオでの日本軍との戦闘で敗れたドイツ兵に対して、敗残兵としてではなく、国の名誉を掛けて戦った『武士』としての待遇で接する。
 彼の捕虜に対する扱いに不満な軍部は、これを止めさせようと予算をカットする。 松江は、「捕虜は犯罪者ではない、収容所は監獄ではなく、捕虜の収容所である」と抗議。
 収容者を人間として全うに扱う姿勢を続ける。

 映画のどこまでが事実化は解らないが(というのは、収容所をあまりにも美化しているのではないかと思ってしまうから)、
 なにしろ、収容所内では飲酒も自由、ドイツ語での新聞雑誌の出版も自由、パンやソーセージ工房もあり、捕虜に一人一室の個室という、至れり尽くせりの待遇。
夏には、海岸で水泳をしたり、収容者が作った品物の展示即売会なども行われる。
 それこそ、ビールやウイスキーをどうやって(費用の面でも)調達したかも含め、疑問がある。
 そのうえ、ブルーノ・ガンツ扮する敗軍の将(チンタオ総督)クルト・ハインリッヒが、「ドイツ敗北」を知って自殺しようとするのだが、彼の個室の机の引き出しに『短銃を所持している』というのも捕虜とは思えない。
捕虜は武装解除するのが当然で(そのような場面もあるのだが)何故元総督は短銃を所持していたのだろうか?
 
 村の人たちとも、やがて交流が生まれ、音楽を習いに来るもの、器械体操を学校ごと習いにくる生徒たちなど、坂東村にとっては、当時のドイツの最先端の技術を習得するのが流行している様子。

 そういう武士の温情ある待遇に感動した捕虜たちが、戦後の解放にあたって第九を演奏して感謝を示そうというのである。

 子役の新人?大後寿々花が、ドイツ人を父に持つ『混血児』志を(しお)役で、存在感のある演技をしていた。青いコンタクトレンズらしきものをつけて。(1993年生まれ「北の零年」,「SAYURI」にも出演。ハリウッド出演済みで、新人らしからぬ新鮮さを持つ“新人”)
志をの存在が関係者の中での微妙な結びつきの伏線となっており、映画の緊張感と日独を超越した一体感を持たせている。

 最後の40分あまりに演奏される、第九は全曲とはいかないものの、1楽章から2楽章・3楽章を経て4楽章に入るという念の入れよう。力がこもっている。

 ただ、歌詞の意味を知っている聴衆には問題ないが、この映画で初めて第九に接する人や、歌詞の意味を良く知らない人たちのためには、字幕を入れた方が良かったのではないかと思う。

「Seid umchlungen Millionen. Diesen Kuss der ganzen Welt!
   百万の民よ抱かれよ、この口付けを全世界に! 」や
「Deine Zauber binden wieder Was die Mode streng geteilt. Alle Menschen werden Bruder wo dein sanfter Flugel weilt!
   歓喜の力は時流によって強く分かたれた者たちを再び結びつけ、全ての人々が歓喜の柔らかい翼の中で兄弟となる。 」
 というフレーズは当時としても人々に感動を与えたであろうが、現在にも通じるメッセージだけに、是非とも字幕が欲しかった。

 政治によって、国民に格差が広がり、社会的連帯があらゆる側面で破壊されている(Was die Mode streng geteilt)、現在の国民にとっても、又憲法9条を守る運動にとっても、ベートーヴェン(原詩はシラー)から与えれれた、国民の連帯を訴える(Alle Menschen werden Bruder )強いメッセージであるのだから。

 映画本編終了後の、キャスト・スタッフ・協力者等紹介の、長いクレジットでは、BGMとして、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニーの演奏と映像で第4楽章を流し、それに重ねてソニーの大賀典男氏を始めとする各地で演奏される、第九の写真や映像がオーバーラップするというサービスが付いていた。

明日の記憶

2006-05-20 15:42:39 | 映画レビュー
このところ『共謀罪』サイトになっていましたが、1週間ぶりの映画レビュー。
5月13日、『グッドナイト&グッドラック』を見た後、午後11時半から引き続き『明日(あした)の記憶』を見ました。

50歳を前にした主人公・佐伯雅行(渡辺謙;好演)が若年性アルツハイマーを発症するという話。
最初は、誰にでもあるちょっとした物忘れから始まるのですが・・・
妻・佐伯枝実子(樋口可南子;熱演)が異常に気づき病院で受診。

神経内科の医師・吉田武宏(及川光博)が雅行の診断を担当し、最初に定型的な診断フォームにより簡単な質問を行うのです。
生年月日、今日は何曜日?etc.
次の三つを繰り返してください、そして覚えてください。【桜・電車・猫】
数字を言いますから、順序を反対にして言ってください。【略;というか覚えてない。ヤバー】
等など
若い観客は別にして、中年以上の人は一緒に診断を受けている気持ちになったのではないでしょうか?

