最近のショックについては詳しい方も多いと思う。僕の出る幕ではない。かといって昔のショックのお粗末さを話してもしょうがない。
コニ―だカヤバだと、とっ換えひっ換え峠で競争する人たちはいずれ事故の加害者になるから僕は近寄らない。そんなお粗末たちのためではなく原理原則をおさえた科学的思考ができる人に話したいことがある。専門家からすると何を基本的なことをエラそうにと思われるだろう。ま、復習の意味で聞いてください。
20年ぐらい昔のバイクの話から。多くのバイクは構造上ブレーキをかけると前輪が沈み込む。当時多くのライダーはとてもそれを嫌がった。これを解消しようとメーカーは懸命に「沈み込み防止装置」開発に取り組んだ。最初はレーサーに取り付けられた。するとライダー達は狂ったようにその装置をほしがった。アンチノーズダイブ装置。
熱狂から覚めて、そんなものなくても十分走ることに気がつく。所詮、下手を上手にする装置などはない。現に僕のゼファーにはそんなものついてない。だが、170キロ/時までなら何の不安もない。
ごく一部の訓練をうけたレーサーならともかく一般人にはこのアンチノーズダイブ機構というものは運転しずらいだけのものだった。
話はここからだ。今見てもこの装置には相当のコストがかかっている。青二才のタコどもが不必要な機構をほしがるものだから変な機械が発明された。ただそれにはバカには分からないスズキの努力の結晶が詰まっているモノだった。
走行中に自動的にショックのイニシアルを変える。
僕だったらこんなモノつくれと言われたら断る。できるはずないじゃないか。レーサーならコストの制約がないから可能だろうけど。
走行中の加速度を機械的に感知しショックの圧力を増す。パスカルの原理だ。ゴキブリを潰したICなんかじゃない。全てがメカニカルに動いた。そして今、ほとんどのバイクから姿を消した。とても残念だ。外部からの何の指令も受けることなく自動的にノーズダイブを制御した。
今の基準でものを言ってはいけない。未完成でハンドルはゴツゴツ跳ねた。だから何だ。最初に作る努力は後から改良する努力の百倍も千倍も必要なのだ。
今それが電気的にできないかと考えられ、イニシアルを変えつつ走行するショックは復活前夜だ。
流体にはニュートン流体と非ニュートン流体がある。ニュートン流体とは水とか油だ。粘性は所与のものでありほとんど不変である。ショックにはニュートン流体を詰めてきた。ショックの中にある小さなピストンが上下するとき、そのピストンの穴を通って流体が上下した。流体が二個の穴を通る時、流体固有の粘性によって制振され車体は安定したのだ。
今これに非ニュートン流体を詰めようという試みがある。いわば、マヨネーズ入りのショックだ。非ニュートン流体はせん断変形速度とせん断応力が比例しない。つまり、つるつるとドロドロが深さによって異なる。さらにその異なり具合が磁力線によって変化する物質が開発された。
原理的には完成している。商品化がどうなっているかは興味ないが、ショックの中のピストンにコイルを巻いておけばCPUからの指令により自由にショックの硬さを変更できるということだ。
これはショックの革命だ。