京都大教授山中伸弥さんのノーベル賞受賞をひとつの背景として、
読売新聞と共同通信が一昨日『スクープ』した 【iPS細胞「初の臨床応用」】
情報が誤報であったことを発信元の読売新聞と共同通信が認め「おわび」した。
東京大医学部特任研究員の森口尚史氏がハーバード大学で
【人工多能性幹細胞(iPS細胞)を心筋細胞に変え、重症の心臓病患者に移植した】
との情報であり、動物実験段階のものを臨床応用したという画期的なものだった。
読売新聞の検証記事によると、
【森口氏が9月19日に読売新聞記者にこの話を持ち掛けた後、論文草稿と手術の動画を提供し、記者が10月4日に森口氏が特任研究員を務める東京大医学部付属病院の会議室で約6時間取材した。】
とのこと。 その際に、当該の大学や共同研究者として列記されている学者への
裏付け取材を行なったことは無く、裏取りを怠ったという話。
TVニュースに出演した森口尚史氏の発言も自信に満ちたものではなく、
歯切れの悪いもので、肩書きも含めて信憑性を疑わせるに充分なものだった。
【iPS細胞】研究での「ノーベル賞受賞」に水を差す結果となってしまった。
ただ、この記事の掲載が、山中伸弥さんのノーベル賞受賞の後であったことは、
意図してか偶然かは不明だが、不幸中の幸いであった。
もし、ノーベル賞発表の前に発覚していたら、日本のiPS細胞研究全体の
信用を失う結果となっていたかも知れず、ノーベル賞も逃したかも知れない。
全く人騒がせな『功名心』である。
事態の推移を検証した紙面全面を使った読売新聞の記事(10/13)
その記事の推移の概略部分(読売新聞 2012/10/13 朝刊)
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「森口氏説明は虚偽、誤報」
=読売新聞がおわび―iPS細胞「初の臨床応用」
(時事通信) - 2012年10月13日(土)08:57
米ハーバード大客員講師を名乗る森口尚史氏が人工多能性幹細胞(iPS細胞)を心筋細胞に変え、6人の患者に移植する治療を行ったと最初に報道した読売新聞は13日付朝刊で、「同氏の説明は虚偽で、一連の記事は誤報」とするおわび記事と取材経過を明らかにした検証記事を掲載した。
同紙が森口氏の「iPS細胞初の臨床応用」を報じたのは、11日付の朝刊と夕刊の各1面トップ、12日付朝刊早版など。検証記事によると、森口氏が9月19日に読売新聞記者にこの話を持ち掛けた後、論文草稿と手術の動画を提供し、記者が10月4日に森口氏が特任研究員を務める東京大医学部付属病院の会議室で約6時間取材した。
同紙は森口氏が名乗る「ハーバード大客員講師」や「東京大医学部iPS細胞バンク研究室長」という肩書を報道前に各大学に確認しなかったことを明らかにした。ハーバード大関連のマサチューセッツ総合病院の広報担当者が「臨床研究に関する申請自体がない。手術は一切行われていない」と述べたことや、「論文」の共同執筆者4人のうち森口氏が師事する東京医科歯科大の佐藤千史教授以外の3人が関与を否定したことなどから、虚偽、誤報と結論付けた。
【おわび】iPS移植は虚偽…読売、誤報と判断
(読売新聞) - 2012年10月13日(土)07:01
iPS細胞から心筋細胞を作り、重症の心臓病患者に移植したという森口 尚史 ( ひさし ) 氏(48)の研究成果に疑義が生じている問題で、同氏の論文の「共同執筆者」とされる大学講師が論文の執筆に全く関与していなかったことが12日、読売新聞の調べで明らかになった。
同氏の研究成果については、米ハーバード大の当局者や複数の専門家も真実性を否定していることから、読売新聞は同日、同氏の説明は虚偽で、それに基づいた一連の記事は誤報と判断した。
大学講師が共同執筆者であることを否定しているのは、森口氏が心筋細胞の移植の研究成果をまとめたとする論文。森口氏は本紙記者に対し、この論文は「ネイチャー・プロト
