▼クリスマスの衝撃
幼い頃のこと。十二月生まれの私に母から誕生日の贈り物がありました。包装紙には、赤服姿の爺様が、うじゃうじゃ笑っているのでした。そして夏生まれの兄も同じ日に、同じ包装紙の贈り物をもらうのだから不思議でした。
「お兄ちゃんは、夏にプレゼントがあったのに。なぜまたもらえるの?」
「今回のはクリスマス・プレゼントよ」
答える母に、聞くこと再び。
「私のは、クリスマス・プレゼント? それとも誕生日プレゼント?」
「ふたつぶん、まとめてあるんだよ」
えっ! 私の大事な記念日が、あやしげな赤服さんのイベントにまとめられてしまうなんて……。しかも包装紙からして、どちらが主役か一目瞭然。
ヒドイヨヒドイ、赤服爺。生身のあなたは家に一度もきてくれず、おまけに誕生日のじゃままでするつもり?
▼タコ焼きの衝撃
結婚を機に関西に住みはじめた私は、タコ焼きの大歓迎を受けました。
① 昼食にと夫が台所でタコ焼きを作りだした。(自家用タコ焼き器があるなんて。そもそもタコ焼きって、ゴハンになるの?)
② 近所のママさんグループによる「タコ焼きパーティ」の開催。(全員myタコ焼き器持参。朝から夕まで焼いて焼いて食べつづける…)
③ 道端のいたるところにタコ焼き屋。(競争率激しそう。やっていける?)
④ スーパーの冷凍食品売り場に、チンするタコ焼きジャンボパック。(おやつに弁当に大好評!?)
自分には無関係だと思っていた事がらが、ふとした出会いの衝撃で、きわめて私的で重要な意味を持ちはじめることもある――そんな変哲のない日常が、おかしくて、愛おしくてなりません。
絵童話『うちゅういちのタコさんた』の主人公、大阪生まれのたまこにも、作者とは一味違う「タコ焼きとクリスマスの衝撃」がありました。それについては、たごもりのりこさんの描かれた、愉快なタコタコ星人にお会いになっていただければわかります。
■こどもの本<日本児童図書出版協会> 2006年12月号 私の新刊掲載