奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

秋に思ふ

2012-09-30 | 詩詠~うたうたい
中空なる我が心
秋の風に誘われ
のやまにあそぶ
名残の夕焼け雲
月明皓皓と冴ゆ

九月に別れ告げ
月またぎの夜は
もの憂げに過ぐ
終わりなき世の
わが小さき生涯
りんとして生く





* * * * * * * * * * * * * * * * *

実際は、台風の影響で中秋の名月は見れず仕舞いでしたが。
いよいよ十月。
大好きな秋をたっぷりと満喫したいです。

ナイトメア

2012-09-26 | 詩詠~うたうたい
僕の背中にある
この黒い翼は
誰が与えたものか

自分さえ守れぬ
愚かな僕に
いったい何を望んで


僕が差し出す手を
求める人など
ひとりもいない

それは
この黒い翼が
死神のようだから


僕の心が
どれほど純真でも
それは誰にも
気付いてはもらえない

僕の祈りが
どれほど無垢であっても
それは誰にも
届いてはくれない


もしもこの翼が
純白だったなら
差し伸べた指を
掴んでくれるのだろうか

もしも白い翼を
大空に羽ばたかせたなら
この世界すべてに
光をもたらせるのだろうか


叶う筈もない
夢は悪夢に飲み込まれ
現(うつつ)の僕は
黒い翼に身を埋め
世界の片隅に
うずくまっている

自分さえ守れぬ
役立たずの黒い堕天使

野良犬のバラード

2012-09-26 | 詩詠~うたうたい
人の手の温もりを
知らずに生きる
野良と名付けられ
孤独に生きる

どんなに
地べたを這いずろうと
どんなに
存在を疎まれようと

この命は
一人分の重み
この魂は
一人分の人生
与えられ
許されて
ここにいるのだ


温もりなどいらぬ
今日を生き延びる
わずかな餌があれば

「明日こそは」
その執念さえあれば
この肉体は
生き続けられる


成功など知らずとも
口ずさむ歌は知っている

栄光など知らずとも
足元に咲く花は知っている

帰る家などなくとも
満天の星々に抱かれ
眠れる場所は知っている


誰にも邪魔はさせない
野良には
野良の意地がある

窮鼠 己を噛む

2012-09-24 | 心詩~こころうた・己
手遅れになるまで
人は 気付こうとしない
傷付けたものに
反旗を翻され
はじめて
その痛みに気付く

滑稽なほどに
愚かな生き物

私が今
傷を負わせているのは
誰でもない
私自身

私を今
追い詰めているのは
誰でもない
私自身なのだ


心に棲みついた
闇に操られ
眠らぬ夜を過ごし
己が肉体を
怠惰に痛めつけた

遺伝子は法則を乱し
徐々に
内からの崩壊が始まる
全身に記されたメッセージ
肉体からの最後通告


こうなることは
分かっていたのだ
分かっていながら
その警告を無視した

否、
もしや 私は
それを望んでいたのか
一日でも早く
「終わり」が訪れることを
もしや 私は
本当にそうなることを……


メッセージは
私の目を覚まさせた
私が与えた痛みは
この身にそっくり
返ってきた
それは 自らに訴える
捨て身の懇願だったろう

ただ それだけの痛みに
私の心はあっさり折れた
どれだけ臆病で
どれだけ意気地なしかを
思い出させるには充分な


心を操る闇と
肉体を蝕む病
どちらが先に
この命を喰らうのか


もう一度
心から
生きることを欲した時に
すべての澱みは
この身から消え去るだろう

そう念じて
今よりもう少しだけ
丁寧に生きてみようと思う


まだ
手遅れだとは言わないでくれ

ほしのなげき

2012-09-22 | 心詩~こころうた・世
いったい
何に怯えているのか
なにものにも侵されぬと
思うまま欲望のままに
すべてを支配し
このほしに君臨する
お前たちが

なに不自由のない
お前たちに都合の良い
世界へと作り変え
なのに
その世界に満足もせず
争い合い 奪い合い
血の 涙の 絶える日はない


もう そろそろ
気付いてもいいだろう
そんなやりかたでは
幸せにはなれないことを
豊かにはなれないことを

このほしで生きるために
必要なすべてのものは
もともと ぜんぶ揃えてある
なのに
環境にそぐわないものを生み出し
体質に合わないものを吸い込み
他の生命を脅かすものを撒き散らし
私が与えた 恵みすべてを
毒に染めようとするのか


時間は ゆるやかに流れるもの
気の遠くなるような
長く 果てしない 混沌の中で
私は生まれ 成長し 今の姿になった
だが お前たちは
その何億倍もの速さで
私の環境(いのち)を破壊する

なぜ?
お前たちの居場所でもあるのだぞ


遥か 遠い昔
お前たちは私と共に生き
生命を敬い 多くを求めず
このほしに順応しようとしていた
なのに
今は 心も眼(まなこ)も閉ざし
信じてきたものすべてを裏切り
どこへ向かおうとしているのか

お前たちが望む未来には
どんな私の姿が見えているのだ?

