to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

サクラサク

2014-04-09 23:14:08 | the cinema (サ行)

ごめんなさいと言いたかった。
ありがとうと言いたかった。

製作年度 2014年
上映時間 107分
原作 さだまさし 『サクラサク』(幻冬舎刊『解夏』収録)
脚本 小松江里子
監督 田中光敏
出演 緒形直人/南果歩/矢野聖人/美山加恋/津田寛治/嶋田久作/佐々木すみ江/大杉漣/藤竜也

「火天の城」「利休にたずねよ」の田中光敏監督が映画化した家族ドラマ
大手家電メーカーに勤める大崎俊介は仕事こそ順調だったが、家庭では妻との関係は冷え切り、2人の子どもたちともギクシャクしてしまっていた。そんな時、父の俊太郎が老人性痴呆症となってしまう。家族は俊太郎に手をさしのべる様子を見せず、そのことに失望してしまう俊介だったが…。

少子化、高齢化社会まっしぐらの日本の現状において、
どうしても避けて通れないテーマであると思うのだけど、
思っていたほどには重くなく、しかし、この後いつか私たちが当事者になった場合に
救いとなるヒントは確かにある。年代によって感想は分かれるかもだけど、
とても優しくていい作品だと感じました....。

老いるということ。
それは本人にとっては、何処かに跳んでいってしまい、自分が何者なのかも忘れてしまうという恐怖と、
そういう記憶の喪失がなくても、大切な者たちを縛り、果ては疲弊させてしまうという恐怖。
藤竜也さんの演技が素晴らしい・・・胸に迫ります。

迫りくる老いの酷さ。。。ここでは父親の俊太郎の、
一番幸せで、忘れ難い大切な想い出――
それすらも翳んでいくことの言い知れぬ恐怖感であり、
息子の大事な嫁に迷惑をかけてしまうことへの羞恥心と罪悪感。―

もう、壊れてしまっていたけど、俊介はその難破船の舵をとり、
バラバラの家族を乗せて旅立ちます。一家の初めての旅は70年前の父親の幸せを取り戻す旅でした。


人は何も持たずに生まれてきて、
親の愛情に包まれて成長し、やがて夫婦となり、、子に愛情を注ぎ・・・
老いて、、子供に返っていく。。。。

この結末を「キレイごとではないか」認知症を抱える家族は思われるかも知れない。
でも――そういう事ではないのです。もっと、、老いてからではなく、その前の人生。
どれだけ慈しんで子や孫と過ごしてきたか。
緒形直人演じる俊介の行動は、意図せずとも、家族を取り戻すだけでなく、
やがて訪れる自分の老いの未来を照らすことに繋がっていく。。。
そう感じました。
この大崎一家の姿を通して、そのことに今から気づいて欲しい、
誰でもやがては老いる。しかし、その前に、まだ若い時から、知ってほしいこと....
それがこの映画にはあると思います。
老人を抱える世代だけでなく、今まだ若い方にも観て欲しいと思った作品でした。

1年前の記事・・・・
桜、ふたたびの加奈子
あの子はきっと生まれ変わって  帰ってくる――製作年度 2012年上映時間 106分 原作 新津きよみ『ふたたびの加奈子』(ハルキ文庫刊)脚本 監督 栗村実 出演 広...

白ゆき姫殺人事件

2014-03-31 23:11:04 | the cinema (サ行)

製作年度 2014年
上映時間 126分
原作 湊かなえ
脚本 林民夫
監督 中村義洋
出演 井上真央/綾野剛/菜々緒/蓮佛美沙子/貫地谷しほり/金子ノブアキ/小野恵令奈/谷村美月/染谷将太/宮地真緒/蓮佛美沙子/TSUKEMEN

『告白』などの原作者・湊かなえの小説を基に、美人OLの殺害容疑を掛けられた女性をめぐって人間の悪意を浮き彫りにしていくサスペンスドラマ
国定公園・しぐれ谷で女性の惨殺死体が発見される。被害者は“白ゆき石鹸”が大ヒットした地元企業“日の出化粧品”の美人社員、三木典子。ほどなく、被害者とは対照的に地味で特徴のない同僚女性、城野美姫に疑いの目が向けられる。ワイドショー番組のディレクターを務める赤星雄治は、さっそく美姫の周辺取材を開始するとともにその足取りを追っていく。そして美姫の犯行との確信を強めていく中、取材で得たホットな情報を無頓着に次々とツイッターでつぶやき始めるのだったが…。

予告を観た時にチェックをし、湊かなえ+中村義洋監督というので、
知らず知らずハードルが上がっていたのでしょうか?
終わってみてば、サスペンス色もやや薄目で、やはり犯人探しというよりは
犯罪の背景に重点を置いた中村義洋監督色の濃いストーリー展開に結末だと感じました。
「殺人事件」と題しているのに警察は一切出てこないのもらしい感じ♪


暇を持て余し絶えず「つぶやいて」いる、絆薄い、或は自己表現の場をネットに依存し過ぎな
最近の大人から子供までのTwitterなどの社会現象。
ある意味自己管理の出来ない、無責任&要らない個人情報などをつぶやきまくる人達へ
警鐘を鳴らすと同時に、その影響力を教えてもくれていました。

原作は知らないけど、本作は綾野剛扮するテレビ局の契約ディレクターが
被害者の後輩OLから寄せられた情報をもとに、殺された美人OL典子の周辺人物を
インタビューしていく展開。
取材してはネットに投稿する赤星のtwitterには常連ともいえる貌のない連中が群がるが、
予告にあった「ネット炎上」というには何か差し迫った感が足りなかった。

ただ、つい先ごろ実際、自分の住むマンションの住民を刃物で殺害、金品を奪った犯人が、
何食わぬ顔でTV局の取材に応じ、事件とは無関係を装って「つぶやいて」いたし、
同様に犯人が取材に応じてきた事件は幾つもあり、ネット掲示板への投稿も過去に多数あり。
なので、
やはり、なんというか、自己顕示欲と、ネットの深い因果関係をみてしまいます。。

最近TVも映画もやや出過ぎの綾野くんですが、この役も嵌ってました
白ゆき姫@菜々緒も、赤毛のアン特徴のない女@井上真央ちゃんも
彼女たちを取り巻く女優陣の、女の嫉妬の狂騒曲もよかった。谷村美月ちゃん、上手い
終盤は「自虐の詩」を彷彿させる友情のシーンに落涙(でも、あれ程ではない)。

ですが、これはテーマ曲をTSUKEMENが担当し、
事件のポイントにもなる「芹沢ブラザーズ」として出演していたのは知らなかったので嬉しかった!


