最初はかわいいからたいていのことは我慢できたが、だんだん嫌な面も見えてきた。とくに女子に特有のことだが異常に点数にこだわる。
「そんな目先の点数より本質を分かれば応用が利くでしょ」と言っても頑として聞き入れない。さらに僕はデートを断られたのでほとんどやる気をなくしていた。
僕がやさしく教えていたころは自分からどっか連れてってという雰囲気だったが、あまりもの頭の悪さに僕がかんしゃくをまわしてからは、険悪な雰囲気の中で黙々と問題を解くだけだ。
この気まずさの中での勉強も3カ月ともなると、彼女は偏微分の練習問題を解くようになった。しかし駄目駄目。惰性で解いているだけで意味も分からず掛け算の九九を覚えて計算をするようなバカと同一だ。
申し訳ないが彼女には重積は無理だ。ダボハゼみたいに計算問題に食いついてどんどん解いてスピードアップして微分が分かったつもりでいる。ばか。
日本の教育のひどく劣った点だ。意味を考えさせずけいさんばかり速くさせようとする。そこで子供は計算機械になる。子供が全員野菜屋になるならそれもよかろう。野菜屋のおばさんは気絶するほど計算が早い。
ところが通常の人間は小学校でするような4ケタと4ケタの掛け算をすることはない。だからそこにスピードを求めて満足する小学校の教員の指導は間違っている。
数学オリンピックの中学生用の問題を見つけた。これは一般の中学生がするように二次方程式をノートいっぱいに計算しまくっても解けるような問題ではない。むしろ計算は遅いと言われても意味を考える子供には楽しい問題であるはずだ。
√(n二乗+n+34)-nが整数となる自然数nを求めよ。
これはルートがあるときの基本として両辺を2乗するのだが、
与式=n+k(kは自然数)とおくのがポイントだ。与式=kとおきたいがそれでは行き詰ることをいち早く読むべきだ。
(√(n二乗+n+34))二乗=(n+k)二乗
ルートと二乗が外れて
n二乗+n+34=n二乗+2nk+k二乗 nについての式にして n=34-k二乗/2k-1 与件より分母は常に正、分子を正にするkは、∴k=1,2,3,4,5 nについての式に代入して∴n=1,5,10,33 (18/7はnが自然数だという条件に反する)
この問題を解くにあたり多くの並列計算が必要だ。34とはいかなる性質を持っているか。nの二乗は面倒だから消すにはどうしたらいいか。それは可能か。
よくぞ中学生がこの問題を解いたと思う。
同じ30分を要しても連立方程式を狂ったように解くのと異なって頭を使っている。
いい加減くもんだ100ますだと言ってスピードにこだわった指導はやめないか。そうやって本当に考えない子供が量産されるから日本がバカになっていく。
親は自分が連立方程式が解けなかったものだから、塾からマルをいっぱいもらって帰ってくる子供の姿に満足している。
これをバカの再生産という。