そして幾つかの質問の後、「先ほど覚えて頂いた三つの言葉を言ってください。」と 【桜・電車・猫】 を問う。
雅行さん答えられない。吉田医師は「最初は植物です。」とヒントを出す。難航した挙句「桜」は答えることができた。 電車も猫も雅行さんには即答できない。
吉田医師はアルツハイマーを疑い、念のためとMRI検査を勧める。

雅行さんは「俺を馬鹿にしている!」と吉田医師を悪罵するが・・・
MRIの結果は若年性アルツハイマーが確定。

その後、雅行・枝実子夫妻、職場の同僚、クライアントの担当者等多くの人々との確執や励ましや交流が描かれてゆく。

雅行氏は自ら認知症患者の施設への入所を決意し訪問するが、その帰途、心配して駆けつけた枝実子さんを、通りがかりの女性と認識する。この終末が涙を誘う。

若干ネタバレ的報告になってしまいましたが、是非鑑賞されることを期待します。
深夜でもあり、観客は30名位。結構若いカップルが多かったのは意外でした。

グッドナイト&グッドラック(続き)

2006-05-15 10:39:17 | 映画レビュー
 この映画で取上げられている『赤狩り』は、アメリカで起こったよそごとではありません。

 戦前の日本でもあり、その根拠法が「治安維持法」でした。
多くの民主主義者が投獄され、日本共産党関係だけでも千数百名が拷問や、監獄の劣悪な条件化での獄死等で国家権力により殺されました。
小林多喜二の「一九二八・三・一五」を読めば当時の状況が解ります。
学者・文化人・宗教者も多数弾圧され追放されました。
 小林多喜二は作家として権力にペンで立ち向かったのですが、逮捕後直ちに拷問され、その日の内に殺されました。

 戦後1950年前後には「朝鮮戦争遂行の邪魔になる」として、マッカーシズムの直接の影響のもとに、『レッドパージ』(赤狩り)が荒れ狂い、多くの共産党員・民主主義活動家、労働組合員が公務・民間とも職を追われ生活を奪われました(公職追放)。私の知り合いにも、『レッドパージ』で職を奪われた方が大勢居ます。多くは70歳代以上の方々です。

 そして、今国会で自・公で強行採決されようとしている「共謀罪」! 
これは21世紀の治安維持法と言われる内容のもので、共同謀議を推定しさえすれば実行や実態がなくても逮捕できると言うとんでもない法案です。

 再び日本でも冗談抜きで『赤狩り』が起こりえるのです。そしてそれは民主主義を押し殺し、戦争に突入する地ならしになるのです。

 この週明けが再び山場になりそうです。
自民党・公明党に山のようなFAX(メールでは無く)を送りましょう。
「共謀罪」に反対している野党には激励のe-mailを送りましょう!
次のブログに送付先掲載。)

 そしてブログ・ネットワークを一層広げましょう。

Good Night, and Good Luck. と「共謀罪」

2006-05-14 23:55:40 | 映画レビュー
映画 Good Night, and Good Luck 「グッドナイト&グッドラック」を5月13日午後9:15から見た。
アメリカで1947年から1954年にかけて吹きすさんだ、『赤狩り』(共産主義者追放)がテーマである。

今、このブログや全国数十万のブログで取り上げられている「共謀罪」とも無関係ではない。

マッカーシー上院議員達一部の議員が「この団体は共産党系」「彼は共産党員」と決めたら何の証拠が無くても、それが“公認”されてしまう。
何しろ、運動に参加もせず、支持もしていないのに「共産党」や共産党系の団体に友人・知人が居るだけで「非米活動委員会」に召喚され、共産党との関係を自白するか、それでなければその友人・知人を密告することを求められるのだから。
これに従わないものは、追放される(職を追われる)。
一例は、『ずっと前に離婚した元妻が共産党系団体(と彼らが言う)団体の集会に出たことがある』というもので、この映画にも主人公の部下の発言として出てくる。