"レ・フレール"とかこの↓彼ら。音楽がみても聴いても楽しいと思えますね♪

1年前の記事は・・・
アンナ・カレーニナ
原題 ANNA KARENINA 製作年度 2012年製作国・地域 イギリス 上映時間 130分原作 レフ・トルストイ監督 ジョー・ライト出演 キーラ・ナイトレイ...

鈴木先生 映画

2013-10-02 23:45:46 | the cinema (サ行)

常識を打ち破れ、
世界は変わる

製作年度 2012年
上映時間 124分
原作 武富健治 『鈴木先生』(双葉社刊『漫画アクション』連載)
脚本 古沢良太
監督 河合勇人
出演 長谷川博己/臼田あさ美/土屋太鳳/風間俊介/田畑智子/富田靖子/山中聡/窪田正孝/北村匠海/西井幸人/でんでん

テレビ放映時は視聴率で苦戦しながらも、クオリティの高さがドラマ・ファンの注目を集め、放映終了後に数々の賞に輝き話題となった同名TVドラマの劇場版
黒縁メガネとループタイがトレードマークの国語教師・鈴木先生。理想のクラス作りに燃える彼は、女子生徒・小川蘇美を“スペシャルファクター”に据えた“実験教室”に手応えを感じ始めていた。ところが、妊娠中の妻・麻美がいるというのに、克服したはずの小川蘇美とのあらぬ妄想に再び振り回される事態に。やがて、2学期を迎えた学校では生徒会選挙と文化祭の準備が進む中、鈴木先生の天敵・家庭科教師の足子先生が休養から復帰する。そんな中、ドロップアウトしてしまった卒業生・勝野ユウジが小川を人質に学校に立てこもるという最悪の事件が発生する。

テレ東のドラマは結構チェックしているドラマファンの友人Yが、面白いと言っていたのに、
初回を見逃したのもあって、結局ドラマは観ないでのDVD鑑賞となりましたが面白かったです

原作もしっかりしているのでしょう。教師のあるべき姿を描いているのに、新しい!!
この脚本の古沢良太さんといえば「ALWAYS 三丁目の夕日」とか「少年H」。テレビドラマで言えば「相棒」シリーズとか、新しいところでは「リーガル・ハイ」でしょうか。
私的には「キサラギ」の方ですが、やはり柔軟で、少年心理を描き出すのが凄く上手い!

鈴木先生は、独自の教育理念で子供、生徒を変えようとしますが、
嘗てこのように教育されて、いつの間にかコチコチの大人になってしまった私たち大人にも、
目を見開いて観て、感じ取るべき作品。
まさにオトナも足元を見直す事を教えられる、そんな作品でした。



ドラマ版のその後となる2学期を舞台にしているので、ホントはドラマを見た上で鑑賞するのがベスト。
ですが、鈴木先生の“スペシャルファクター”たる小川蘇美の位置付け、
さらに家庭科教師の足子先生の位置付け、
鈴木先生の目指す教育の輪郭は、ちゃんと観ていれば解ります。
ドラマ未見でも、この映画の本質を語るに問題ないといえます。

鈴木先生はスーパー教師でもGTOでもなく、ただ胸を開いて生徒をみつめ、教育に情熱を傾けるひと。
いつも特別注目を集めるでもない普通の“問題のない子供たち”の心の成長を見守り、
しかし、いつの間にか鍛えているのですよね~・・・
ソレは何故か?!

キーとなるのは、演劇部 卒業生 手のかからない子・・・

ここからは余談ですが、
小川蘇美役の女優さんは、どこかで見覚えあるなあ・・と、思っていたら、
タッキーの春ドラマ「真夜中のパン屋さん」に出ていた子なんですね~。
難しい名前は土屋太鳳(つちや たお)と読むんだそうです。
ちょっとデビュー時の成海璃子ちゃんに似た感じを受けました。

風間俊介くんと窪田正孝くんが卒業生なんですが、、このふたり、いつまでもこういう年齢設定が似合いますね。
卒業してから何年だよ~~って、フフフ

学園ものですが、子供にも大人にも、生き抜くためのひとつのヒントとなる鈴木メソッド。ヨカッタです

そして父になる

2013-09-29 23:16:30 | the cinema (サ行)

6年間育てた息子は、他人の子でした
製作年度 2013年
上映時間 120分
脚本 監督 是枝裕和
出演 福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー/二宮慶多/横升/田中哲司/風吹ジュン/國村隼/樹木希林/夏八木勲

是枝裕和監督が子どもの取り違えという出来事に遭遇した2組の家族を通して、愛や絆、家族といったテーマを感動的に描くドラマ
申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明する。血縁か、これまで過ごしてきた時間かという葛藤の中で、それぞれの家族が苦悩し……

息子の慶多が良多の母校を受験するシーンで始まる、彼の勝ち組人生に訪れた大きな試練を描く
いつもの淡々とした是枝風味。
家族の絆がテーマであるだけに観客も幅広い年齢層でした。いつもの友人と鑑賞しましたが、
私達的には特別大きな感動はなかったですが、同じ列の女性は泣いていらしたようです....。

主人公は、どっぷりエリート意識の良多。
そこに不満も寂しさも感じながら、結局従ってきたみどり。

一方の斎木家は、時代に取り残された町の電気屋。貧乏暇ありの雄大は子煩悩。
開けっ広げで勝気な妻がバランスを取っているようにも見える。

病院側と弁護士を交えた両家の初顔合わせから、ぎこちなく一歩を踏み出す4人の親たち。

都会で上品に暮らす良多一家は、何から何まで目が届く一人息子。
対して手のかかる老人といたずら盛りの子供が3人もいて、賑やかでがさつな斎木家は、
東京と群馬を行き来する交流を始めるのだけれど…、
その過程が良多目線で語られる、父になるまで。


この映画では、「血にこだわるのは最低」のような(苦笑)感じも受けるんだけど、
多くの男は、拘っても仕方ないと私は思う。
だって、実感がないんだし、大抵の男は子供が生まれても、翌日から外に仕事に出るし。
大抵「アナタに似てる」という一言で目じりが下がったりしながら、
自分の赤ちゃんの頃の写真を親に見せられて納得したり、
消極的に育児に参加して(笑)、「歯が生えた」「歩いた」「喋った」ということを喜んで父親の実感が湧いてくるのではないかと思う。

生活環境も、そのスタイルも対照的な2家族の、どちらにも共感することなくでしたが、
良多の子供時代の環境(父の再婚で家出。彼もファザコンだった?)を思い出す瞬間、、
彼が撮った数より多い、自分の知らないあの日のショット…
「このままふたりでどこか遠くに行っちゃおうか。。」というみどりの姿には、
やはりグッとくるものがありました。

