静かに雨が降る。
3月11日が間もなく来ると新聞、テレビが伝える。
あの大震災の数日後、書店の文房具売り場の片隅で
突然、私は身体が硬直し息をころし立ちすくんでいた。
目の前には大人の頭ほどの地球儀があった。
日本列島の、津波で甚大な被害のあった地域から、
2センチ下に鎌倉がある。
家も流されず、けがもしないで存在している自分が不思議な気がした。
連日、まるで映画の一場面のような恐ろしい、
例えていうなら、到底この世の出来事とは思えない映像を見て
荒れ狂う、黒い鎌倉の海を頭に描いた。
『たまたまこの町は残った』そんな風に思えた。
大切にしなければ、自分も、触れ合う人も、町も。
鎌倉は、春の雨が静かに降っています。