奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

負の連鎖

2012-11-30 | 心詩~こころうた・己
二度と同じ傷を
負いたくないと
ただ 自分を守りたくて
違う生き方を選んだ

後ろ盾もなく
この身ひとつで立ち向かう
無鉄砲を嘲笑うかのように
すべての物事が
マイナスとなって
私に跳ね返る


心の持ちようを変えれば
人生も変わる

そんな言葉を聞かされても
根拠がなければ
この胸には響かない

信じた心を裏切られる
その惨めさには
もう うんざりしているから


なにもかもが狂ってしまった
足掻けば足掻くほど
事態は悪化してゆく

もう過去には囚われない
もう恨みに支配されない
そう思えども
容易く断ち切れるほど
傷は浅くなかった


今の私を貶めるのは
この傷から放たれる毒
憎むべき相手には届かず
みずからを腐らせてゆくだけ


なぜ私はいつまでも
こんなに惨めに苦しんでいるのだ

なぜ私は今もまだ
誰にも話せぬ感情に押し潰され
独りさめざめと泣いているのだ


私が心穏やかにいられるためには
もはや
人間以外の存在となるしかないのか

私小説

2012-11-30 | 心詩~こころうた・己
振り返れば
この人生の途上で
覚えたことも
得たことも
あまりにも少ない

私という希薄な容れ物は
他人に容易く
粗悪なストーリーを書き込まれてしまう
余白だらけの紙のようなものだ


知識は
教訓は
己を生きるための
己を守るための
武器となるもの

野心と好奇心で
あるいは
苦渋と辛酸の果てに
びっしりと白紙を埋め
ページを重ねてゆくことを
成長と呼ぶのだろう

この身に刻み込まず
ただ通り過ぎるだけの経験ならば
あとに残るものは
そのとき抱いた
負の感情だけ


向上心の欠落を
望まぬ境遇のせいにして
自分の未来を
蔑(ないがし)ろにしてきたのだ

その瞬間瞬間は
未来へ向かう
一歩一歩だということに
私は
いつまで気づけなかったのか


生きていれば
ストーリーは刻まれるのではない

自分の頭で構想を練り
自分の足で材料を集め
自分の手で書き上げてゆく

それが本物の
自分の人生というものなのだろう


絵空事ではない
私という
生身のリアルな人生を
締め切りの日までに
完結させることはできるだろうか

派手な演出は
いらない

一歩ずつ
着実に前に向かって歩いてゆく
そんな主人公になれればいい

心で生きるものたちのために

2012-11-28 | 心詩~こころうた・世
この世界に
まだ心は通用するか
この世界を牛耳るものは
まだ 人であるか

この世界の判断基準は
心で決めたか?
頭で決めたか?
腹の中で決めたのか?


誰かが
誰かから搾取し
誰かの利益だけのために
設計された世の中で

泣くものの陰に隠れ
ほくそ笑むものたちのために
すべてはお膳立てされる

痛みを知らぬものたちは
火の粉もかからぬ遠い場所から
他人の不幸を
己の利益の捨て駒にする


口先ばかりの偽善を着飾る
中身のない張りぼて社会

虐げられたものたちの
見捨てられたものたちの
声は
怒りは
悲しみは
一体どこに向かえばいい


心で接すれば
心で応えてくれる
心を尽くせば
心で返してくれる

それが正しい人の世だと
誰かに証明して欲しいだけ

今の不遇に耐えて
生きる価値のあるものだと
信じさせて欲しいだけだ

戦意喪失

2012-11-25 | 心詩~こころうた・己
なにもかもに
意欲をなくしている

日々の生活も
紅葉を愛でることも
夢を追うことにも
生きることにも

頑張ろうとした
新しい人生を始める
道を切り拓くため

だけどそれは
想像以上に容易ではない道
わずかな手応えさえ
まだ返ってはこない


自分で自分を
追い込んでいるのか
しなくてもいいことを
しても無駄なことを
やっているだけなのか

私が選んだ道は
また間違っていたのか
まだ答えを出すのは
早すぎるのか

だけど もう
力尽きてしまった
希望の見えないこの人生を
これ以上どう頑張れというのだ


私は
なにを望まれて
生まれてきたのだろう

なにも考えなければ
なにも望まなければ
楽に生きられる?

そんな人生に
なんの意味がある?

小さな箱に閉じ込められて
ただもがいているだけの私


生きることまで
放棄できないから
このままじゃ
壊れてしまいそうだ

生き下手

2012-11-23 | 心詩~こころうた・己
いい子でいるクセが
染みついてしまった
心と裏腹な
模範解答ばかり

嫌われることが
そんなに嫌だったのか
自我の形成よりも?

好かれたかったその人は
自分にとってどれだけ
大事な人だった?