もし、自分だったらどうするか?!
これは子供の年齢も大きく関係して、父になる時も違ってくるでしょう。
そして―
子供は成長する。
やがて反抗期が来た時に、実の子ではない息子を相手にするその覚悟はあるのか....。
本当に難しい問題だと思う。

しかし―、ネタバレになるので白抜きにしますが、
人の人生を狂わせるこうした犯罪が、5年の時効だなんて許しがたい。

今年お亡くなりになった夏八木勲さんが、福山さんのお父さん役で嬉しかった!
夏八木勲さん、「永遠の0」でまたお目にかかりましょう♪

サイド・エフェクト

2013-09-09 12:39:56 | the cinema (サ行)

原題 SIDE EFFECTS
上映時間 106分 映倫 R15+
脚本 スコット・Z・バーンズ
監督 スティーヴン・ソダーバーグ
音楽 トーマス・ニューマン
出演 ジュード・ロウ/ルーニー・マーラ/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/チャニング・テイタム

うつ病の女性に処方した新薬の副作用を巡って思いもよらぬ陰謀に巻き込まれていく精神科医の運命を描く、スティーヴン・ソダーバーグ監督のサスペンス・ミステリー
金融マンであった夫マーティン(チャニング・テイタム)が違法株取引で逮捕されたのを機に、以前に患ったうつ病を再発させてしまったエミリー(ルーニー・マーラ)は、交通事故や自殺未遂を引き起こすように。診察にあたる精神科医バンクス(ジュード・ロウ)は、かつて彼女を診ていたシーバート博士(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)に相談。エミリーが抱える症状の詳細を聞き出し、彼女の了承も得て抗鬱剤の新薬アブリクサを投与する。症状が快方に向かっていたある日、マーティンがナイフで刺されるという事件が起き……。

久々のジュード主演のサスペンスなので、初日鑑賞~♪
幸せな精神科医が巻き込まれていく殺人事件を巡る展開がスリリング!
ミステリー好きの方には途中で予測がつくとしても、果たしてそうなのか??と、
ちょっと疑念を持ったまま、最後までゾワゾワさせてくれて面白かった

出所間近の夫に面会に行く、どこか虚ろな若妻エミリー。
やがてマーティンが出所し、再出発に向けて引越しの話が出ていた矢先妻の車による自殺未遂。
運び込まれた病院の担当医は、イギリスからやってきた精神科医のバンクス。
彼はうつ病に苦しみながら、生活のために仕事も続けたいと訴えるエミリーの症状を、
彼女の過去の担当医に話を聞きながら、新薬を処方することにしたが…―

エミリーは新薬の副作用で夢遊病を発症、
ついには夢遊状態で夫を刺殺。

犯行時、薬の副作用で夢遊病状態であれば、エミリーに責任能力が無かったとされ、彼女は無罪。
しかしその場合、医師のバンクスは薬を処方した責任を追及されることになり、
製薬会社もまた責任を問われる。

患者を守りたい医師。しかし、それは同時に、バンクスの医師生命、家族の崩壊の危機を招き、
製薬会社、風評を気にする病院からも背を向けられる事態に――
果たしてエミリーは無罪なのか?
バンクスに打つ手はあるのか?―


これは、ミステリー好きの方であれば、大方の予想はつく展開に結末。
ですが、それぞれのキャラクターを演じる俳優陣の醸し出す緊迫感で引き込まれ、
自分なりの推理も楽しみながら、飽きずに最後までこの人間関係を見届けられました。

「うつ病患者」のルーニー・マーラ、腺病質そうな雰囲気がかなりよかったし、
すっかり貫禄がついたキャサリン・ゼタ=ジョーンズも「精神科医」似合ってました。が、
何といっても今回のジュードは、女に甘いだけの男じゃない役で、嬉しかった(笑)

少しセリフが多いですが、最後まで気を抜かずに
キャストの会話を注意して聞いていれば、ラストにちいさくガッツポーズできると思います

※この作品は、事件の核心、結末に触れている、完全ネタバレのTBは保留とします。
これからご覧になる方の楽しみを奪わぬように、ご理解ご協力、宜しくお願いします。

スター・トレック イントゥ・ダークネス

2013-08-19 23:01:55 | the cinema (サ行)

人類最大の弱点は、愛だ。
原題 STAR TREK INTO DARKNESS
製作年度 2013年
上映時間 132分
監督 J・J・エイブラムス
出演 クリス・パイン/ザカリー・クイント/ゾーイ・サルダナ/ベネディクト・カンバーバッチ/ジョン・チョー/サイモン・ペッグ/カール・アーバン/ピーター・ウェラー/アリス・イヴ/ブルース・グリーンウッド/アントン・イェルチン/クリス・ヘムズワース

前作に引き続きJ・J・エイブラムスが監督を務め、クリス・パインやザカリー・クイント、ゾーイ・サルダナらも続投するSFアクション大作の続編
西暦2259年、カーク(クリス・パイン)が指揮するUSSエンタープライズは、未知の惑星の探索中に巨大な地殻変動に遭遇。彼は深刻なルール違反を犯してまで原住民と副長スポック(ザカリー・クイント)を救おうと試みるが、地球に戻ると船長を解任されてしまう。ちょうど同じ頃、ロンドンの宇宙艦隊データ基地が何者かによって破壊され……。

前作から4年が経っていたんですねぇ、、、イヤ、そのことにもびっくりでした。
なので、前作を復習することもなく、予告も観ずに跳んで行きましたが、、大丈夫です
むしろ予告を観ない方が、ある時点までを凄く楽しめると思うのです


幾度となく押し寄せるUSSエンタープライズ号の危機。
その困難な状態に接し、若き指揮官カークは何をし、スポックはどこにいて、
クルーはどうしたのか?!

今回のエンタープライズの戦いは一難去ってまた一難、凄まじいです!
「結構楽しめた~」前作を軽く超えてしまった今作
ストーリーや展開が奇抜で予測がデキナイとかではないです。
むしろSFアクションものとしては、或いはヒーローものなどの流れを踏む王道の展開だと思うのですが、
ここに登場する「悪」、「毒」が、なぜか心を掴むのです。
その悪はどうして生まれたのか?