*七行詩~恋文五編* 【再録】

2012-09-19 | 詩詠~うたうたい


* 恋文之一 「さよなら」 *


あの日 渡せなかった恋文を

今 こうして読み返しています

知らなかったでしょう

手を繋ぐことさえなかった私が

いつも隣で見ていたことなど

目蓋に残る眩しい記憶ごと

捨て去る決心が ようやくつきました



    



* 恋文之二 「少女のままで」 *


いつかまた会えるでしょうか

目映いあなたの あの笑顔に

出会った頃の初々しさで

もう一度 あの日に帰りたい

ずっと信じて祈っています

月日の流れに色褪せない

ときめく心は 永遠の少女



    



* 恋文之三 「未練」 *


たった一言

抱きしめて欲しいと

ひと思いに叫べたなら

遠くへ行ったあなたの

すべてがいとおしくて

自分には過ぎた恋だったと

にがい涙を そっと飲み込む



    



* 恋文之四 「永遠の片思い」 *


どうしようもないくらい

恋い焦がれたあなたは

二度と会えない人になりました

今も覚えてくれていますか

またいつか 会える日は来ますか

「好き」という言葉は 封印します

形のない あなたへの思いだけ抱いて



    



* 恋文之五 「初恋」 *


私に向けた いたずらな微笑み

スポーツ万能な そばかすの男の子

檸檬のような清々しさと

乱暴だけど 優しい瞳

礼拝堂で並んで祈った修学旅行は

何ものにも代え難い 大切な思い出

今もふと蘇る 汚れなき初恋の日々



    





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以前、こちらに載せた【7行詩】恋文シリーズを、トーナメント用に連作の形式に再録しました。
本来、連作の形で作った作品なので、これで一作となります。



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安穏と恐怖の狭間で

2012-09-19 | 心詩~こころうた・己
目的行動とも
現実逃避ともつかぬ没頭に
身を委ねている

将来への投資と思えど
先を考えることから
無意識に目を逸らし
今という一点だけを見つめ
快楽に酔いしれたいと願う


いつまで続くか
いつまで許されるのか
私の時間は
私の未来は


影のようにつきまとう
死への恐怖は拭い去れず
正の感情にさえ
後ろめたさを抱きながら
もう二度と
心から笑うことはないのだろうと
がんじがらめのこの身を嘆く

分からぬのが人生
見えぬのが人生なれど
いつの日にか確実に訪れる
恐怖の予言が
目覚めれば消える
夢であったならいいと


虚と実と
安穏と恐怖の狭間で
削られてゆく正気
もたらされる狂気

長い道のりなど考慮に入れぬ
今この瞬間を
むさぼるように生きるのみ

いずれ死ぬるが
命あるものの運命(さだめ)ならば
どのような訪れも
受け入れるしかない


海原に浮かぶ
笹舟のごとき
小さきものよ
我が命は
人の一生は

頬を伝うは……

2012-09-19 | 詩詠~うたうたい
悲しみの涙は
もう流れない

なにもかもを奪われた
あの日
信じるものすべてが
色をなくした

この世界の正体に
ようやく気づいた愚かさに
理性は静かに崩壊してゆく


苦しみの涙は
もう流れない

痛みに敏感だった
あの頃
心を消される絶望を
知りもしなかった

闇に飲み込まれ
無へと引きずり込まれ
魂ごと喰い尽くされる


喜びの涙は
もう流れない

片手にも余る
幸せの断片は
水泡(みなわ)のように
儚く掻き消えた

優しい記憶は
手に残る温もりは
すべて 白紙に戻る……


この頬を伝うは
壊れ果てた
心の破片(かけら)
乾いた血の塊と
人でありたいと叫ぶ
命の咆哮

この頬を伝うは
人であった私の
虚無の涙

辿り着くべき場所まで

2012-09-16 | 詩詠~うたうたい
どこへ向かうはずだったのか
いずこを目指すはずだったのか
あてのない旅などではない
辿り着くべき場所があるのだ

迷い 彷徨い
立ち止まり
また 別の道を求め
何度 同じ景色に惑い
頭を抱え 膝を抱え
時に嘆き 時に叫び
答えを探し もがき続け


闇夜など怖くはない
私が恐れるものは
明日さえ見えぬ
この運命(さだめ)
無様な姿を
晒し出させる陽の光

どうか これ以上
私を惨めにしないでくれ
どうか 苦しまずに
行き場所へと連れてくれ
もう 一歩も進めない
骨の剥き出す この両足では


倒れ伏す目蓋に
微かに見ゆる蜃気楼
その果てにあるは
目指すべき地か
幻想のような煌めきが
薄れゆく意識に語りかける

そこで 終わりかと──

こんなところで 終わってたまるか
消えかけた意識が抗う
連れていってくれぬのなら
もう少しだけ
ここで眠らせてくれ
次に目覚めたときには
大地に骨を突き立て
また 歩きはじめるのだから


私には
辿り着くべき場所があるのだから

孤独の流離人(さすらいびと)

2012-09-15 | 詩詠~うたうたい
愛とか
絆とか
くそくらえ

温もりとか
触れ合いとか
そんなものは
ただのまやかし

頬に触れる手を
払いのけ
抱きしめる腕を
振りほどく

そんなものは
信じない
そんなものは
本物ではない

すべてを否定し
すべてを遠ざけ
お前はどこに
居場所を求める


なにがお前の
愛なのか
なにがお前の
温もりなのか

お前の嘆きを
お前は知らず
撒き散らす敵意に
その身を切り裂かれ


誰もお前に
触れられぬ
触れればお前を
壊してしまう

その繊細な魂を
柔らかな泉に
そっと浮かべ
静かに 安らかに
眠らせてやりたい

だが お前は
それを望まない
安らぎに怯え
愛に嫌悪する

お前は ただ
無を望み
その肉体ごと
消し去ろうとする

血の涙を流し
憎悪を滾らせ
生きてきたお前を
救うすべなど
ないというのか



なにも言わず
お前は去った

誰の心も
入り込ませず
己が悲しみを
悟らせもせず

月光に縁取られ
佇むお前の背中を
私は
忘れることができない