それでも自分が
排除されてきたことに
気づいたとき

集団の中で
自己のない者の居場所など
どこにもないと気づいたとき

それが
間違った生き方だったと
ようやく分かった


なにが大切なのか
なにを大事にするべきなのか
そんなことも判断できない
ただの愚か者

誰に媚び
なにを得たのか
誰のために行動し
感謝されたのか

真面目であれば
従順であれば
報われる世の中ではない

批判を恐れ 衝突を恐れ
意に沿わぬ生き方をすれば
その代償は
自分自身で払うことになる


人はみな
自我をぶつけ合いながら
人間社会を形成しているのだろう

私は
その世界の中から
はじき出されてしまった

自分の信念に従い
生きればいいだけのこと

それに気づいても
臆病になってしまった私には
戻っていく勇気がない


ほんの少しでいい
まだやり直せるなら

ほんの少しの
自信と 賢明さを──

片恋物語

2012-11-21 | 心詩~こころうた・己
冬が来ると
君のことを
思い出すよ

冬にしか
会えなかった
君のことを

君の優しさは
冬の白が
よく似合っていた


でも私は
いつも遠くから
君を見ているだけ

同じ空間に
いるというだけで
幸せだった

時々
話をしたし
並んで座った


それだけで
良かった
それ以上は
必要なかった

素敵な思い出だけ
この胸に刻んで
君と過ごした時間を
汚したくないから

臆病だった
私が敷いた
心の線


今年も
君のいない冬を
君を思い出しながら
過ごすんだろうね

君の笑顔を
思い浮かべると
心があったかくなるよ
それが私の宝物

冬だけの
片恋物語

迷子

2012-11-18 | 心詩~こころうた・己
進む道を見失い
途方に暮れる

方向音痴の私は
人生の行き先にも
迷ってしまうのか

周囲の雑音に惑わされ
誰かの向かう方に流され
右か左か
行くか戻るか
選ぶのはいつも
遠回りの道


道標(みちしるべ)はどこにある
どこを目指して歩いている
誰のために歩く道か
それさえ曖昧になっていく

迷ったならば
出発地点に戻ればいい
だけど私は
どこから来たのか


地図もない道
人生の道
道なき道の
けもの道

自分で線を引こうとしても
俯瞰図は見えないから

歩いてきた道には
目印をつけておこう
後戻りしても
同じ場所で
迷ってしまわぬように


立ち止まった場所から
また前に歩き出そう

けもの道ならば
どこを進むも自分次第
迷って戻って
自分の地図を完成させていく

道標は
その心にしっかり灯して

僕の罪と僕の罰【歌詞っぽく】

2012-11-16 | 詩詠~うたうたい
こんな愚かな僕のために
君は戦ってくれたね
この心臓を狙う
矢の盾となって

ひとりにしないでと
叫んだ君の声が
飛び交う矢の雨に
かき消されていった

それなのに僕の頭は
大事なことさえ
覚えておけないんだ

命の恩人の顏さえ
モザイクがかかったように
思い出せなくなっていくよ


こんな無様な僕のために
君は泣いてくれたね
怖くなんかないよと
呪文を唱えながら

ひとりじゃないからと
頬を撫でてくれた
君の手の感触
君の涙ぐむ声

それなのに僕の心は
温もりさえも
忘れてしまうんだ

僕のかわりに傷ついた
君の心の痛みさえ
振り返れなくなってしまうよ


こんな愚かな僕に
神様はこれ以上もない
罰を与えたんだ

こんな無様な僕が
醜態を晒し生きている
それこそが僕の罰

君がいたこと
君といたこと
君を失ったこと
すべて僕の中から消えて……

タダヨフイシキ タダヨフニクタイ

2012-11-16 | 心詩~こころうた・己
漂う意識
漂う肉体
私は
いったいどこにいる


体も心も
自分のものではないように
実感もなく
ふわふわと彷徨う

このまま
自分という存在は
消えてしまうのではないか

このまま
消えてなくなることを
望まれているのではないか


形容しがたい
虚しさと
苛立ちと

それさえも
遠くにある
誰かのもののようで


ここで息をして
生きている自分は
本当は
どこにも存在など
してはいなくて

すべては幻
すべては
実体のない私が見ている
夢物語

この世界も
しがらみも
記憶のすべてが
錯覚であったなら

なんだそうかと
苦笑し
なにもかもを
リセットしてしまえるのに


なぜ
こんなに苦しい
どうすれば逃れられる

自分の体を
自分の心を
取り戻したい

ひとが生きるということは

2012-11-15 | 心詩~こころうた・世
ひとは
俗世にまみれて
生きるもの?

なにかを手に入れるため
なにかを守るため

欲望のおもむくまま
理性に制御されながら

誰かのものを奪い
ゼロから築き上げ

のし上がり
地べたを這い


ひとは
生きるために
生きている?

生命を維持するために食べ
ただひたすらに
命を守り

種の存続のために
子孫を残し
テリトリーを守り

ひともまた
そのように生きる
生物なのだろう


だが ひとは
生存のためだけに生存しない
稀有な存在

他種を排除し
ひとのためだけに
特化された世界を構築し

その狭い世界の
了見と主義主張の間で
競い合い傷つけ合い

生き残れるものだけが
ふるいに掛けられ
「勝者」と名乗り

ひとの世界の
価値観を歪曲させる


ひとは
そんな歪んだ世界で
与えられた命を営み
人生を終えてゆく

すべてを清算し
生きたとおりの
結果を残して


ひとは
なんのために
生きるのか──