仲間との信頼、、裏切り、、、復讐愛と犠牲―、そして生まれる。。。
おそらく誰もが少なからず経験し、また憧れる、心の奥に触れるドラマなのです。

いかにも悪いヤツ、な登場から、妙にトキメクかっこいいベネディクト・カンバーバッチは
アメイジング・グレイス」ではヨアン・グリフィズを支え続ける友人役でしたが、
ここではその目に哀愁と憎悪を漲らせ、気持ちイイ怪演をみせて、物語を引っ張ります。

エンタープライズのお馴染みのクルーのキャラもちゃんと描かれて、
カークやスポックだけでなく、ドクター・マッコイ(カール・アーバン)ヒカル(ジョン・チョー)、スコッティ(サイモン・ペッグ)パヴェル(アントン君)、
それぞれにちゃあ~んといい所で見せ場も用意されています
そういうところにもJ・J・エイブラムス監督のこの作品への拘りというか、愛を感じますね~

お盆の先行上映、3D吹き替え版で観て来ましたが、今度は正解
3D効果も活かされて、迫力のある映像が楽しめます!
SF好きの方なら、前作をご覧になってなくても十分に楽しめる解りやすさですが、
登場人物の関係図くらいは頭に入れておくといいかも知れません。
(開始10分も経たないうちから後ろのおばさま二人が、お互いに質問しあってうるさかった
一般公開されたら、今度は字幕でキャストの声で観てみたいと思います


終戦のエンペラー

2013-08-16 22:33:10 | the cinema (サ行)

原題 EMPEROR
製作年度 2012年
製作国・地域 日本/アメリカ
上映時間 107分
原作 岡本嗣郎『陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ』(集英社刊)
脚本 デヴィッド・クラス 、ヴェラ・ブラシ
監督 ピーター・ウェーバー
出演 マシュー・フォックス/トミー・リー・ジョーンズ/初音映莉子/西田敏行/桃井かおり/中村雅俊/夏八木勲/片岡孝太郎

岡本嗣郎のノンフィクション「陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ」が原作の歴史サスペンス
1945年8月30日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の司令官としてダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)が日本に上陸。彼は日本文化に精通している部下ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)に、太平洋戦争の真の責任者を探し出すという極秘任務を下す。わずか10日間という期限の中、懸命な調査で日本国民ですら知らなかった太平洋戦争にまつわる事実を暴き出していくボナー。ついに最大ともいうべき国家機密に近づくが、彼と敵対するGHQのグループや日本人たちの一団が立ちはだかる。

1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、第二次世界大戦が終結。
それからわずかに半月後、マッカーサー率いるGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が厚木に上陸するところから物語りは始まる。
そして日本の占領統治が始まるのだけれど、マッカーサーは先ず日本の文化に精通していたフェラーズ准将に「真の戦争責任が誰にあったのか」を突きとめるよう指示する。―

原作ノンフィクションの主人公河井道を架空の人物アヤにして、フェラーズとの恋愛を絡ませ
知日家との人物像を解りやすくしているのだけど、、
果たしてこのテーマにソレが成功したかというと、う・・・んとなってしまう。

 なぜ、開戦直前に首相が交代したのか?
 戦争を始めたのは本当は誰なのか、終わらせたのは誰か?
 連合国側の本音と、マッカーサーの真の狙いは?
 マッカーサーと天皇が並ぶ写真が写された理由とは??

天皇を戦犯として処刑したいワシントンと、
混乱を避け、速やかに再建に向けたいマッカーサーは、その難問をフェラーズに一任する。
そして、彼が答えを求め、接触する日本の政治家、軍人たちの言葉を聴き、
彼に影響を与えた、日本女性・アヤとの過ぎし日に思いを馳せる―…

誰であれ、そのご尊顔を直視することが憚られた日本のエンペラーは、
この戦争を指揮したのか?
天皇は有罪か?無罪か?



フェラーズは「我々が行うのは、報復ではなく正義」だというのですが…―

ここで登場する脇の日本の俳優たちがよかったです。
ハリウッド映画で描かれるなんちゃって日本になっていないのは、プロデューサー奈良橋陽子氏の存在があったからなのか。
1945年の東京、皇居を臨むGHQ東京本部など、リアリティがあったし、
少ないキャストのセリフにしても、
日本の行った侵略行為は、嘗てのあなた方のやり方を手本にしたものだ
他国を侵略したあなた方から奪ったに過ぎないと言う近衛文麿に胸が空く思いだったし、
天皇の側近、関屋次官の御製の朗読のシーンなど、実際の親戚だという奈良橋氏の意見が
大いにものを言ったのではないかと思う。
これが遺作となった夏八木さんのとぼけた味わい、昭和天皇の片岡孝太郎さんの雰囲気が嵌っていました。

が、それだけにフェラーズのアヤを巡る行動、人物の描き方が釈然としませんでした
仮にもマッカーサーと天皇を引き合わせた立役者を、、こんな描き方でいいのかと....。

この作品の主人公・フェラーズ准将を演じたマシュー・フォックス。
ワールド・ウォーZ」にも出演していたのですね~。
ブラピ一家を救出に来たヘリコプター部隊の兵士役だったようですが、アノ混乱の場面ですかね。

太平洋戦争に突入する辺りの日本人(民間人)や軍の意識などが描かれた『聯合艦隊司令長官 山本五十六』や、1945年8月6日の広島と、その後を描いた『夕凪の街 桜の国』などに比べると
アメリカ人の見た日本の終戦を語るという感じで、感動するまではいかないのですが、
オープニングの原爆の画像。真っ黒の何もかも焼け焦げた敗戦国、日本の姿。
私などはもうこの映像だけで胸が震えて、、、改めて思うのでした。
そこから必死で這い上がり、ここまで戦後を生き抜いてき、立て直してきた日本人は本当に凄いって.......。

少年と自転車

2013-05-24 21:55:50 | the cinema (サ行)

原題 LE GAMIN AU VELO/THE KID WITH A BIKE
製作年度 2011年
製作国・地域 ベルギー/フランス/イタリア
上映時間 87分
出演 セシル・ドゥ・フランス/トマス・ドレ/ジェレミー・レニエ/ファブリツィオ・ロンジョーネ/エゴン・ディ・マテオ
もうすぐ12歳になる少年シリル。父親は彼を児童養護施設に預けたまま行方知れずに。シリルは自分が捨てられたとは露とも思わず、父親を必死で捜し続ける。そんな中、美容師のサマンサと出会う。彼女は、なくなった大切な自転車を取り戻してくれた。そしてシリルは、サマンサに週末だけの里親になってくれと頼み、2人で父親捜しを続ける。やがて、ようやく父親を見つけ出し、再会を果たしたシリル。ところが父親は喜ぶどころか、シリルをすげなく拒絶してしまう。サマンサはシリルを心配し、それまで以上に彼の世話を焼くようになるのだが…。

コチラも公開当時、評判が良くて観たかった作品ですが、DVDにて鑑賞。
思ったよりも厳しく、痛々しい少年の日々を描いた作品でした。

冒頭から、親に捨てられ、それを認められない認めたくない少年の、恐怖というか
痛々しい姿にもう、胸が痛むのですが、、、
何も持たない子供でありながら、
彼は自分で確かめ、その目で見て、聞いた事だけを信じて進む姿が胸を打ちます。

