奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

青葉繁れる桜の木の下で

2011-05-28 | 心詩~こころうた・己
雨に濡れそぼつ 桜木の鮮やかな青葉に
ふと顔を上げ 私は心を奪われる

葉脈を流れる生命の雫
無理もせず 怠りもせず
遺伝子の導きに従い
脈々とその生を営んでいる

自然の息吹を感じながら
私は素直さを取り戻す

なぜ 人間は
汚れなきものを妬み
弱きものを支配したがるのか

なぜ この木々のように
己の人生を ただ誠実に
生きることができないのか

なぜ 私は
人間に生まれてしまったのか

この魂の容れ物に
適合することもできないでいるのに

不眠症

2011-05-27 | 心詩~こころうた・己
瞼を閉じ しきりと寝返りを打ちながら
眠れぬ脳が 悶々と思いを巡らせる

今 自分が本当に信じているものは
何なんだろうと

いったい 何を目指せば
私は自分の役目を果せるのだろう

失敗と挫折の繰り返しで
手段も行く先も見失い
途方に暮れている

このままではだめだ
気持ちばかりが空回りする

もしや
私の存在は この世界から
とうに抹消されてしまっているのではないのか?

誰の目にも映らず
収まるべき場所も どこにもない

夜の闇は どうしようもなく
心を孤独に向かわせる

今日もまた
不毛な妄想に身悶えしながら
長い長い夜を過ごす

土砂降りの後には

2011-05-22 | 心詩~こころうた・己
土砂降りの雨に打たれながら
私は空を見上げていた

──お前も 泣きたい時があるのか?

灰色の町に降る 涙雨
私は雨に紛れて
ただひとり 泣きとおした


やがて雨は上がり
雲の切れ間から陽の光が射した

先に泣き止んだ空に
私の涙も ふと止まった

──散々泣いて 気が済んだのか?

そう訊ねた瞬間
ずぶ濡れになった自分の姿が
やけに滑稽に思えた

何をそんなに
落ち込んでいたのだろう

心を覆っていたものをすべて洗い流して
どこか吹っ切れたような心持ちになっていた

やがて 遠くの空に幾筋もの光が降り注ぎ
私はつかの間 天使たちの姿を見ていた


泣きたい時に思い切り泣けたなら
その後にはきっと 笑顔でまた始められる

流れる雲の向こうに覗く青空を見上げ
私は 肺いっぱいに深呼吸をした

──お天道様は ちゃんと見ていてくれる

不思議なほど安らかな心で
私はまた そこから一歩を踏み出した

夏がくる

2011-05-21 | 心詩~こころうた・己
半袖のシャツに腕をとおす
やわらかな風が 二の腕を撫でて過ぎる

もう こんな季節……
あれから 三度目の夏がやってくる

この部屋で
鬱屈した時を過ごした

新たな目標は 日増しに形を失い
我が思考は 行き場を求めて彷徨う

ああ このまとわりつく熱が
忌まわしい日々を思い出させる

気力も体力も とうに底をついた
生き延びる術は どうすれば見つかる

どうか 恵みの風よ…………

もう一度……

2011-05-13 | 心詩~こころうた・己
なぜ あんなに頑張れたんだろう
なぜ あんなに信じられたんだろう

何の保障もない未来に
夢を託せたあの頃

毎日がまぶしく輝いて
自信に満ちていた自分

夢が人の心を支え
信じる心が人を前へと向かわせる

あの煌めきは 私の誇り
もう一度 取り戻せるのなら

諦めたくなんかない
このまま
終わってしまいたくなんかない

たとえ 何も残されていなくとも
未練たらしくとも 愚かしくとも

たった一度の
自分自身の人生なのだから

因果な性分

2011-05-08 | 心詩~こころうた・己
過ぎたことに囚われていたら
いつまでもそこから先に進めない

分かっていても
この頭は この心は……

簡単に生き方は変えられない
許すことも 忘れることも
あまりに悔しすぎる

私を縛り付けているのは
私自身なのかもしれない

もっと単純に生きられたなら
もっと器用に躱(かわ)せたなら

矛盾

2011-05-06 | 心詩~こころうた・世
エコバッグを持参して
過剰包装された商品を購入する矛盾

自然の美しさを求めながら
足元のごみ屑には無頓着な矛盾

健康被害を謳いながら
煙草を作ることも 吸うこともやめない矛盾

世の中を便利にするための技術の進歩が
誰しもが適応できない複雑な世の中へと作り変えている矛盾

生活を豊かにするためのお金というものが
貧富の差を生み 人の手を汚させる矛盾

家族を守る頑丈な家が
大地が揺れた瞬間 凶器と変わる矛盾

動物を保護するという思い上がりと
家畜を処分するという傲慢の矛盾

飽食の国の乙女たちが痩せる努力をしている陰で
飢餓の国の子供たちは痩せ衰えて命を落としている矛盾

正義を行う手段が
いつの世も戦争であり続ける矛盾


いったい、何がしたいんだろう
いったい、何を信じているんだろう

人間というものは

人生という名の旅路

2011-05-06 | 心詩~こころうた・己
行き先も告げられぬ
人生という名の長い旅路
目の前に伸びるレールを行くのは
誰の意思か

与えられているのは
戻ることのできない片道切符

途中下車するのは自由
乗り遅れた時は
そこで一休みするのもいい
遠くに目を凝らしてみれば
違った景色に気付くはず

長い旅路の一期一会は
笑顔と涙を道連れに
やがて闇夜の道標(みちしるべ)となる

終着駅まで あとどのくらい
最後に佇むその場所が
穏やかな景色でありますように

心境

2011-05-05 | 心詩~こころうた・己
おめおめと
生き長らえている我が身

こんな自分がなぜ生かされている?
否応なしに後ろめたさが苛む

命の移植ができるなら
本当に生きたいと願う人に
惜しみなく提供するものを

犬死にだけは
絶対に嫌だ

どうせなら
誇らしく逝きたいではないか