盛岡ノートー立原道造ー 2021-07-09 11:08:54 | Weblog 「盛岡ノート」昭和13年8月〜10月 はじめての夜。 もう眠ろう、爽やかな眠りよ、もう僕の言葉は一度 お前の闇をとおって ふたたび光に変わるとき あたらしい しらべを 血肉を 得るだろう。 『立原道造全集』第四巻
堕天使に施し 2021-07-08 12:53:58 | Weblog 堕天使に施し与え回心には関与しないさ瞬く終末 *地球がスパーンと竹を割ったように真っ二つに割れる。 その切断面の黒曜石を磨いた様ななめらかな輝きそして 粉々に小惑星群の様にチリに帰る。スパーンと真っ二つだ。 君らが僕の魂と亡き僕の畏友に為した如く。
盛岡ノートー立原道造ー 2021-07-06 11:55:51 | Weblog 「盛岡ノート」昭和13年8月〜10月 汽車は山形をすぎたーー灯火管制の最中で町はまっくらだ ここに降りても案内がわからないので 楯岡まで行くことに した………窓はみな鎧戸をおろしている 『立原道造全集』第四巻
火山灰ノート昭和13年8月ー立原道造ー 2021-07-04 21:55:38 | Weblog 「火山灰」ノート この村でのくらし。あたらしいくらし。 ちょうど五年目に、いくつもの文字と空白のあと、 ノオトをおえる最後の紙に来た。僕はどんなにしても 光をもとうとおもう。どんなにしてもくらくてはいけない、 僕のあたらしいくらしは!今は何も追憶するまい。 昭和13年8月12日ー立原道造ー
詩はー立原道造ー 2021-07-02 13:21:39 | Weblog その下に行って 僕は名を呼んだ 詩は だのに いつも空ばかり 眺めていた 空の小鳥を 空の雲を ☆ こわい顔をしていることがある 爪を切っていることがある 詩はイスの上で眠ってしまったのだ ☆ あかりの下でひとりきりでいると 僕は ばかげたことをしたくなる 『立原道造全集6』
風のうたった歌ー立原道造ー 2021-07-01 17:25:24 | Weblog 『風のうたった歌』 一日 草はしゃべるだけ 一日 空は騒ぐだけ 日なたへ 日かげへ過ぎて行くと ああ 花 色とにおいとかがやきと むかしむかし そのむかし 子供は 花のなかにいた しあわせばかり 歌ばかり 子供は とおく旅に出た かすかに揺れる木のなかへ 忘れてしまった木のなかへ やさしく やさしく笑いながら そよぎながら ためらいながら ひねもす 梢を移るだけ ひねもす 空に消えるだけ 『拾遺詩篇』ー立原道造ー