それなのに・・・苦労して会った父親を前にすると、別人のように理解をみせ、
大人っぽく、嫌われないように振舞う姿が痛ましい。。。


本作は、ダルデンヌ監督が2003年に『息子のまなざし』のプロモーションで来日した際、少年犯罪についてのシンポジウムで聞いた“赤ちゃんの頃から施設に預けられた少年が、親が迎えに来るのを屋根にのぼって待ち続けていた”という衝撃的な話に着想を得て作られた。
と、公式サイトで紹介されています。コチラ
『息子のまなざし』は未見ですが、
男の眼差しで、注意深く、丁寧に、孤独の淵の少年心理を描いた作品だと感じました。

物語は、さまようシリルの行動をひたすら追い、うつむきがちな彼の心を映していくのです。

大好きな父親に見捨てられるという恐怖感。
それを、単に父親の育児放棄とは思えず、お金を渡し望みを捨てきれない子供の心理。
痛いほど掴まれたその痛さに、心を掴まれて、親になっていくサマンサの心理。
1時間半弱というサイズに、凝縮されています。

必要とする者。
必要とされる者。
必要としなくなる者―。
どうしようもない環境で、自分の一歩を踏み出す3人。

11歳の少年シリルが、ある時まで、
ただ父親に捨てられるのを怖れて繰り返す脱走劇には、正直、
ゴネてゴネて、、結局は自分の思い通りにしている我儘さも感じましたが、
結果的に彼はそうして自分で幸運を掴み取り、
犯罪を犯したらこう。家庭ではこう、という教えを学べるひとを掴んだのです。

シリルが自転車の次に取り返したもの――
それは、いつも彼を待っていてくれる人。キケンから守ってくれるひと。
これは、「子」が差し出した手を、まるで友情のように握り返した「親」の話でもあり、
血の繋がりとか、親ってなんだ?と改めて考えさせられました。

ソハの地下水道

2013-05-10 15:16:39 | the cinema (サ行)

原題 IN DARKNESS
製作国・地域 ドイツ/ポーランド
製作年度 2011年
上映時間 143分 映倫 R15+
監督 アグニェシュカ・ホランド
出演 ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ/ベンノ・フユルマン/アグニェシュカ・グロホウスカ/マリア・シュラーダー

ナチス・ドイツに支配されたポーランドで、ユダヤ人を地下にかくまった水道労働者ソハの実話を基にした人間ドラマ
1943年、ポーランド。下水修理と空き巣稼業で妻子を養っているソハは、収容所行きを逃れようと地下水道に繋がる穴を掘っているユダヤ人たちを発見した。ドイツ軍に売り渡せば報奨金を得られるが、狡猾なソハはユダヤ人たちを地下に匿ってやり、その見返りに金をせしめようと思いつく。ソハは迷路のような地下水道の構造を最も知り尽くした男なのだ。

舞台は1943年当時はポーランド領だった(現・ウクライナ共和国)ルヴフ。
ユダヤ人を隔離して居住させるゲットーがある町。
ある日ソハは彼らが地下水道に逃げる穴が開通したところに行き合わせ、
通報よりも長い期間金をむしり取る方を選び、彼らを迷路のような地下水道に匿う。

お金を払い匿って貰う側と、金の為に危険を冒すポーランドの姑息な労働者のソハ。
お互いに信じきれない関係だが、バレれば双方共に命はない。
僅かに数十センチのコンクリートの路の下。
迷路のように入り組んだ地下水道の闇の奥に、彼らの活路はあるのか、、、?


ホロコーストの嵐が吹き荒れるナチス占領下のポーランドの地下に広がる闇の隙間。
カメラは、暗く陰湿で悪臭が漂い、不衛生な地下で息を潜めるユダヤ人グループと、
報奨金目当てにユダヤ人を捜すポーランド人とドイツ兵、ソハの生活する地上を行き来する。

昨日までの普通の暮らしを捨てざるを得ない、迫害の標的にされたユダヤ人たちの、
生々しさも悲哀も、
胸が詰まるような実態を描きながら......でも、主人公はソハ。

お金目当てで関わったソハという、生活の為にはコソ泥も平気な平凡な中年男の
胸に芽生える善への危険な誘惑―
ささやかな彼の家族をも危険に晒し、幾度も押し寄せる危機を掻い潜り、その誘惑と闘う中、
平凡な下水修理の男に最強の試練が訪れる――

ポーランド映画ということで、キャストはほぼなじみがなく、
唯一「ニーベルングの指環」(未アップ)のベンノ・フユルマンだけでしたが、
知らなかっただけに、久々に彼が観られて嬉しかったです。
実話ベースの戦時中の物語としては地味で動きのない地下水道という限定された舞台設定ですが、
後半のドラマは臨場感がありグッと心にチカラが入ります。

アグニェシュカ・ホランド監督はポーランドのワルシャワ生まれで、
レオの「太陽と月に背いて(1995)」(未アップ)のしか観てい無いんですが、
アメリカCBSのドラマ「コールドケース 迷宮事件簿」も演出に参加されていたのは知りませんでした。
何年かぶりに「太陽と月に背いて」若きレオを観てみたくなりました♪

余談.
場面がほぼ暗い為、せっかくのベンノ・フユルマンのガラスのような透明な瞳が生かされず
そこはちょっと心残り、、、、

ザ・ワーズ 盗まれた人生

2013-05-08 12:30:12 | the cinema (サ行)

大切なのはプライドか、
モラルか、それとも――

原題 THE WORDS
製作年度 2012年
上映時間 96分
監督 ブライアン・クラグマン 、リー・スターンサール
出演 ブラッドリー・クーパー/ジェレミー・アイアンズ/デニス・クエイド/オリヴィア・ワイルド/ベン・バーンズ/ゾーイ・サルダナ/ノラ・アルネゼデール/J・K・シモンズ
自分の才能を信じてくれている妻ドラ(ゾーイ・サルダナ)に支えられながら奮闘しているものの、作家としての成功をつかめずにいるロリー(ブラッドリー・クーパー)。新婚旅行に出掛けた彼は、ふと立ち寄ったアンティークショップで一束の原稿が収められたアタッシェケースを発見。その原稿の魅力あふれる内容や文章に感嘆し、許されないことだとわかっていながらも自分が執筆した小説として発表するロリー。出版されるやベストセラーを記録して華々しい生活を謳歌(おうか)するが、そこへあの原稿を書いたという男が訪ねてくる。

無理をすればラッセ監督の「ヒプノティスト-催眠-」の上映に間に合ったのに、
今日は風が強くて寒い。帰りを思うと萎えてしまって次の機会にし、
見逃していたブラッドリー・クーパーのコチラをレンタル♪

