奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

永訣の詩(うた)

2013-05-31 | 心詩~こころうた・己
永久(とわ)に消えゆく
命 儚き命よ

手に触れた温もりも
君のささやく唇も
私を映したその瞳も

もう どこにも存在しない
天命という非情に
すべてを奪い去られ

君と過ごした記憶は
いまも鮮明に焼きついて
それを永遠と呼ぶならば
悲しみも少しは和らぐだろうか


永久(とわ)に消えゆく
命 儚き命よ

せめて
君のために微笑もう

遠い日に

2013-05-23 | 心詩~こころうた・己
おかえり 遠い日の記憶
こんなに長い時を経て
また会えるなんてね

おかえり 遠い日の私
たくさんの過ぎた日々を
一瞬で飛び越えてしまったよ


暗い記憶しか
ないと思っていた
過去の思い出など
必要ないと思っていた

なのに なぜだろう

よみがえるのは
忘れ果ててしまっていた
懐かしくてしかたのない
もう一度そこに戻りたい

あの頃の私を包んでくれていた
優しく甘い感触と
泣きたくなるような ときめき


なぜ またそこへ舞い戻ったのだろう
私はなにに 気づくべきなのだろう

こんな未来など
想像もしなかった あの頃の自分に
私はいったい なにを打ち明ければいいのだろう

ひとつひとつの物事に
必ず 意味があるとするのなら──

やさしいのは【歌詞っぽく】

2013-05-10 | 詩詠~うたうたい
砂に足をとられて
つんのめった惨めな僕
水平線に沈む夕日が
震える背中を隠してゆく

やさしいのは この海だけ
波が砕けて僕の嘆きをかき消してゆく
握りしめたこぶしから
こぼれ落ちる砂粒
心の鎖をほどいてゆくように

やがて
風に涙がちぎれて
海の色に溶けてゆく

風に涙がちぎれて
海の色に溶けてゆく



穏やかに凪いだ海
月光に煌めく水面
僕の心もいつしか凪いで
海風のそよぎに耳を寄せた

やさしいのは この海だけ
繰り返すさざ波が僕の鼓動と重なる
与えられた命を生きよと
深海の女神が諭す
お前は なにもなくしていないと

やがて
空は静かに明けて
僕の足跡を染めてゆく

空は静かに明けて
僕の行く先を照らしてゆく

救い

2013-05-08 | 心詩~こころうた・己
心の奥底に潜む
もう一人の自分

偽善と欺瞞に満ちる世界を
冷ややかに見下す腹黒い眼

善人であると信じた自分は
これほどに黒々とした
思考を隠し持っていたのか


祈りは届かなかった
ただ 穏やかに流れる時間を
ただ 地道に積み重ねてゆく努力を
ただ 両足で立つための自尊心を

すべてが自分には許されぬことだと
思い知らされたあの日から
私は 善人であることをやめた


なぜ人は
同じ分量の幸と不幸を
与えられないのだろう

だから人は
他人の痛みが分からぬと言うのか
自分の不運ばかり呪ってしまうのか


信じたものさえ見失い
祈ることの虚しさに気づく

邪心に飲み込まれる苦しみより
このまま野垂れ死ぬほうがいい

弱さを欲望の言い訳にするな
汚れたその手で祈ることなどできはしない


人生すべてと引き換えの
無垢なる願いであるならば
儚く消えゆくこの命を
惜しまず逝かせてくれるだろうか

虚しく去りゆくこの世界に
生きた証しを残してくれるだろうか

善人でありたかった私に
なにを与えてくれるだろうか──

やさしい時間

2013-05-07 | 心詩~こころうた・己
やさしい時間

暖かな窓辺の風
静かに暮れゆく黄昏時
ひとりが心地よい瞬間


やさしい時間

遠き日の思い出
繋いでゆく記憶の断片
懐かしい君の声 君の面影


やさしい時間

切り離された日常
誰も知らない隠れ家
忘れ去られた 私という存在

どこまでも ひとり

2013-05-06 | 心詩~こころうた・己
誰にも会わない日々
誰からも必要とされない日々

自分の存在意義はなに?
なぜ 私はここにいる?


傷ついた日々を
取り返すこともできず
この先
どこへ行けるというのか

虐げたものたちに
報いるすべもなく
過去を断ち切ることもできず

このまま
あてどなく彷徨い
どこへ向かおうとしているのか


行く手を阻むのなら
ひとりで構わない
なにも出来ないのなら
道連れは要らないのだから

なにに怯え
なにを失い
この先も生きてゆくのか

人を信じられる人生を
与えられなかった私は──