ここで、生きていく
製作年度 2014年
上映時間 118分
脚本青木研次
監督 久保田直
音楽 加古隆
出演 松山ケンイチ/田中裕子/安藤サクラ/内野聖陽/山中崇/田中要次/光石研/石橋蓮司
東日本大震災の原発事故で故郷を追われた福島の農家の家族を主人公に描かれるヒューマン・ドラマ。
原発事故で立ち入り禁止区域となり、避難生活を余儀なくされる農家の沢田家。一家の大黒柱で長男の総一は、代々受け継いできた土地を奪われ、家業の農業も出来ずにすっかり誇りと自信を失っていた。継母と妻子を抱え、光の見えない仮設住宅暮らしに身も心も荒んでいく日々。
そんな中、かつてある出来事をきっかけに家を出て以来、音信不通だった次男の次郎が、無人となった故郷に人知れず戻ってくる。二度と戻らないはずだったこの土地で、電気もガスもない生家に住みつき、たった一人で苗を育て、田んぼの再生に取り組む次郎。やがて次郎の帰郷は総一の知るところとなるが…。
立ち入り禁止の警戒区域。今は電気もガスも通っていない民家に一人、食事の支度をする青年。
偶然迷い込んできた、嘗ての高校時代の同級生は男を覚えていた。
でも――男の方は覚えていなかった。子供時代の、この町が嫌いだったから・・・。
―なぜ震災後の今、次郎は無人になった故郷に帰ってきたのか…。
長男だから―。頑張って農業に精を出してきたのに、今はその仕事も奪われ、成すべき仕事も無い。
デリヘルで働く妻を追いかけ、毎日を鬱々と過ごす総一。
その総一は夫の前妻の子。血のつながらない家族と暮らす登美子の心に去来するのは、
20年近く前、夫に言われるがままにたった一人の自分の血を分けた息子の背中を見送った事への深い後悔。
登美子もまた成すべき仕事もなく、喪失を抱えながら虚しく日々を生きていた。
そんなある日、登美子は白昼、仮設住宅の敷地内で帰るべき家を見失う。―
この先↓ネタバレを含みます・・・
↓
故郷を持つ人にとって、そこは度々は帰れなくても、家族や幼馴染の待つくつろげる場所であるはずが、
その場所を奪われ、家と同時に仕事も生きる情熱もなくして立ち尽くす人の姿を、
沢田一家の"現在"を、その心模様を静かに見守る作品となっていました。
ずっと夫(石橋蓮司)に縛り付けられていた登美子の空洞・・・
田中裕子さん、巧いです。思わず肩を抱いてやりたくなります
その継母にも次郎にも負い目を感じながらも、ぶざまに彷徨い、救いを求めていた総一・・・
JINの闊達な坂本龍馬や、エースをねらえ!の宗方コーチ、或は臨場の「持ってる男」はどこにもいない。
牙を抜かれた男、、内野聖陽さんも滲みる演技。
負い目を感じながらも、次郎に救いを求めていた。……十分伝わってきました。
外出のままならない母の為に遠征試合の多い部活をやり、
父と兄を守るために故郷を捨てた…。二度と帰らない決意だった.....。
でも、誰もいなくなった故郷が呼ぶ。―
ご飯に味噌汁、お漬物。被ばくしているだろう卵を使って、種をより分け苗を作る。。
優しくて芯の強い次男坊を演じるケンイチくんの表情に惹きつけられます。
老いて痴呆の始まった母を背負い、けもの道に入っていく。
それは、そのまま、彼らの家路の厳しさ、寂しさなのだけれど、
いつも他者の為にシンプルに決断していた次郎が、まさにシンプルな、
自分らしい生き方を決めた嬉しさも感じさせる、松ケンの想いを秘めた笑顔が心に残ります。
。
震災後の福島で、オールロケーションとなった本作が映し出すのは、
今、現在の立ち入り禁止区域―。今突きつけられている、『避難』と『移住』。
けれどその故郷は、新しい土地で頑張っている人たちにも届けられる―それだけでも意味のある、
そしてこの被災家族という特殊な状況ではあるけれど、傷ついた沢田一家を通して、
改めて、帰るべき自分の大切な場所、
家族と自分らしく生きることを考えさせられる、素敵な作品でした
僕が”3.11後の物語”を作ったワケ 『家路』久保田直監督が切り取る”フクシマ”の今
映画『家路』公式サイト
本日は松山ケンイチさん、29歳のお誕生日です!
おめでとうございます!! http://t.co/fQYtaoFu29
― 映画「家路」 (@ieji0301) 2014, 3月 5