朝は曇り空で、北西の風が強く、風が冷たかった。
潮は、上り潮が入り、良い色をしていた。
しかし、その潮の流れは、2ノット以上と底取りに苦労させられる。
おまけに、風は北緯の風なのに、北東からのウネリが高い。
目線を超える高さではないけれど、船が大きく揺れる。
「予想外のウネリですね」
「思ったより、波がありますね」
横山さんと、そんな話をしながら、瀬周りのベイトを探す。
「着底が取れますか」
「2度目から、可成り厳しくなりますね」
「風に向かって流れるくらいの速さですよ」
「2度目の着底を取るのに、可成り糸が出ていきますね」
苦労して着底を取り続けていると、横山さんにアタリが来た。
竿先の叩き方を見ていると、真鯛のようだ。
「真鯛ですね」
「多分、そうですね」
上がってきたのは、1キロ超の真鯛。
お腹には、卵が入っていた。
「まずは、1匹釣れて気持ちが楽になりましたね」
「良かったです」
強い北西風と、速い上り潮に、苦戦を強いられる中での真鯛は嬉しい。
しかし、この後は真鯛と思われるアタリが全て甘噛みになって、針掛かりしてこない。
風を少しでも避けられるところを探して、ポイントを移動する。
移動するときは、波しぶきが正面から被ってくる。
分かっていたことだが、内場も凄い風波が立っている。
内場で浅場を中心に攻めていると、やはり真鯛らしいアタリが出てくる。
でも、ここもなかなか針掛かりしない。
アタリが来ても、ぐっと我慢して走るのを待つ。
すると「何とか乗りました」
竿先をコンコンと叩くアタリだ。
「真鯛ですかね」
「だと良いですね」
上がってきたのは、良型のイトヨリダイ。
「良い型ですね」
「渋い中で何とか取れましたね」と、思わず笑顔になる。
この後も、食い渋りは続いた。
しかし、風がなかなか止む気配もない。
「今日は、帰りますか」
昼過ぎ、北西の風に向かって、帰港した。