けいた と おちぇの親方日記

わんこと暮らす、のんびり日記

小説「なでし子物語」(伊吹有喜)

2015-11-29 12:00:00 | 書籍(小説)
伊吹有喜さんの小説「なでし子物語」を読んだ。



伊吹さんの作品は、「風待ちのひと」以来、2作目である。
ドラマでは「四十九日のレシピ」(NHK・11年2月)を観た。

これは、文庫本の帯である。



涙ぐむまでいかないまでも、伊吹さんらしい、
優しい気持ちになれる、元気に生きていこうと思わせる作品であった。

作品の舞台は、静岡県の天竜川流域の山間の里、峰生。
(架空の場所らしい)
かつては地元の大富豪で名士であった、遠藤家の常夏荘での話。

父を亡くし母に捨てられ、祖父に引き取られたものの、
学校ではいじめに遭っている、使用人の子、耀子。

夫を若くして亡くした後、舅や息子と心が添わず、
過去の思い出の中にだけ生きている照子。

そして、照子の舅が愛人に生ませた男の子、立海。
彼もまた、生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しんでいる。

この3人の出会いが、
それぞれの人生を少しずつ動かしはじめるというもの。

また、青井という若い女性の家庭教師が出てくる。
とても厳しく、融通が利かない、少し嫌なタイプの先生。
しかし、次第に先生の良さが分かってくる。

「自立とは、顔をあげて生きること。
 自立とは、美しく生きること、新しい自分を作ること。」

また、青井先生が耀子に最後の授業として話す。

「ぐるぐる考えても答えはでないの。
 どうして、どうしてって思いながら、ずぶずぶと沈んでいくばかり。
 今の状態を『どうして』って責めても、何も始まらないのよ。
 だって、もう終わってしまったことだから。
 わかっているけど抜けられない。
 そんなときには、そこから抜け出す魔法があるの。」

「そう、今を変える魔法の言葉。これが今年最後の私の授業」

「どうして、って思いそうになったら、どうしたらって言い換えるの」

「『どうして』グズなの? この質問に答えは出ない。
 だけど『どうしたら』グズではなくなるの?
 この質問には考えれば答えが出る。」

「誰にも負けないもの、ずうっとやっていても苦にならないものを
 見つけなさい。」

「今、そういうものがないなら、それが見つかるまで、
 こつこつ勉強をするのは大事なこと。
 勉強というのは、自分の武器を見つけるための手段なの。」

このように言ってくれる先生は少ないと思う。
勉強する理由が分からないうちは、いくらやっても身に付かないと思う。
自分がやろうと思って、初めて身に付くものだと思う。

それを気付かせてあげるのが、先生の大切な仕事だと思う。
大人向けの本であるが、子供が読んでもためになる本だと思った。



常夏、それは"なでしこ(撫子)"の古い呼ばれ方だそうだ。
コメント
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