奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

きっと そこから

2013-03-31 | 心詩~こころうた・己
浮ついた足元
定まらない思考
あの日流した涙を
刻んだ心はどこに

人は容易く変われない ならば
なにを乗り越えれば
どれだけ乗り越えれば
人は 私は
浅はかな殻を脱ぎ捨てられる

思い描く理想には
どうすれば辿り着ける
幾通りもの未来が
思考を駆け巡り
置き去りにされた私は
力なく項垂れる


翼なんてないから
この両足で
歩いてゆくしかない

空を仰ぐ前に
足元に目を向けて
等身大の自分から
目を逸らさないで

変われないのなら
そんな自分を許せるように
浅はかな執着を捨てて
ちっぽけな自分を愛せる自分に

きっと そこから──

綿埃

2013-03-28 | 心詩~こころうた・己
時代の波に翻弄されず
時代の恩恵を受けることもなく

ただ
自分の運のなさに
縛られて生きている


遥か底辺で
浮き沈み
浮き沈み

いつか いつかと
諦めのつかぬ
夢だけを見て


ただ ただ 生きる
生きるためだけに
生きている

部屋の隅を転がり続ける
綿埃みたいに

この汚れた世界で

2013-03-22 | 心詩~こころうた・己
優しさを笑うな
弱さを嘲笑うな

誰も傷つけまいと
誰にも傷つけられまいと

本心を押さえつけ
本性を押し殺し

傷つかないふりをして
かわりに自分を傷つける

悲しい優しさ
滑稽な弱さ


いたわりあえるのは
目には見えない心の闇を
知っているもの同士だけ

そこに触れれば
壊してしまうことを
知っているもの同士だけ


傷ついた指先で
互いの心をそっと撫であう

この世界で
たったふたりだけの 存在

3.11~二年が過ぎて

2013-03-12 | 心詩~こころうた・己
今もまだ
ただなかにいる人たちの
無念の思いはいかばかりか

今もまだ
土くれを掘り返す人たちの
懇願の思いはいかばかりか

二年という時の流れを
七百三十日と思うならば
その一日一日は
いかに長い時間であったろう


地獄の底を味わった人たちの
なんと神々しい笑顔だろうか

人はどこまで強くなれるのか
自分ならそうなれるのだろうか


希望が人を生かす力ならば
それは自分自身の手で
掴もうとしなければならないもの

未来が見えぬと絶望するなら
どんな小さな希望でさえ
気づかずに通りすぎてしまうのだろう


過去を未来に繋ぐ
その繋ぎ目のひとつひとつが
今日という日の積み重ね

地獄はいつも日常の隣にあって
その牙はいつも不意打ちを食らわす

それでも止まることない時間の中で
人は意地でも生きようと足掻くのだ

愛の配分

2013-03-07 | 心詩~こころうた・世
暗い部屋でひとり
孤独に暮らす人がいる
生きる気力をなくした空虚な心で
外の世界から自分を隔絶してしまって

暗い部屋でひとり
孤独に果ててゆく人がいる
誰に救いを求めることもなく
誰に気づいてもらえることもなく

平和に見える この国の
豊かに見える この国の
本当の病状が露わになる


格差社会が今の世ならば
愛の配分にも
格差があるというのだろうか
支えあうのが人ならば
なぜ こんなにも
歯がゆい世の中になってしまったのか

富める権力者は
力なき者たちの悲惨を推し量れない
社会を動かせない歯車は
虚しく排除されるのを待つだけなのか


「普通の幸せ」
そんなものはただの虚飾
普通などという価値観が
人を生きにくくさせるのではないか

「自己責任」
なんと薄情で便利な思考か
窮屈でアンバランスなこの社会に
すべての人間が適応できるわけではない


愛の配分は満遍なく
孤独に生きる人の心にも
もっと優しい社会であってもいいだろう
力ある者が力ない者に手を差しのべる
そんな姿こそが 人間の誇りではなかったか