「午前9時過ぎには、風が出てくるかも知れませんね」
天気予報では、昼前から風が強くなる予報だった。
久家さん親子を乗せて、朝間詰めの短時間勝負のつもりで船を出す。
目指したポイントは、漁船の延縄が入っていた。
甘鯛の延縄のようだ。
急遽、ポイントを変える。
船を走らせながら見る潮は、湧昇流が見られる。
「潮が速い気がしますね」
久家さんも、同じ様に潮を見ていた。
ポイントに入ると、久家さんが娘さんの実桜菜さんに、竿を出すように勧める。
その仕掛けの入り具合を見ていると、やはり流れが速い。
「1.5ノット以上で上っていますね」
実桜菜さんが、速い潮に馴れていない事もあって、再度、ポイントを移動する。
前回も、実桜菜さんが好釣果を上げている。
今回もと、父親の娘に対する優しい心遣いが、伝わってくる。
移動したポイントの流れは1ノット前後と、釣りやすい流れになっている。
実桜菜さんに、アタリが来た。
その横では、久家さんが心配そうに見ている。
「見えた。真鯛ですね」
食べ頃サイズの真鯛が、上がってきた。
「一枚上がれば、後は安心ですね」
久家さんも、得意の一つテンヤで竿を出していく。
その一つテンヤに、いきなりの強いアタリ。
最初の突っ込みに竿が、大きく曲がった。
「やられました…」
テンヤの仕掛けが、切られていた。
「結び目から、切られました」
その後も、何かがバイトしてくるのだが、口惜しい針はずれで逃がしてしまう。
実桜菜さんに、次のアタリが来た。
上がってきたのは、イトヨリダイ。
「美味しい魚だよ」
お父さんと、食の話に花が咲いた。
調子が出始めたとき、西寄りの風が強くなってきた。
潟から、白波が寄せてくる。
「波がバタバタ成る前に、島陰に移動しましょう」
直ぐに、風除けのために移動する。
大島の、北側に移動。
ベイト反応を探して、竿を出す。
久家さんにアタリが来た。
上がってきたのは、良型のイトヨリダイ。
イトヨリダイも、最初のアタリは良い引きを見せる。
しかし、西寄りの風が、益々強くなってきた。
「上がりましょうか」
正午に、安全第一で切り上げる事にした。
帰りは、風に向かって、帰ることになった。