ウォーホール左派

今日も作詩、明日もまた、本格詩人のブログ。

立原道造詩集より

2022-10-31 11:29:25 | Weblog

『のちのおもいに』立原道造

夢はいつもかえって行った 山の麓のさびしい村に
水引草が立ち
草ひばりのうたいやまない
しづまりかえった午さがりの林道を

うららかに青い空には陽がてり 火山は眠っていた
ーーそして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいていないと知りながら 語りつづけた…

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもい
忘れつくしたことさえ 忘れてしまったときには

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであろう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであろう
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