「世界にひとつのプレイブック」で完全に日本でもブレイクしたブラッドリー主演作なのに
あっという間に日本での公開が終わってしまったというのも頷けるコチラの作品。
サスペンスとしてもラブストーリーとしてもちょっと中途半端な印象の作品でした。が、
キャストはイイんですよ~
なにしろ「ナルニア国物語/第3章 アスラン王と魔法の島」ぶりのカスピアン王子の
ベン・バーンズくんが、意外に出演シーンがあって嬉しい誤算


物語は予想の範疇を出ません。

人気作家のクレイ・ハモンド(デニス・クエイド)の新作を発表する講演での朗読という形式で、
劇中劇として2人の男の若き日が語られていきます。

作家を目指していたロリーは、苦労知らずの理想を求めるばかりの若者。
そんな彼が、どこかの誰かの作品に夢中になり、誤解した妻にもホントの事が言い出せないまま
それがどんな事態を招くかも深く考えないまま、、盗む―。
彼を魅了した作品は、批評家や読者をも魅了。押しも押されもしない大作家となる。

しかし、真実を知る者が現れる――。

その物語の真実を紐解く、老いた男がジェレミー・アイアンズ。
彼の若かりし頃をベン・バーンズ。
その妻セリア役のノラ・アルネゼデールの美しい事
メインである筈の、ロリーとドラのストーリーより、
Young Man と、セリアの輝かしくも切ない物語に、心が惹かれます。
そして、だからこそ、
真実の物語を盗んだ者に、
簡単に小切手を切るような免罪符はないという気になるのです。

ただ、中年のクレイ・ハモンドに意味あり気に絡んでくる、ダニエラ(オリヴィア・ワイルド)の
存在が意味不明。一体ナニがしたかったのか?

ブラッドリーのチョット軽い、小者みたいな(笑)告白シーンの泣き顔は、
いかにも悪に成り切れない、中途半端な男って感じが上手かった!
でも、
そんな彼の数十年後がデニス・クエイド、、ってどうして?って感じで
アップになればなる程、違和感が増して
余韻を残すハズのラストも、なんかキモチが入らなかったわ

それでも、ベン・バーンズくんのファンにはオススメ一見の価値がある素敵さ

桜、ふたたびの加奈子

2013-04-09 23:09:52 | the cinema (サ行)

あの子はきっと
生まれ変わって  帰ってくる――

製作年度 2012年
上映時間 106分
原作 新津きよみ『ふたたびの加奈子』(ハルキ文庫刊)
脚本 監督 栗村実
出演 広末涼子/稲垣吾郎/福田麻由子/高田翔/吉岡麻由子/田中里衣/江波杏子
小学校入学前の娘、加奈子を亡くした容子(広末涼子)。この世にいない娘に話し掛けたり、食事を作ったりする容子に、夫の信樹(稲垣吾郎)は心配しながらもイライラしていた。そんなある日、容子は妊娠中の高校生・正美(福田麻由子)に出会う。そして生まれてくる正美の子どもこそ、加奈子の生まれ変わりだと確信し……。

事前に予告を観ていたので、待ち時間がなかったことから迷わずチケット購入。
桜の、この時期にぴったりかな~と思っていましたが、
全編を通じて神経を引き裂かれるような音楽と、ホラーに近いカメラワークで織り成す、
その独特の世界観、演出に、好き嫌いがハッキリ分かれる作品だとも思いました。
が、、私はキライではなかったです。
それはやはり、私が母親で、
何度か家族を失うのではないかという恐怖感を味わった経験があるからなのかも知れません。

浮き足立っていた入学式の日、最愛の娘を亡くす――
後悔と、自責の念に苛まれる容子は、ついに娘の部屋で自殺を図るが、一命をとりとめる。―

「加奈子はここにいる」と言うようになる、容子のそれからの日々…



物語は、事故以来、見えない加奈子と時を過ごす容子が、
ある日、ジローが導いてくれた女子高生・正美と出会い、「加奈子が生まれ変わって帰ってくる―」と。
それからは、加奈子に語りかける事もなくなり、
度々正美のもとに訪れる容子の姿を克明に映し出していく.........

夫の信樹は、加奈子に執着し、新しく家族でやり直そうとしない容子に
次第に不満を募らせるが、、、無理強いをせず、容子のある提案を受け入れる。

廻り来る幾度かの桜の季節を、娘を亡くした夫婦を軸に、
この物語は、好きな人の子供を身ごもりながら、母親になりきれない正美と、
正美を見守っていた教師・砂織
正美を慕う後輩が登校途中ですれ違う、ベビーカーを押す女性と、、
桜の季節に交錯する4人の母の生きる姿が描かれ…―

そして、最後の最後で、明かされるあの日の出来事…!

…!そうだったのか・・・!
と思えるか、
そんなバカな~!!となるのか、、、

悲しみの淵から、人は何に縋って立ち直るのか。
そんな事を感じさせる、
ひた向きに奇跡の出会いを信じて突き進む、危うい容子を演じた広末さんは勿論上手いし、
いつもならソッチ側のゴローちゃんの(笑)
輪廻転生など信じてもいない、普通の穏やかで勤勉そうな夫も自然でしたが、
なんといってもシングルマザーの福田麻由子ちゃんが凄い。
殆どセリフ無しで、目の表情だけで、その複雑な心情の移ろいを表現していて、上手いです

命の循環―それよりも、
親と子、その思いの強さ。

それが通じたら、この世の中、そんな奇跡もあるのかも知れない、と感じた物語。
よくあるファンタジーのように、亡くなった子供が空を飛んだり、
『黄泉がえり』のように、観客の前に姿を見せたりと言う事が無い分、
それが受け入れられない人には退屈で暗い演出だという受け取り方になるでしょうが、
江波さん始め、キャストの演技で引っ張って行ってくれたように思います。

ジャンゴ 繋がれざる者

2013-03-04 21:29:58 | the cinema (サ行)

原題 DJANGO UNCHAINED
製作年度 2012年
上映時間 165分
脚本:監督 クエンティン・タランティーノ
出演 ジェイミー・フォックス/クリストフ・ヴァルツ/レオナルド・ディカプリオ/ケリー・ワシントン/サミュエル・L・ジャクソン/ ドン・ジョンソン

1858年、アメリカ南部。奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は、賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)の手によって自由の身となる。やがて2人は協力し、次々とお尋ね者たちを取り押さえることに成功する。その後、奴隷市場で離れ離れとなってしまった妻を捜す目的のあったジャンゴは、農園の領主カルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)のところに妻がいることを突き止め……。

