奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

安住の地を求めて

2012-12-31 | 心詩~こころうた・己
心から安心して
身を委ねられる場所など
どこにもないのだろうか

波乱含みの中
綱渡りのように生きてゆくのが
人の世というものなのか


ある日突然
霞のように消える
当たり前のように
そこにあった居場所

昨日までの仲間は
明日には赤の他人
その地を去れば
二度と会うこともない


集団は新参者を
異物のように扱う
同じ人間であることに
気づきもせぬかの如く

次の居場所は
容易には見つからず
ここかと思えど
身ぐるみ剥がされ
夢から醒める


孤独に生きることが
宿命であるかのよう
群れからはぐれ
心はいつも ひとりきり


飼い主を求める
捨て犬のように
居場所をなくし
惨めに彷徨う

悔やんでも 諦めても
恨んでも 背を向けても
ひとりでは生きてゆけぬと
それでも誰かを信じたいと

傷だらけの野良犬は
記憶の隅に残る温もりに
もう一度包まれたいと願う


未来は黒雲に覆われて
淡い記憶の断片(かけら)だけが
安らかな夢を見せる

この身を委ねられる場所は
どこにあるのだろう──

臆病者は前に進む

2012-12-31 | 心詩~こころうた・己
臆病者は旅に出る
このままじゃいけないと
こんな自分じゃいけないと

臆病者のひとり旅
自分の力で生きるため
自分の足で乗り越えるため


臆病者はたじろぐけれど
臆病者は見ない振りするけれど
そんな自分を変えたくて
臆病者は前に進む
臆病者は扉を叩く

ひとりでは
変えられないと
知っているから

ひとりでは
寂しすぎると
知っているから


踏み出すべき一歩は
いつでも目の前にある

どこからでも
どちらへでも
信じるほうに進めばいい

たとえ苦難が待ち受けようと
それは間違った道ではなく
自分が越えるべく用意された
試練なのだと考えよう


その旅の途中で
答えを拾い集め
臆病者は強くなる
臆病者は愛を知る

臆病者は
臆病者を返上する

まっしろなまま

2012-12-25 | 心詩~こころうた・己
まっしろだからけがされて
まっとうだからゆがめられ
まっすぐだからへしおられ

それでも
まっしろなまま
まっとうなまま
まっすぐなまま
いきていけるくらい

まっしろでありたい
まっとうでありたい
まっすぐでありたい

ひととして
にんげんとして

聖なる夜に

2012-12-24 | 詩詠~うたうたい
をそっと閉じて

セットの呪文唱える

ばらの道のまだ途中

リスマスツリーの煌めきは

フレインする記憶の中

ぎ去った悲しみたちを

法の旋律(しらべ)に乗せてゆくの

敵な夜に Merry Christmas




人間であらねばと

2012-12-20 | 心詩~こころうた・己
細分化された感情に支配され
進む道を
依存する環境を
生きる速度で選択する運命を
余儀なくされた 人間

目に見えぬ攻撃を避け
望む未来を手に入れるには
みずからを偽る覚悟さえ
必要なときがあるのだろう

汚れぬままに
生き延びられる世界ではない
だが汚れてしまえば
破滅に向かうだけの非情な世界だ


人と人とが理解しあうのは
容易なことではない

善は悪に取り込まれ
清は濁に飲み込まれ
人は怠惰に流されて
己が良心を曇らせる

誰かが誰かを支配する
その関係に慣らされて
己が意思さえ見失う

人を恐れ 警戒し
同じ価値観を持つものしか
信じられなくなってゆく


それでも
純粋でありたいと願う
正義の心を貫きたいと抗う

傷つけたなら
後悔に胸を痛め
傷ついたなら
誰も傷つけまいと誓う

互いの弱さを補い
才能を惜しみなく役立て
この世界が良くなるように
そのために自分が存在すると
誇りを持って生きられる

それこそが
人間であるという意義


心の善悪
心の弱さ
他人には見せぬ
丸裸の自分との葛藤

露わにできぬ感情を
肉体の檻に閉じ込めて
内部崩壊寸前の魂は
声なき悲鳴をあげている

人間であらねばと
思うばかりに……

抗う

2012-12-20 | 心詩~こころうた・己
ひとつの石つぶてが
いく粒にも砕け散るように

ひとつの失望が
体中に弾け飛び
何百ものダメージを
心に与える

打たれ強くなど
なれなかった
かわす術さえ
備わらなかった

馬鹿正直なほど
真正面から受け止め
醜態など晒せぬと
ひとりですべて抱え込む

もう とっくに
力尽きているのに


なんのための人生か──

あの頃と同じ思考に
また支配されている

ただ生きているだけならば
なんの価値もない

なにも生み出さず
ただ毎日を
繰り返すだけの人生ならば

どこにも吐き出せない感情を
もがきながら
足掻きながら
胸の底に封印する

こんなくだらない運命に
いつまで纏わりつかれる
宿命(さだめ)なのか

希望など
どこにもないのか


こんな感情に襲われるたび
もう終わってしまいたいと
惨めに嘆くだけの
自分に苦しめられている

流星群

2012-12-14 | 心詩~こころうた・己
きんと凍てつく
深夜のベランダに立ち
静寂の中
ひたすら目を凝らすは
