馬鹿も一心!

表題を変えました。
人生要領良く生きられず、騙されても騙されも
懸命に働いています。

 死にたくなった。黄昏ゆく人生の山道に向かう。②

2023-05-04 09:28:35 | 日記
黄昏ゆく人生の山道に向かう。①

続きです。
峠の下り山道は左にカーブ、樹林の緑に囲まれた
食事処、下に見えた。


車も通れる砂利道を下る。
朽ちかけたベンチで軍手を外し
杖代わりの枯れ枝をベンチに立て掛けた。


駐車場から来たらしい老夫婦が
すれ違いに私を呼び止めた。
「杖を忘れてますよ」
ここからは必要無しので、登る人のため置きました。
「それは、ご親切なことですね」
木里館の入口に入る、
階段に腰掛けてスマホで
「今着いた」
待つがなかなか車は来ない。
再度連絡するとその下の冨士見の湯と間違えていた。

白の軽自動車がゆっくりと上がって来た。






久しぶりの再会。
丹沢の麓 秦野盆地に棲む?高校時代の友人。
館内ではなく野外飲食をする。
僕は生ビール、友人 「奴と呼ぼう」。
ノンアルコールビールだ。
ジンギスカン料理を頼む。
もやしを鉄板にまんべんなく拡げ
羊肉が乗せる。
羊肉の煙が空に上がる。
ついでに、臭みをも大空に消える。

ジンギスカン料理  




樹林の葉陰で富士は見えず。
木里館の名は
王維の詩からとったのであろうか?


竹里館 王維
独り坐す幽篁(ゆうこう)の裏(うち)
琴を弾じて復(また)長嘯(ちょうしょう)す
深林人知らず
明月来たりて相照らす


現代語訳


一人ひっそりとした竹林の中に座り、
琴を弾いたり声をのばして歌ったりする。


深い林の中なので知る人はいない。
明月の光が降り注ぎ私を照らす。


ビール、酒 しらささつづみ が喉 胃袋 大腸を洗浄して
脳がぐるぐる回りだす。

奴は77歳になっていた。
僕も貧しかったが
奴も貧しかった。
長男で下の弟が二人、末は妹。
奴の父親は農家の分家出身 私鉄の保線の仕事。
高校時代、奴の親父の関係で
関東の私鉄無料家族定期証明書があり
切符無しで私鉄沿線を回った。
父親は50半ばで死去。
下の兄弟姉妹を進学させるため
高校卒業後地方公務員となり
都心の大学二部に入った。
片道2時間余を掛けて卒業。
中年になり公務員を退職
自営業の赤帽の仕事をする。
経営は上手くいかず
妹の旦那が経営する建築業に転職。
しかし堅実な男で戸建てを買い
息子二人にも、戸建てを買ってあげた。
私のような破滅型生き方はせず
地味に生き丹沢山麓で一生を終えると言う。
午後3時 食事処は昼の部は閉じた。
僕達は山道を上がりミカンの斜面の腰をおろした。




緑なす山々と相模湾、霞む江の島
高校時代の青春を過ごしたパノラマを回想するのだった。


高校時代
飲兵衛の教師と仲間で丹沢渓谷に行った。
鳥の囀りの下、渓流音が岩をなびかせ下る。
弱ってしまった精神を入り込み癒すのだ。
帰りの山道で飲兵衛先生は僕を呼び止めた。
「おい!あいつのリュックにウイスキーが入っているから持って来い」
飲兵衛教師は酔いでフラフラ抱きかかえて下った。
夏休み、単位が取れず夜 補講があった。
飲兵衛教師は僕を途中、呼び出し
「待ってろ」と言った。
藤沢の飲み屋街の居酒屋に入った。
そこには、教師が数人酒を呑んでいた。
実は、夜の補導と称して夜回り先生であるはずが
酔っ払い先生に変わっていた。


僕たちは燦々と降り注ぐ陽光の眼下の街並を見詰めた。
奴は突然呟いた。



「最近 死にたくなる」
奥さんとは、別居生活。
けして仲が悪い訳ではなく
実母と3人暮らししていたが
嫁姑の折り合いが悪く
奥さんは別にアパートを借りて
掃除洗濯、料理する通い妻になった。
実母が98歳でなくなったが、以後も
口喧嘩を生じさせないように別居生活を継続中。
奴の幼馴染も死去、転居で去った。
孫4人がいて、今日は子供の日であるので
お小遣いをあげに回った。
息子達の嫁さんとも折り合いが悪い。
日がな一日、誰とも会わず、電話会話もない。
「何にもすることない」
僕は黙っていた。
強い陽射しと酔いで眼下の街並みが揺れていた。
車に乗り込む。
直ぐに
寝入った。
「おい!着いたぞ」
秦野駅だ。
駅階段をヨロヨロ上がる。
振り返ると、奴は車のドアを開け
僕を見て、手を挙げた。



続く