今日の西日本社説は、中々読み応えがあった。
おとといの大見出しも、原発再稼働を求めるものではなく、エネルギー政策の
転換を促す大きな文字が見開き紙面の上部全体を覆っていた。
一方、読売新聞は個々の記事では原発の問題点を指摘するものもあるが、
社説や論調全体は「再稼働推進」である。
以下、西日本新聞の社説を丸ごと引用する。
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全原発稼働停止 どこが一番安全だろうか
西日本新聞 社説 - 2012年5月8日(火) 10:44
北海道電力泊原子力発電所3号機(北海道泊村)が定期検査のために運転を止め、国内の原発50基がすべて停止した。
原発の稼働ゼロでは今夏の電力不足が深刻になるとの声がある。だが、原発再稼働に国民の理解は得られていない。
再稼働に向けた動きがあるのは関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)だが、共同通信社が先月末に実施した全国電話世論調査では、大飯原発3、4号機の再稼働に「反対」が59・5%で、「賛成」の26・7%を大きく上回った。
政府の進め方にも問題がある。再稼働ありきで安全のハードルを甘くしていないか。そんな疑念が晴れない。
4月18日に開かれた国会の東京電力福島第1原発事故調査委員会(黒川清委員長)でも、そんな指摘があった。この日は経済産業省原子力安全・保安院の深野弘行院長に出席を求め、質疑を行った。
行政の指導、指示に対し、原発事業者は、どこまで従い、実施しているのか。
例えば「免震重要棟」である。
2007年の新潟県中越沖地震の際、東電柏崎刈羽原発の事務本館が被災し、「指揮所」として機能が一時失われた。
東電はこれを教訓に福島第1原発に免震重要棟を建設した。震度7クラスの地震に耐える設計で、通信設備、TV会議システム、自家発電設備などを備えた。東電は昨年12月の事故調査中間報告書で「仮に本施設がなければ(事故の)対応は継続不可能だった」と振り返った。
原子力安全・保安院は東電以外にも免震重要棟の整備を促したが、中部電力と四国電力が設置したにとどまるという。
再稼働の動きがある大飯原発3、4号機では当面、既存施設の会議室で代替し、免震重要棟は15年度の完成を目指す。
新潟県中越沖地震の教訓はまだある。
柏崎刈羽原発で想定を超える地震動を記録した。このため、保安院と原子力安全委員会は全国にある原発の耐震安全性の確認(バックチェック)を求めた。
作業はどこまで進んだか。事業者によってばらばらだ。11年3月時点で福島第1原発は5号機の中間報告が終わっただけだった。関電では大飯3、4号機、美浜1号機などが中間報告を終えていた。
国会事故調が指摘するのは行政指導の限界、不透明さである。それは大飯原発3、4号機の再稼働を判断した野田佳彦首相と枝野幸男経産相など関係3閣僚の協議にも共通する。私たちは、この協議の詳細を公開した方がいいと書いた。
国と電力会社のもたれ合いが続いているのではないか。国民は疑っている。疑念を晴らすには議論の過程や手続きの透明性を高めるのが一番である。
どの原発が安全か。多様な基準を使って順番を付けられないか。国会事故調の黒川委員長は保安院の深野院長に提案した。上位の原発から再稼働の可能性を検討する。万が一の電力危機に備えるには理解を得やすい手法かもしれない。少なくとも手続きの透明度は高まりそうだ。
=2012/05/08付 西日本新聞朝刊=
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