ふたご座流星群

冷えてゆく屋根の音を聞きながら
またたく星座のあいだを
一瞬通り過ぎた光の尾に
思わず声を漏らす

一本 また一本
気まぐれに現れる流星の尾を
無心で追いかける

そんな人間の
眇たる行為など知らず
またひとつ
またひとつ
星は流れ 消えてゆく


流星群と名づけられた彼らは
決して群れなど成さず
それぞれが意思を持つもののように
己が目指す方角へと
まっすぐに旅立ってゆく

群れの中に生きる人間も
それぞれが自分の意思を持ち
己が行き先を求め
己が力で光り輝くのだ


誰も
群れの奴隷ではない
ひとりひとりがそこに集まり
群れとなって世界を作る

そしてやがては群れを離れ
新しい居場所を見つけ
その群れの住人となる


たとえどれだけ傷つき
深傷を負ったとしても
己が光まで
消されてしまってはいけない

それぞれが放つ
人生の輝き
それは誰にも
侵害できないもの

それは
夜空に煌めく星々とおなじ
ひとりひとりに与えられた
命の灯(ひかり)


広大な宇宙へと
群れから旅立つ流星を見上げ
密かな願いを託す

──己が人生を
    取り戻せるようにと……








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昨日の深夜(日付は今日)、ふたご座流星群を見ました。
流星群を「見よう」とちゃんと観察したのは初めてだったので、ちょっと興奮。
0:30頃から約1時間空を見上げて、29個まで流星を数えることができました。
一瞬だしどこに現れるかも分からないしで、「あ!」と思っている間に消えてしまうのだけど。
でも、静かな空間で夜空を見上げているという行為が、とても心を清澄にしてくれました。
素敵な天体ショーを見ることができて、寒いのを我慢した甲斐がありました。
                                              
それにしても、今冬はやはり寒すぎる……。

歩んできた道 歩んでゆく道

2012-12-13 | 心詩~こころうた・世
長い時間の末に
高みを目指した果てに

歩んできた道は
いつから歪んでしまったのか

手に余るほどの理想を求め
人は大事なものを引きかえにした


失えば
二度と元には戻らないもの

間違えば
二度と元には戻せないもの

なぜ見失うのか
誰にでも分かることを

その腹を満たすために
なにを犠牲にしてきたのだ


安全は
安心は
平和は
幸福は

必死に守ろうとしなければ
そこに存在できない脆弱なもの


変えてはいけないこと
変わらなければいけないこと

本当に大切なのは
人が心を失わないでいられること

歩んでゆく道は
もっとゆっくりでもいいだろう

【300字小説】黄金色の風景の中で【番外編】

2012-12-08 | 創作~ものがたり
  『 黄金色の風景の中で 』


初めて訪れた町で、僕は道に迷っていた。
来た道を戻ることもできず闇雲に歩き続け、いつしか川沿いの砂利道で、ふと我に返り立ち止まった。
夕日を反射して黄金色に輝く川面に、僕は暫く目を奪われていた。

人の気配を感じ、砂利道に視線を戻した。
緑色の野球帽を被った少年が、僕を見つめて立っていた。

『迷ったのは道じゃないだろ』

──え……?

その声、その顔、その野球帽──。
あれは、僕だ。

そう、僕は今日、仕事をさぼってこの町に来た。誰も僕を知らない場所へ逃げてきたのだ。
どうしたいかなんて、とっくに分かっていたのに。


「もう、自分に嘘はつかないよ」

僕が僕にする約束。
少年の僕はにっこりと微笑み、黄金色の光の中に消えていった。




    了






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今回は番外編の小説です。
以前、某所に投稿してボツになったのを、大幅に手直ししたものです。(ボツばっかりだわ;_;)
今読み直してみると、なんとありふれた内容かとボツになったのも納得ですが、
個人的には結構気に入っている作品なので、ここに載せることにしました。
この「黄金色に輝く川面」は、実際に初めて歩いた場所で目にして感動した光景です。
NETに小説を上げるのは初めてなので、行間の取り方がちょっと自信ないですが。

今までに書いた小説は、長編1編と300字小説が数編。
小説は本当に難しい。いくら推敲しても、納得することがない。
小説家を夢見た時期もあれど、自分にはゼロからすべてを創作する小説は荷が重いようで、
それよりは自分の心をそのまま表現する詩のほうが、肌に合っているのかなと。
この「詩詠~うたうたい」カテゴリには、創作もの的な詩も書いていますが。
まあ早い話が、今は自分のことで精一杯なのかと……。(早く鬱治せと……)

四季の詩(うた)

2012-12-05 | 詩詠~うたうたい
優しく過ぎた春
満開の桜を見上げ
明日に希望を
見つけた あの日

激しく過ぎた夏
猛り狂う地球の熱に
抗う人間(ひと)の
脆きを知った あの日

急ぎ足で過ぎた秋
幾重に色づく紅葉に
我もひらひら
一葉と舞った あの日

気がつけば もう冬
心まで閉ざさぬように
寄り添いあい
温めあおう 春が来るまで