この映画は、1953年に「非米活動委員会」で『赤狩り』の中心となったマッカーシー上院議員のやり方をCBSTV(TVがまだ始まったばかりの頃)で、マッカーシー自身の発言を編集して放映し、その「不公正なやり口」(と、言うよりは全くでたらめなやり口)を暴露したエドワード・W・マロー(エド・マローの愛称)の闘いを描く。

私どものようにブログで好き放題発言するのではなく、綿密な取材と裏づけを持ちながらも、まさに『職を賭して』(命を懸けて)告発するのである。

この『赤狩り』の目的が、戦争遂行の邪魔になる民主活動家を政界・経済界・文化界などから一掃するためのものであったことは、『赤狩り』の開始が朝鮮戦争を前にした(中国革命や朝鮮革命が進展していた頃)1947年であることで歴史的にも証明されている。
朝鮮戦争が1953年に終わると、今度はマッカーシー上院議員が1954年に上院の「問責決議案」を受けて政治生命を事実上失う。これは、彼一人に『赤狩り』の責任を押し付け、張本人(黒幕)は無罪放免になったということだと思う。

映画の始まりは、ある米空軍将校の父や姉が『赤である』と決め付けられ、それを理由にして職を追われるというニュースから始まる。本人には何の問題も無く合衆国に忠誠を尽くしているのに、家族の問題で職を追われるのはおかしいのではないかというところからエド・マローの取材と追究が始まる・・・
この後は、ネタバレとなるので、映画を見ていただきたい。

 この映画では主として政府や軍部内の共産主義者とシンパの問題を扱っているが、1990年頃の「真実の瞬間(とき)」(ロバート・デ・ニーロ主演)では1947年から始まったハリウッドの『赤狩り』を取り上げていた。これは当に映画という思想を取り締まるものに他ならない。
 「真実の瞬間」の中で出た“Naming Name”(知り合いが共産党との関係があるかどうか名前を密告すること)という単語に強い印象を受けたものであった。

『共謀罪』を作れば、こういう思想狩りの根拠を与えることになり、最初は共産主義者を名指しにして、国民の黙認を得ながら、結局国民が声を上げられない暗黒政治を敷き戦争に突っ込んで行くのである。これは日本でも外国でもみんな同じである。

他にもハリウッドの良心を示す、この問題を扱った映画が幾つもある。

続く

プロデューサーズ

2006-04-19 22:33:47 | 映画レビュー
今日会社帰りにミュージカル映画「プロデューサーズ」を見た。

新聞の映画評や前評判が上々だったので期待したのだが・・・
早い話が、ドタバタ喜劇。
その中にもエンターテイメント業界の風刺や、演目「春のヒットラー」公演を通じてネオナチを馬鹿にしているところはある。
また、この業界ゲイの人たちの活躍の場であることも・・・

まあ、おもしろい映画であることは確かだが、「シカゴ」や「オペラ座の怪人」には遠く及ばない。(見る人によっては全く反対の見方も・・・)
英語が堪能な人には連発される下ネタが楽しめるかも。

この手の映画には最後の最後に何かあることが多いので、長いクレジットを堪えて見ていたが、やっぱり最後にボーナス映像があった。
見に行くなら最後まで付き合うべし。

ブロークバック・マウンテン

2006-03-27 23:54:05 | 映画レビュー
久々の映画レビュー

ブロークバック・マウンテン

今年度アカデミー賞3部門受賞(監督・脚色・音楽)
ゴールデングローブ賞4部門受賞(作品・監督・脚色・主題歌)
という触れ込みにつられて見に行った。

近頃のアメリカ映画とは思えない音的に静かな映画で、全く音のない場面も。
映る景色も美しく心洗われる感じがある。
季節ごとに羊を追う牧畜労働者が主役であり、大量の羊が画面に出てくるので寝不足の向きには催眠効果も抜群かも。

しかし、テーマは男性の同性愛という重く難しい話題。
これが、さまざまな賞を受賞するということは、アメリカ映画界には、そういう性向が極普通のこととして結構広がっているということか?
男性の同性愛者ではあるが、それぞれ妻と結婚して子どもも居る。
結婚前からそういう関係で、結婚してからも20年以上続いているという状況。

私にはとても理解できないシチュエーションである。
どうしてこれがアカデミー賞、ゴールデングローブ賞で7部門も受賞するのかわからない。