名作へのオマージュたっぷりのタランティーノ調マカロニウエスタン、
コミカル&ダーティ、音楽よし、キャストよし!
面白かったです~~

何でもそうだけど、知ってるヒトは懐かしい、が、知らないヒトには新鮮!
コチラも、
何十年か毎に繰り返されるファッションの流行が、それでも全く同じではない事、
レトロな中にも何かを少し変えているだけでイマの新しさが感じられるファッションと同じように、
懐かしいけど、どこか感じる今っぽさ、新しさ♪
そんな作品でした~

南北戦争勃発前のアメリカ南部を舞台に、
賞金稼ぎのドイツ人歯科医キング・シュルツが、
黒人奴隷ジャンゴの鎖を解き放ち、服と銃と馬を与え、お尋ね者三兄弟を追うために相棒とする。
旅の道すがら、賞金稼ぎとしての腕をあげるジャンゴとの心の触れ合い、
彼の悲願を後押しするシュルツが、辿り着く極悪非道な農園領主キャンディ邸での大芝居まで。
10ガロンハットに砂嵐に、という孤独なガンマンじゃないけど、
可笑しくて爽快感はある2人の道行きが愉しめます

リンカーンの「奴隷解放宣言」が出るのはこの後2年を待たなければならないという設定。
極悪非道なキャンディは勿論架空の人物だけれど、
およそ人間扱いをしてこなかった当時の米国の奴隷制度。
アメリカが隠したい、認めたくない歴史。目を背けたくなる奴隷への虐待は、
白人の反感を怖れて今まであまりリアルに映像化されないだけだったと思います。
その点もしっかり描きながら、ちゃんとエンタメとして重くならない決着

でも…~、
あの恐ろしいkkkが、マスクひとつでこんなに笑える
覆面とってやったんじゃ「それじゃイミがないんだよっ」って言わせるって、
タランティーノ監督流の映画愛、マカロニ・ウエスタン愛に、ニヤリです

レオ目当てで行きましたが、黒人なのに態度のでかいサミュエルも可笑しいし、何といっても
今回とっても善き人のドイツ人・ヴァルツさん、イイ人過ぎでしょう!
惚れてまうやろ~~
昔のフランコ・ネロとかイーストウッドとはどこか違った温か味のある賞金稼ぎなんです

景気よく血が飛び散りまくりですが、
2時間半超えという長さですが、、面白いです

少年は残酷な弓を射る

2013-02-06 12:55:17 | the cinema (サ行)

母さん、僕が怖い?
製作年度 2011年
原題 WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN
製作国・地域 イギリス
上映時間 112分
脚本 リン・ラムジー 、ローリー・スチュワート・キニア
監督 リン・ラムジー
出演 ティルダ・スウィントン/ジョン・C・ライリー/エズラ・ミラー

イギリスの女性作家に贈られる文学賞として著名なオレンジ賞に輝く、ライオネル・シュライバーの小説を映画化した家族ドラマ
自由を重んじ、それを満喫しながら生きてきた作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、妊娠を機にそのキャリアを投げ打たざるを得なくなる。それゆえに生まれてきた息子ケヴィン(エズラ・ミラー)との間にはどこか溝のようなものができてしまい、彼自身もエヴァに決して心を開こうとはしなかった。やがて、美少年へと成長したケヴィンだったが、不穏な言動を繰り返した果てに、エヴァの人生そのものを破壊してしまう恐ろしい事件を引き起こす。

私たちは、ケビンについて話し合わなければならない
若い頃のエヴァは、恐らくは旅行作家としての自信に満ちて、自由奔放。
それを象徴するプロローグの熟した赤。そして狂気の鮮明過ぎる赤――。
しかし、
物語は日差しを浴びて揺れる白いカーテンの向こうに私たちを誘うのでした……

これは、、先日観た「ふがいないぼくは・・・」の逆バージョンの夫婦というか、
今、望んだわけではないのに妊娠し戸惑ううちに出産してしまったキャリアウーマンの人生。
単純に妻の妊娠を喜び、息子誕生を喜ぶ夫フランクリン........。対照的な、
出産直後、ベッドで見えない何かに魂を奪われたようなエヴァの表情がこの後の
全ての始まりを予感させます。

初めての子育ては誰もが手探り。
親になりたての誰もが多少の不安と怖れと緊張と、沢山の戸惑いを繰り返し、
それでも様々な要求を繰り返し、泣いて知らせる赤ちゃんの寝顔に見惚れるものだと思うけど、
エヴァは、自分にだけ懐かないケヴィンと孤独な闘いを始める事に…―



知恵がつくようになってからの、父親に対するのとは明らかに違うケヴィンの母に対する態度は、
恐らくもうその時には、エヴァは、漠然と気が付いていたのだろうと考えます。
妊娠中に、その命を喜ばれていないケヴィンに、悟られてしまったのではないか、、、
それが事実であるだけに負い目となって、エヴァは夫に話す事が出来ずに、
ケヴィンは成長し、今度は自ら望んで妊娠する――

親は見返りを望まず、無償の愛を子供に注ぐ。
それが当たり前のように云われるけど、、そうだろうか?
愛をこめて子供に尽くし、子供が自分を親として認知して笑いかけてくれる。
その幸せ。。それを求めるのが親だと思う。そして、
その瞬間をたっぷり味わいながら、親と子は絆を手繰り寄せていくのでは?

泣いて拒否られていた乳児のころから、堪えて学ぼうと努力もするエヴァに、
ケヴィンの悪意のある挑発も成長と比例してエスカレート。
夫はそんな事実から目を逸らし、よき父、優しい夫の部分だけを演じる。。。
それでもエヴァが踏ん張ってこれたのは、、
親としての責任感と、女としてのプライドもあっただろうけど、
そんなケヴィンとのサシの戦いの中で生まれた、彼女の母性だったのではないだろうか。

そして、矢は放たれる。――

記事を書きながら女の内の母性に絡んで「レボリューショナリー・ロード」を思い出していました。
が、この作品のエヴァは本当の意味で強いです。
このケヴィンに対して、悪意という表現を遣いましたが、悪意というからには、
ちゃんと意思を持っての行為であり、態度なわけで、
彼が欲しかったもの、無意識に求めていたもの、それは決してあの悲劇ではなかったのだと思います。

子供は生まれる時期も、親も選べない。
それを私たちは知っていなければいけない。
そして、どんな親も、子供と一緒に悩み、学び、親になっていくのだということも。

放たれた矢はどこに向かったのか
それを考える時、、ケヴィンの赤ちゃんの頃の鳴き声が甦り、彼の孤独の深さが胸を刺します。

仕事に生き甲斐を求めて、バリバリキャリアを積んでいるけど、結婚もしたい....。
そんな女性には、特に観て欲しいかも・・の作品でした。

その夜の侍

2012-11-27 23:06:45 | the cinema (サ行)