コルズ」誌に掲載予定と話していた。
同論文は森口氏を含む5人による共同執筆となっていたが、大学講師は同日、本紙の取材に対し、「森口氏とは約5年会っておらず、論文に名前が使われることは全く知らなかった」と語った。また、別の共同執筆者の大学教授は、ハーバード大の倫理審査について森口氏に尋ね、「クリアになった」と回答されたという。同大は倫理審査での了承を否定している。
森口氏が先月、同誌に投稿した記事についても、共同執筆者の1人とされた大学助教が「知らなかった。私は研究に関与していない」と大学当局に話した。
一方、森口氏は「東大医学部iPS細胞バンク研究室に所属している」と称していたが、東大によると、こうした研究室は実在しないという。同氏が「東京医科歯科大と行った」としていた共同研究については、同大が同日、「ここで行った事実はない」とのコメントを発表した。
東大病院、東京医科歯科大は同日、森口氏が関係したとして発表された論文や研究の検証を始めることを明らかにした。
◇
YOLに掲載されたiPS心筋移植に関連する記事に誤りがありました。おわびします。
iPS移植、疑念噴出 「客観的データ全くない」
(産経新聞) - 2012年10月13日(土)08:05
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心筋細胞を作り、患者の心臓に移植する初の臨床応用を行ったとする日本人研究者、森口尚史氏(48)の主張の信憑(しんぴょう)性が揺らいでいる。治療を行ったとされる米マサチューセッツ総合病院側は実施を全面否定、「ハーバード大客員講師」という肩書も大学側は否定した。研究者からも研究内容に疑問の声が上がっており、iPS細胞研究への悪影響も懸念される。
森口氏の母校、東京医科歯科大や東大によると、森口氏は東京医科歯科大と同大学院で看護学を学び、平成5年4月に看護師の資格を取得。その後、東大先端科学技術研究センター特任助教授、特任教授を務めた。22年3月には東大医学部付属病院の技術補佐員となり、現在は特任研究員だ。
森口氏の特任研究員としての研究テーマは「過冷却(細胞)臓器凍結保存技術開発の補助」。医師免許は持っていないが、米ニューヨークでフジテレビなどの取材に応じた際は「マサチューセッツ州発行のフィジシャン・アシスタント(医師の助手)の資格を持っている」と話した。
森口氏を大学院時代に指導した東京医科歯科大の佐藤千史(ちふみ)教授(健康情報分析学)は、12日の会見で「最初(のテーマ)はiPSではなかったが、21年ごろにiPSに興味を持ち始め、22年からiPSに関する論文を出し始めた」という。
「今回の森口氏の論文には、客観的なデータが全くない。発表するとした科学誌の書式にも合っていない」。慶応大医学部の福田恵一教授(循環器内科)は、こう指摘する。
東京女子医大先端生命医科学研究所の清水達也教授(再生医療)も「報道で知る限りでは肝臓移植患者に治療を行ったようだが、体力も免疫力も低下している移植後の患者の心臓に30カ所も注射するのはリスクがある」と不自然さを指摘。大阪大大学院医学系研究科の澤芳樹教授(心臓血管外科)は「米国で治験を行うにはFDA(米食品医薬品局)の承認が不可欠だが、承認を取ったという話が入っていない」と述べた。
研究者が懸念するのは、今後のiPS細胞研究に与える影響だ。東大医科学研究所の武藤香織准教授(医療社会学)は「適切な計画を立てて行われている研究と今回のケースが一緒に解釈されてしまう悪影響も考えられる」と話した。
iPS報道、読売新聞が「調査」 共同、誤報認めおわび
(朝日新聞) - 2012年10月13日(土)00:55
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