「お前を殺して、俺は死ぬ。」
愚かに、無様に、それでも生きていく。

製作年度 2012年
上映時間 119分
脚本:監督 赤堀雅秋
音楽 窪田ミナ
出演 堺雅人/山田孝之/綾野剛/谷村美月/高橋努/山田キヌヲ/坂井真紀/安藤サクラ/田口トモロヲ/新井浩文

劇団「THE SHAMPOO HAT」の赤堀雅秋が作・演出・主演を手掛けた戯曲を、彼自らの演出で映画化したヒューマンドラマ。
小さな町工場を営む中村健一は、5年前にひき逃げで最愛の妻を失って以来、妻との思い出に囚われて絶望と孤独の日々を生きていた。一方、2年の服役を終えて出所したひき逃げ犯の木島宏は、相も変わらぬ傍若無人な振る舞いで反省とは無縁の生活を送っていた。そんな木島のもとに、“復讐決行日”までをカウントダウンする匿名の脅迫状が届くようになるのだが…。

公開翌日の日曜日に観たのに、感想が今になってしまいました。
これは重苦しい作品だと解っていましたが、山田クンの悪っぷりも観たかったし、
堺さんの侍っぷりにも惹かれたし、綾野くんも新井浩文さんも、トモロヲさんまで出演とあっては見逃すのは勿体無い!
役者に惹かれて行って来ましたが、なかなかよかったです!



他愛のない会話があった、平凡な日常――
中村健一が失ったその、「平凡な日常」を、
手にしたくて、でも、方法がワカラナイ淋しい大人たち・・・

数人の平凡な人生を知っている中村側の、青木先生とその同僚教師を除くと、
この作品の登場人物は、そんな淋しい大人で埋め尽くされています。

喪失感を抱えて5年。
中村健一は埋める事が出来ない孤独の果てに、自分の人生を投げ打って
木島に復讐をしようと、その一念で決行の日を待っていた。
まるで死に場所を求める侍のように―。

その彼がつかの間、レンタルしたホテトル嬢・ミカ(安藤サクラ)も、
木島に危うく殺されそうになる男(田口トモロヲ)も、
逃げられたはずなのに手篭めにされた関由美子(谷村美月)も、
木島の友人の小林(綾野剛)も―。

愛情とか共感とか、、そんなものを知らず、
淋しいから、なんとなく誰かと繋がっていたくて、
自分の声を聞こえない振りしてつるんでいて・・・それをどこかで木島自身も感じている。

木島の狂気も、やはり孤独と恐怖が拍車をかけていたのではないだろうか。

「健一さんには幸せになってもらいたい」としながらも、
どこか木島への憎しみが捨てきれない青木先生(新井浩文)が
小林に向かって放った「平凡って、」のセリフが刺さりました。

長く、暗い、絶望の時を描いた作品ですが、
後味は悪くない。
中村にもう一度、他愛のない話、中身のない話で満たされる日が近づいている予感が嬉しい

主題歌に『星影の小径』が使用されているのは嬉しい驚きでした。
昔、ちあきなおみさんのカバーアルバムからダビングして貰ってよく聴いていました。

この作品のエンディングに、優しいこの曲が流れて、本当にホッとしました。

死を処方する男 ジャック・ケヴォーキアンの真実

2012-11-07 00:01:28 | the cinema (サ行)

原題 You don’t know Jack
制作年 2010年
本編尺 136分
脚本 アダム・メイザー
監督 バリー・レヴィンソン
出演 アル・パチーノ/スーザン・サランドン/ダニー・ヒューストン/ブレンダ・ヴァッカロ/ジョン・グッドマン

1987年、デトロイト。医師のジャック・ケヴォーキアンは高齢患者の医療施設を訪れ、母親の死ぬ間際の苦しみを思い出す。図書館に通い安楽死について調べるにつれ、自殺幇助が有益であると考えるようになった彼は、医療用品店を経営する友人のニールに相談し、フリーマーケットで集めた部品を使って自殺装置“マーシトロン”を考案する。彼は装置を携え、生命維持装置を外したいと願う患者のいる病院へと向かうが……。
こちらは、2010年4月24日に「ザ・パシフィック」などと同じく全米HBOで放送され第62回エミー賞では、14部門で計15個の大量ノミネートを獲得し、
その年のエミー賞・主演男優賞と脚本賞を受賞している作品。

豪華な顔ぶれで描くのは、実在のアメリカの病理学者と、彼を理解し末期病患者の積極的安楽死の活動を行う人たちの闘い。
これは事実を元にした、ジャック・ケヴォーキアンの、信念の闘いを綴ったもので、
長いけれど、見応えのあるテレビ映画でした。

ドキュメンタリーかと思うほどに、淡々と、
死を望む「生かされている」患者と、その家族とカウンセリングを行い、
彼らの苦痛と生(死)の選択に耳を傾け…
彼らにもできる、最後のスイッチを持つ装置を考案する―ジャック・ケヴォーキアン。
その根底には、医師でありながら母の末期の苦しみに何ら手助けをする事が出来なかった
激しい彼自身の後悔の念があった…。

対象はガンや、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの不治の病を抱えた末期の患者に限られていたし、少しでもこれからの治療によって未来がある患者には
まだ希望があると、単なる自殺幇助には傾かないジャックとニール。

しかし、1980年代に筋萎縮性側索硬化症の末期の患者が自ら死を望んで訪れ、
ジャック・ケヴォーキアンは積極的治療に踏み切ると、――
マスコミに大きく取り上げられ、彼は一躍“死の医師(ドクター・デス)”と呼ばれるようになる。

噂をききつけて、末期患者がジャックとコンタクトを取り、
彼らの装置に自分の最期の意志を託す。
最終的にはその数130名。

自殺が許されないキリスト教などの反対運動は過熱する。
全米のマスコミからも注目を集め、安楽死の賛成派と反対派で激しく議論を戦わせるが、
作中のジャックは、自身の信念を曲げることなく、患者の声に耳を傾け続ける…

度重なる裁判の末に、彼がとった行動とは!?

これも日本でニュースが流れ、記憶にあるところです。
ショックというか、、でも、それはその覚悟と勇気に対して抱いたものでした。

医学が発達す事によっても生まれる、
しかし、その医療によってもどうする事も出来ない患者が、こんなにもいる。。。

医師ケヴォーキアンの、苦悩と葛藤から描きながらも、その目線の先に
患者側の絶望的な状況と、切なる声…が聞こえる。
医師の良心、人間としての尊厳、問われるものは深い.....。
終末期医療のあり方を、安楽死の問題を、考えずにはいられない作品でした。